レバノン首都中心部にイスラエル軍が初空爆 市民を巻き込む攻撃で避難民100万人か “第5次中東戦争”につながる可能性は? 須賀川記者解説【news23】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年10月1日 14時8分
イスラエル軍による連日の攻撃で、レバノンで家を追われた人は100万人に達した可能性があります。30日にはイスラエル軍がレバノンの首都中心部に初めて空爆を行い、“全面戦争”への懸念も高まっています。
イスラエル軍がレバノン首都中心部に初空爆 避難民100万人か
拡大の一途をたどるイスラエル軍の攻撃。30日、標的となったのは、レバノンの首都ベイルートの中心部でした。
「神よ、全て空爆された」
2023年10月以降、イスラエル軍が首都中心部を狙ったのは初めてとみられ、この攻撃で、イスラエルと対立するパレスチナ解放人民戦線の指導者3人が死亡しました。
攻撃を目撃した人
「神よ、鎮めてください。みんな恐怖で逃げ回っていました」
戦闘を続けるイスラエル軍と、中東レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」。
17日、ヒズボラの戦闘員らが所持していたポケベル型の通信機器が一斉に爆発。その次の日もヒズボラが所有していたトランシーバーが一斉に爆発し、2日間で少なくとも37人が死亡、およそ3000人がけがをしました。
関与が疑われるイスラエル軍の攻撃は、これを機に激化。27日には、ベイルート郊外にあるヒズボラの本部を攻撃。
イスラエル軍は、ヒズボラの指導者ナスララ氏が死亡したと発表しましたが、これで終わりではないと攻撃を継続する方針を示しました。
多くの市民も攻撃に巻き込まれています。
「子どもたちのことが心配です。あそこのきょうだいは私の目の前で意識を失いました」
レバノンの保健当局によれば、16日からの10日あまりで1030人が亡くなったといいます。
医師
「最低限のもので治療を行っています。もうすぐ患者を治療できなくなるかもしれません」
避難民の数も増え続け、人口の5分の1に当たる100万人に達した可能性があると、レバノン政府は明らかにしています。
避難民
「以前は愛する家族や仲間と一緒にいましたが、今は何も残っていません。今はそれぞれ別の場所にいます」
しかし、イスラエル軍は戦火をさらに広げています。
イスラエル軍はイエメン西部ホデイダなどで発電所や港を標的に空爆を行ったと発表しました。イエメンの「親イラン武装組織フーシ派」による攻撃への報復だということです。
“第5次中東戦争”につながる可能性は?
小川彩佳キャスター:
イスラエルによる、ガザ、レバノン、イエメンの戦闘が同時に起きているという中で、周辺の情勢は非常に緊迫しています。
23ジャーナリスト 須賀川拓 記者:
まず今の状況ですが、過去20年で最も緊迫してると言ってもいいという状態なんです。
最悪の場合、その戦果がどんどん拡大すれば、第5次中東戦争なんていうのも見えてきてしまうような気もしますが、まずキーポイントというのが、イランなんです。
今回、イスラエルが攻撃したレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」とイエメンのフーシ派はどちらもイランの出先機関と言ってもいいわけなんです。イランの指示でイスラエルへの攻撃を繰り返してきた組織でもあるので、この二つを集中して叩くことで、この戦争にイランを何とか引きずり出せないかというのがイスラエルの一つの思惑なんじゃないかなと思います。
ところが、7月に就任したイランのペゼシュキアン大統領は欧米との対話を重視する人なので、情勢が過去20年で最も緊迫してるといいましたが、かといって、イランがすぐにこの戦争に引きずり込まれるかというと、まだ少し微妙な状態とも言えるのです。
小川キャスター:
ただ、その可能性がないわけではないということですか?
須賀川記者:
その可能性は十分にあると思います。
しかし、イランが参戦するとどうなるかというと、当然、イスラエルをバックアップしているアメリカなどの国が何らかの形で介入してくる可能性というのはもちろんあるわけなんです。
そうなった場合、当然、イランのバックにもロシアや北朝鮮などの国もいるわけなんです。この国々がいきなり戦争を始めるというわけではないかもしれないですが、何らかの軍事的な介入の可能性を考えると、ロシアや北朝鮮は日本と近い国なので、遠い国で起きている戦争ではありますが、この戦果が広がれば、日本の安全保障的観点からも十分に懸念材料になると言えるだろうと思うのです。
英語通訳・翻訳者 キニマンス塚本ニキさん:
中東の歴史は学べば学ぶほどすごく複雑で、何十年も続いているとても難しい問題だと思います。
今回のようにヒズボラの指導者が亡くなったということは大々的に報じられていますが、ある日突然、爆撃で何千人もの民間人が名前も報道されずに犠牲になってしまうということや、安全な場所を必死に探そうとしていることが当たり前になってしまっているという情勢がすごい怖いなと思います。
率直に、なんでここまで悪化してしまったのかという疑問があります。
須賀川記者:
注目されるのは、やっぱり政治家たちの発言や政治的な行動なんです。そういったものがどんどん拡大してしまって、こういった地域的な紛争状態になってしまっているんです。
今後、懸念されるのは、イスラエルとイランの本格的な衝突です。衝突が起きればもっと被害が拡大してしまいます。ただ、両国は国境を接していないので、本格的な衝突に発展したとしても、まず最初は長距離ミサイルの打ち合いや迎撃合戦になるのではないかというふうに思います。
もう一つ大きな懸念があって、緊張状態が続くと、イラン国内では「抑止力として核武装をした方がいいのではないか」、「自分たちを守らなきゃいけない」という声が高まってしまう可能性がある。
そうすると、今の状況というのは地球規模で考えなくてはいけないというのを私は強く感じます。
藤森祥平キャスター:
国際社会はどこまでできるのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
ガザの紛争のときは、人道的観点からアメリカの若者はイスラエルに対する批判を強めていたんです。
ところが、ヒズボラについては、レバノンでアメリカ人が今まで何人も犠牲になっていることもあって、アメリカではイスラエルのヒズボラ攻撃に対して批判の声があまり広がっていないんです。
特に大統領選挙を11月に控えている中で、様子見という声が強いんです。ただ、民間人の犠牲がどんどん増えているので、ヒズボラの問題も停戦に向けた話し合いがそろそろ必要になってくると思いますね。
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〈プロフィール〉
須賀川拓
23ジャーナリスト、前JNN中東支局長
「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞
アフガニスタン、パレスチナ、イスラエルなど紛争地域を取材
キニマンス塚本ニキさん
英語通訳・翻訳者
ラジオパーソナリティ
9~23歳までニュージーランドで過ごす
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年
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