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イチロー氏「MLB満票殿堂入り」を阻む壁。「3089安打」では“物足りない”と判断される可能性も

日刊SPA! / 2025年1月17日 8時45分

 しかし、真偽不明の発信者は“フェイク”だったとのちに判明。イチロー氏の満票受賞の可能性はまだ残されたままだ。

◆“ワールドシリーズ未経験”は影響するのか

 ただ、イチロー氏にチェックを入れない記者が実際にいたとしても不思議ではないだろう。リベラ氏やジーター氏とイチロー氏との間で大きな相違点が一つある。それが、世界一を経験していないこと。

 それどころか、イチロー氏はワールドシリーズにも出場していない。現役時代の大半を既存の30チームで唯一ワールドシリーズ未経験のマリナーズで過ごしたことは、イチロー氏にとって悲運の一つなのかもしれない。

 ただ、大舞台に立つチャンスが全くなかったわけではない。新人王とMVPをダブル受賞したルーキーイヤーの01年はマリナーズが快進撃を見せ、116勝46敗と、実に70個もの貯金をつくった。そのチームを率いたのが他でもないイチロー氏だったわけだが、ア・リーグ優勝決定シリーズで当時ポストシーズンでは無類の強さを見せていたヤンキースに力及ばず敗れ去っている。

◆メジャー通算「3089安打」では物足りない?

 またイチロー氏の個人記録に焦点を当てると、メジャー通算3089安打という数字も気になる材料だ。打者にとって一つの殿堂入りの目安となるのが3000安打だが、イチロー氏はそれを僅かに上回っているだけ。

 メジャーに挑戦する前にNPBで7年連続首位打者の偉業を達成しており、日本時代の安打数を加味するならば日米通算4367安打となる。この異次元の数字を持ち出すことができれば、満票殿堂入りはまず疑う余地はないだろう。

 しかし現地では、あくまでもメジャー通算がイチロー氏を測る物差しとなっている。

◆“日米通算”に異論を唱えていたピート・ローズ氏

 かつてイチロー氏が次々と偉業を成し遂げる中、通算4265安打のピート・ローズ氏の発言が日本のメディアでも執拗に取り上げられた。

 彼の言い分は終始一貫して、メジャーリーグと日本のプロ野球は別物。「高校時代の安打も数えるようになるのか」という暴言めいた彼の発言も日本で論争を巻き起こした。

 確かに日本のプロ野球でも、日韓通算や日台通算といった指標で記録が語られることはほとんどなく、仮にそういう論調があっても日本のファンにはピンとこないだろう。“日米通算”としきりに煽り立てる日本のメディアに、ローズ氏も意固地になっていた面があったはずだ。

 そのローズ氏も昨年秋に83歳で他界。イチロー氏に異を唱える存在もいなくなったわけだが、日本時代の安打数を含めず、MLBの「満票殿堂入り」という点においては、“3089”という数字に物足りなさを感じるのも事実である。

 ただ、いずれにしてもイチロー氏がメジャーでの19シーズンで成し遂げたことは“偉大”の二文字以外に形容する言葉がない。アジア人初の殿堂入りが満票なら申し分ないが……。その瞬間が近づいている。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。

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