【復興へのプレーボール(1)】門前高校 学校の統廃合危機を救った「野球の力」と「星稜魂」
スポニチアネックス / 2024年4月22日 8時1分
甲子園の名将として知られる星稜の山下智茂元監督(79)が「野球指導アドバイザー」を務める石川県輪島市の石川県立門前高校野球部に20人の新入生が加わった(4月19日現在)。能登半島地震の復旧、復興に向ける地域にとっては願ってもいない入部希望者で、2、3年生を含めると60人が「地域おこし軍団」として甲子園出場へのスタートラインに立った。スポーツニッポンでは密着動画とともに、チームをクローズアップする。
町並みが一変した震災から3カ月半が過ぎた。今でも学校周辺の家々は1階部分が崩れ、建物が道路側に傾いていた。校舎のほぼ隣に位置する大本山総持寺祖院は、山門から続く回廊や水屋なども崩れ、今も手付かずの状態だ。輪島市門前町は能登半島の西部に位置し、かつては門前町として地元の住民や観光客でにぎわっていた。年を追うごとに進む少子高齢化と過疎化に悩む中、門前高校は20年以上も定員割れの状態が続き、野球部は一時9人になったことも。山下氏の就任前年秋の大会には近隣校との合同チームで大会出場を強いられた。
春夏通算25回出場の甲子園を誇り、元ヤンキースの松井秀喜さんら多くのプロ野球選手を育てた山下氏が同校の野球指導アドバイザーとして就任したのは2022年からだった。
1995年、星稜の夏の甲子園準優勝メンバーでもある輪島市門前総合支所地域振興課の山崎高志さんが、学校の状況を踏まえ恩師でもあり門前高校1期生の恩師・山下氏に相談した。山崎さんは当時を振り返る「アドバイスを受けようと思って先生にお会いしたら『ならばオレがやろうか』と(母校の再建を)即決してくれました」。
輪島市が総事業費約3億5000万円をかけて寮を整備するなどしたことで、部員を市外からも受け入れられるようになり、徐々にチームらしくなってきた。中沢賢校長(61)は「もし野球部がなかったら学校自体統廃合の可能性もあったでしょうね」と話す。生徒募集定員80人には届かないが、今年度は32人の新入生が入学して全校生徒は102人となった。半数以上が野球部員だ。地元離れを食い止めつつ市外からの若い力が加わることは町にとって何にも代え難かった。
自らも星稜の元主将だった村中健哉監督は「山下監督のおかげです」と感謝しきりだ。
そして何かの偶然だろうか。震災からの復活をアピールする第150回北信越地区高校野球石川県大会初戦の相手は星稜(4月27日、石川県立野球場)と決まった。野球の神様の仕業なのか、甲子園に行くためには必ず超えなければならないだろう宿敵との対決が、早くも実現した。(写真映像部部長 高橋雄二)
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