【落合×福本豊対談】現役引退は上田利治監督の言い間違えで決定「あれは完全にはめられた」

対談後に記念撮影をする落合博満氏（左）と福本豊氏（撮影・大城　有生希）

　現役時代に3冠王を3度獲得し、監督としては中日を4度のリーグ優勝に導いた落合博満氏（70）が6日、自身のYouTube「落合博満のオレ流チャンネル」を更新。大好評対談企画「博満の部屋」の第7回として、当時世界記録だったプロ通算1065盗塁を誇る「世界の盗塁王」こと福本豊氏（76）をゲストに招いて対談を行った。

　落合氏は「引退するときの経緯は？」と質問。福本氏は「ついでに入って、ついでに辞めたような引退です」と冗談交じりに答えた。1988年10月23日のロッテ戦で山田久志氏が自らの引退試合を完投勝利で飾り、通算284勝目を挙げた。福本氏の引退が決まったのは試合後の上田利治監督のスピーチだった。「（球団と）引退するかとかそういう話は全くしてなくてね。最終戦、山ちゃんは引退すると決まっていました。山ちゃんが引退試合やっている中で、“今年1年間頑張って結局あきませんでした”っていう監督のあいさつの中で“今日で辞める山田、そして残る福本”を“今日で辞める山田、福本”って言ってしまう」と言い間違いがあったことを告白。福本氏は「えっ、俺辞めるの？ってなったわけですよ」と驚いたという。これにはさすがの落合氏も驚きの声を上げ、苦笑いを浮かべた。

　福本氏は「山ちゃんもそれ知らんし、僕もびっくりしてるし。隣にいてる選手は嘘やろって。辞めなと思ってついでに辞めたんですよ。しゃあないなで。みんなに言われましたね。“何で言わへんねん”って。先輩とか、高校の先輩も松下電器の先輩たちも“お前は冷たいやつや”って言われて」と当時の状況を説明した。さらに「僕知らんかったんやもん。知ってたら先輩たちみんな声をかけますよ。あれはもう、ほんまに思いっきりびっくりしましたね。終わってから広報室行って、担当記者が“フクさん、どないすんの”って。どないすんの言うても監督が辞める言うたから辞めなしゃあないがな言うて辞めたんですよ」と明かした。

　球団には「その代わり自由契約にしてくれ。それやったら辞めますから。もうちょっとだけしたいんですわ」と阪急を退団し、他球団での現役続行を要望。何度も押し問答が続いたが、それは拒否されたそうで球団側は「任意引退」を主張。「お前は（球団に）残らな」と言われたそうで、福本氏は「そしたら（コーチ）兼任にさせてくれ」と提案されたが、それも「あかん」と拒否された。最後は「僕の口癖やから。しゃあないな、もう。任意引退しますわみたいな感じになって」と最後は福本氏が折れる形で引退が決まったという。

　翌年の1989年3月12日のオリックス―巨人のオープン戦では福本氏の引退試合が行われた。指導者としては2軍コーチを要望したが、1988年のオフに門田博光氏がダイエー（現ソフトバンク）とのトレードで移籍。1軍打撃コーチを務めることになった。「そしたら、かどやんがきた。かどやんの相手をせないかん。なかなか（性格が）難しかったから。“かどやんの相手できるのはおまえだけやろ”って。それで僕は残されたんやと思ってね」と振り返った。

　話題は再び引退の話題となり「あれは完全にはめられたね。監督にはめられた。ええ作戦持ってた。（上田監督は）間違うこと絶対ないのに。計算通り」と苦笑いで話した。落合氏から「辞める気はなかったんですね」と聞かれると、福本氏は「うん。カーブ投げられてあって終わったみたいな感じ。そんな話してなかったから。普通やったら“ぼちぼち、どうや？”とか。山ちゃんも8月くらいに今年辞めるどうのこうのって。そうなんや、頑張らなあかんなみたいに思っとったんやけど、そんな話1個も出えへんし。俺まださせてもらえるやろ。あかんかったら言うてやって担当記者に言うてたけどね。出えへんかったけど。話出えへんからまださせてもらえるかなって思ってた」と説明。落合氏が「球団も契約する意思はあったんですね」と言うと、福本氏は「上の方でどうなってたかわからんけどね」と返答。落合氏が「それは球団のメンツがかかってたんでしょう」と推測すると、福本氏は「よそで間違えて働いたらえらいこと。もうちょっと盗塁を。1060やからあと50個くらいしたかった」と未練ものぞかせた。