先輩の快挙!歓びを心に刻む
スポニチアネックス / 2025年1月26日 13時23分
【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】2024年(第79回)毎日映画コンクールの各賞が1月16日に発表された。ジェンダーフリーの観点から、男優・女優の区別を撤廃して新たに1歩を踏み出したコンクール。助演俳優賞に選ばれたのが、30歳の時にモロッコで性別適合手術を受け、戸籍を男性から女性に変えたパイオニアのカルーセル麻紀(82)だ。
「一月の声に歓びを刻め」が対象作。三島有紀子監督(55)が自らの体験をモチーフに、北海道の洞爺湖、東京の八丈島、大阪の堂島の3つの島を舞台に紡いでいく人間ドラマで、カルーセルは第1章の洞爺湖編に登場した。
性被害を受けて亡くなってしまった娘の父親が役どころ。酷い目に遭わせた“鬼畜”と同じ男性でいることを嫌悪し、女へと性転換した初老のマキをノーメークで見事に演じきった。厳冬期のロケは過酷を極めたが、三島監督の長回しにも耐えて、圧巻の存在感を銀幕に焼き付けた。片岡礼子(53)や宇野祥平(46)ら共演者にも感謝しつつ、「わたし良く出来たと思いますよ」の言葉に達成感がにじむ。
カルーセルは北海道釧路市の出身。実は筆者の小学校、中学校の先輩だ。ちなみに彼女をモデルに小説「緋の河」「孤蝶の城」を書いた直木賞作家の桜木紫乃さん(59)は中学校の後輩にあたる。
カルーセルによると、桜木さんとは北海道の経済誌「財界さっぽろ」の企画で出会った。連載していた「酔いどれ女の流れ旅」が1冊の本になる時に対談。桜木さんに好きな映画を問われ、田中絹代が出演した「サンダカン八番娼館 望郷」を挙げ、「あれ見てギャーギャー泣いた。あんな映画に出たい」と答えると、桜木さんも「私はあれを見て小説の世界に入ったの」と明かしたという。すっかり意気投合した2人。そして「麻紀さん、書かせて欲しいんです、(麻紀さんの)少女時代を」という桜木さんの依頼を快諾して生まれたのが「緋の河」と「孤蝶の城」だった。
桜木さんの小説「硝子の葦」を三島監督がwowowでドラマ化(2015年放送)したことがあり、そんな縁もあって、「一月の声に歓びを刻め」への出演を桜木さんが後押しした経緯があった。三島監督によると、桜木さんから「本当のカルーセルさんの姿を撮ってくたざい」とメールが送られてきたそうだ。先輩もすごいが後輩もあっぱれだ。
60年を超える芸能人生、数々のスター映画人との出会いもカルーセルの財産になっている。スマホの待ち受けは石原裕次郎さんとの2ショットだ。「私が20代。石原プロの忘年会の時の1枚。渡(哲也)さんと撮ったのもあるわよ」と笑顔で打ち明けた。
裕次郎さんとは銀座のクラブで働いている時に出会った。「店に出ると、裕次郎さんがいらっしゃった。“なんで客より遅い出勤なんだ?”と言うから、“いま裕次郎さんの映画を見てきたの”と答え、“出たいな、あんな映画に”と希望を口にすると、“出るか?あした調布に来れるか?”と誘ってくれたんです」
1972年公開の「影狩り ほえろ大砲」だ。「ほら、おっかない人」と評したメガホンは舛田利雄監督(97)だった。「雨が降ったら、朝から宴会ですからね。良い時代でした。私は“くノ一”で殺される役で出演」と振り返った。
勝新太郎さんにもかわいがってもらった。「勝さんが亡くなる少し前まで一緒に飲んでました。(映画やドラマには)1本も呼んでもらえなかったけど。裕次郎さんにはテレビドラマの“大都会”とかにも誘ってもらいましたよ」
好きな監督を聞くと「一番好きなのは深作欣二さんだったわ。優しくてね」と明かす。1982年公開の「道頓堀川」で、ゲイボーイの「かおる」役で起用された。「“27歳の役。30過ぎの私ができるわけねえべ”と言っても“あんたしかおらんねん”と口説かれてね。うちに来て、朝から晩までブランデーを飲みながら、化粧させられて、衣装替えて、カツラをかぶったりして…」と、40年以上も前の出来事をきのうのことのように話した。
恋人役の柄本明(76)とのキスシーンがあって、「あんたもイヤでしょ。一回で決めよう」と申し合わせて撮影に臨んだことも明かした。主演したのは松坂慶子(72)と真田広之(64)だ。プロデュース&主演したドラマ「SHOWGUN 将軍」が米エミー賞やゴールデングローブ賞を受賞するなど快挙を成し遂げた真田に感慨無量の表情だ。
中谷美紀(49)のご指名で出演した「自虐の詩」(07年)と、その後の「劇場版 SPEC~天~」(12年)で仕事をした堤幸彦監督(69)とも仲良くなって「大阪のゲイバーに連れてって“ドンペリ飲め~”とかワーワー大騒ぎして遊んだわ」と笑顔を見せた。
そんな猛者たちとの付き合いの中で久々に参加した映画の現場。妥協を許さない三島監督との真剣勝負にカルーセルは「いろいろな監督さんとお仕事してきましたけど、今回、本当にね、映画を撮ったという感じがしている。きつかったけど、やりがいのある役で、本当に監督がいなかったらわたし出来なかった」としみじみ語る。
「最近の映画監督って現場にいないでしょ。どこかに居てモニターを見ている。でも、三島監督はずっと俳優たちのそばに居て見ている。“わたし、これが最後の映画ですから”と言って現場に入ったけど、三島監督だったら、またやるわ」
そう話して妖艶な笑顔を見せた。
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