“月9”の影響力に変化有り!?街からОLを消した伝説のドラマ枠の過去と未来【パート1】
日本タレント名鑑 / 2015年7月30日 11時55分
みなさん月曜の夜9時は何をしていますか?バブル前後に絶大な人気を誇り、月曜の夜9時には街からОLが消えたとも言われた月9ドラマ。最大視聴率は37.8%。日本の1/3以上がリアルタイムで視聴していたほどです。現在では15%前後と、全盛期に比べると落ち込み気味ではありますが、今でも「月9出演」「月9主演」が俳優の“ハク”になるのは間違いありません。今回は、その時代時代の背景とともに、月9ドラマの華麗なる歴史を紐解いてみましょう。
フジテレビの月曜9時は日本一の視聴率枠
実はこの枠、月9ドラマがスタートするまでは、人気コメディアン萩本欽一さん担当のコメディ番組を長くレギュラー放送していた枠です。もともとは「開局以来不振な枠」と言われていた枠ですが、「10年任せるから自由に」と任されていたとも聞きます。非常に実験的な番組でしたが、イモ欽トリオなどの名物キャラクターも多く輩出する大人気番組に。終盤こそ視聴率は伸びませんでしたが、テレビ史に残る番組が多数放送されました。
当然のように後続のドラマもコメディ色が強めとなります。1987年から始まった岸本加世子さん主演の『アナウンサーぷっつん物語』は全6話と短めのドラマ。当時はバラエティ番組が大ヒット中で、バラエティに出演する局アナたちも相当な人気を誇っていました。その「一番華やか」なテレビ業界を舞台にした同ドラマは視聴者に受け、アナウンサーに続いて「映像製作チーム」「ラジオ営業」「レコードプロモーション」「番組企画」と局内で働く人たちのドラマ、通称「業界ドラマシリーズ」が続々と作られました。
ビッグな大スターがもっとビッグに!
この業界シリーズからさらなるヒットが生まれます。スーパーアイドル田原俊彦さんと野村宏伸さんが出演した「びんびんシリーズ」です。『ラジオびんびん物語』の人気を受け、『教師びんびん物語』『教師びんびん物語II』『SPびんびん物語』『巡査びんびん物語』などが作られました。特に教師びんびん物語は大ヒット。IIでは、この枠で初めての30%超えを記録します。また、主題歌である『抱きしめてTONIGHT』『ごめんよ涙』も売れに売れ、今でも誰もが知る名曲となっています。月9のスターダム伝説は田原さんから始まったと言ってもいいかもしれません。
トレンディシリーズに突入
時代はバブル期に突入。当時も今と同じく「若者のドラマ離れ」が叫ばれていました。踊りに行ったり夜遊びしたりと、当時の若者も忙しかったのでしょう。だからこそ、その若者たちの大好きな「都会のおしゃれな若者」たちの「恋愛と遊び」のお手本となるべく、トレンディ(最新流行)を見せつけるドラマが出現したのです。
そのスタート作品が、1988年『君の瞳をタイホする!』。この前年、映画『私をスキーに連れてって』に代役として出演し、その演技力の高さが注目された三上博史さんの出世作となりました。そしてヒロインは、トレンディドラマの代名詞、浅野ゆう子さん。今では信じられませんが、当時は「女の嫌いなタレント」上位でした。しかし、このドラマで「シングルマザーだけどおしゃれで芯の強い女性」を演じ、「カッコイイ女」と大人気に。翌年の木曜ドラマ『抱きしめたい! I WANNA HOLD YOUR HAND』では浅野温子さんと共演。W浅野(ダブルアサノ)と呼ばれ、トレンディドラマを力強く牽引しました。
今ではあまり考えられないことですが、実は『びんびんシリーズ』は、田原さん演じる徳川と野村さん演じる榎本は、どのシリーズでも違う人(性格は同じ)として書かれています。実はトレンディドラマではそういった手法・演出は比較的多く、同じ俳優が同じような性格と役どころで違う設定の作品に出演する・・・ということはよくある事でした。『君の瞳~』は警察署が舞台でしたが、翌年の『愛しあってるかい!』では高校が舞台。にも関わらず、出演している陣内孝則さん、柳葉敏郎さんはほぼ同じような役どころとなっています。浅野温子さん、三上博史さん主演の大量キスが話題となった『世界で一番君が好き!』などもバブル期らしい派手な演出でしたね。
純愛三部作の登場
「おしゃれ」「あそび」「ナンパ」のトレンディドラマですが、一方で純愛物もたくさんありました。中山美穂さん主演の1990年『すてきな片想い』。一流商社を辞めたことで婚約破棄された男性と地味なОLの恋愛を中心としたラブコメ。軟派な男性も本心では長く一人の女性を愛していたり、派手なОLがプラネタリウムで出会ったショボイ男性と恋に落ちたり。最高視聴率26%と、その後の作品に比べると低めには見えますが、いわゆるそれまでの「バブルドラマ」よりも高視聴率をマークしています。
そして、世紀の大ヒットとなった1991年『東京ラブストーリー』(最高32.3%)。同年『101回目のプロポーズ』(最高36.7%)。一見遊んでいる風な若者たちの細やかな心の機微や、傷ついた大人が本当の愛を受け入れるなど、軽薄とは真逆な愛が描かれています。トレンディドラマというと、どうしてもバブル期のおしゃれで軽いノリをイメージしがちですが、実はいわゆる流行を追ったドラマよりも、純愛を描いた作品の方が視聴率が高かったのです。流行やトレンドに流されながらも、結局人はみな“ピュア”を求めているのかもしれませんね。
(“月9”の影響力に変化有り!?街からОLを消した伝説のドラマ枠の過去と未来【パート2】に続きます。)
文/藤原ゆうこ
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