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「返り咲きの可能性高まった」金融市場で再び動き出した“トランプ・トレード” アメリカ大統領選終盤へ【Bizスクエア】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年10月30日 6時0分

TBS NEWS DIG

アメリカ大統領選挙まであと10日となった。選挙の行方を左右する7つの激戦州では、全ての州でトランプ氏がハリス氏を上回っていて、金融市場ではトランプ大統領誕生に備えた動きが出てきた。

 米大統領選まで10日 両陣営が激戦州で追い込み

激戦州の一つジョージア州、ハリス副大統領の応援に駆けつけたのはオバマ元大統領。

民主党 オバマ元大統領:
アメリカは新たなページをめくるときが来ている。我々にはもっと良いストーリーが必要だ。我々はカマラ・ハリス大統領を迎える準備が出来ている。 

民主党 ハリス副大統領:
選択肢は「敵のリスト」を作っているトランプか、あなたのために「やることリスト」を作っている私か、皆さんにはそれを決定する力がある。

一方、トランプ前大統領はいつものフレーズで、

共和党 トランプ前大統領:
アメリカを再び偉大にする!

 11月5日の投開票に向け追い込みを図る両候補。世論調査で、全米の支持率では、ハリス氏がトランプ氏をわずかに上回っているが、激戦州ではトランプ氏がリードしている。

そのトランプ氏は10月20日、ペンシルベニア州のマクドナルドでアルバイト体験を公開した。フライドポテトを揚げて塩を振ったりしたほか、ドライブスルーの客に商品を手渡したトランプ氏は「これは楽しい。一日中やっていられる。悪くない、好きだ。またやるかもしれない」。ライバルのハリス氏が学生時代にマクドナルドでアルバイトをしていたと、中間層出身をアピールしていることに対抗してか、トランプ氏は「私はカマラより15分長く働いた」とアピールした。

こうした中、大統領選の賭けサイトの多くで、トランプ氏勝利の予想が優勢で、勝利予想確率は60%となっている。そして、金融市場ではトランプ氏の再選を見越した「トランプ・トレード」が動き出している。

米金利高 円安ドル高「トランプ・トレード」再び… 

堅調なアメリカ経済を背景にFRB連邦準備制度理事会が利下げのペースを緩やかに進めるとの観測が市場に広がっている。これによりアメリカの長期金利が上昇、一時4.26%に達した。また、トランプ氏の勝利を見越したドル買いも広がり、10月23日、円相場は一時1ドル153円台をつけた。 

三井住友信託銀行 瀬良礼子さんは「9月の半ばから円安ドル高という形で、かなり早いペースで円安進んできたが、3つのポイントがある。一つは「アメリカの景気が強いことでの利下げ観測の後退」。二つ目は「トランプ返り咲きの可能性が高まったことで『トランプ・トレード』に備えた投機筋の円の買い持ちの解消、三つ目が「日本の総選挙で自公の過半数割れの可能性が高まってきたことでの日本の政情不安。政治の不透明感、ここへの警戒感からの円安」この三つが要因だったと考える。

(今後の円相場の見通しは)145円ぐらいを年末の中心レベルということで置いている。かなりレンジは広く見ていて上が155円とすると、下が142円あたりを見ておく必要がある」としている。

トランプ氏の勝利を織り込んだ動きは他にも。

トランプ氏が設立したSNSの運営会社、トランプ・メディア&テクノロジー・グループの株価は9月末から急速に反発。アメリカではトランプ氏による規制緩和を期待した「エネルギー関連株」や「金融株」、そして、ビットコインなどの暗号資産も上がり始めている。

さらに連日最高値を更新しているのが「金」の先物価格。トランプ氏の勝利で地政学的リスクが拡大することを懸念し、安全な資産と言われる「金」を買う動きに繋がっている。

米大統領選まであと10日 市場はトランプ優勢? 

大統領選まであと10日。選挙の結果は今後の世界経済にどのような影響を及ぼすのか。

――市場関係者の間ではトランプ優勢という考えか?

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
はい。その確信を強めた投資家がポジションを取り始めたのが、この1ヶ月ぐらいの動きだと思う。

大統領選挙の状況。リアル・クリア・ポリティクスの全国世論調査の平均値は、一時ハリス氏優勢だというふうに伝えられてきたが、ここにきて、10月25日時点で、差はついに0.1ポイントになってしまった。ハリス氏が上にいるとはいっても、実はトランプ支持は世論調査では実際の投票より低く出るという傾向が過去2回の選挙では顕著。例えばヒラリー・クリントン氏は、今の時期と同じ、投票10日前ぐらいに5ポイントもリードしたが、負けた。2020年のときにはバイデン氏が8ポイントリードしていたが、ギリギリで勝った。数パーセント、割り引いて見なくてはいけないという説がある。

さらに勝敗の行方を左右する激戦州を見ると、7つの激戦州すべてで、トランプ氏が優勢。

7州の平均でも優勢。元々は3ベルトといわれる4州(ネバダ・アリゾナ・ジョージア・ノースカロライナ)を全部落としても、ブルーウォールと言われる上の3州(ウィスコンシン・ミシガン・ペンシルベニア)を取れば、ハリス氏は勝てる計算だったが、この3州もすべてトランプ氏が優勢になっている。

――こうした中で長期金利が上昇してるというグラフが出てきて、4%台にまた戻っている。これは「アメリカの景気が堅調」ということに、このトランプ優勢が伝えられているからか。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
トランプの政策は景気をGDP比で1%ぐらい押し上げることになると思います。そうすると景気がいいし、物価も上がる可能性があるということからこういう動きになっている。

ドル円もドル高が進んでいて、一時153円台までいった、10月26日現在も152円台。7月に日銀が追加利上げしたときの水準になっている。

トランプ大統領が誕生したら、何が起きるのか。政策を整理してみる。 

――大きいのは減税か。

 りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
経済を持ち上げるという意味では一番大きいと思う。いろいろあるが、議会との組み合わせで、どこまで実現できるかはまだ確定はできない。やはりトランプ大統領がここまで優勢になってきたら“ある程度”は実現するだろう。その“ある程度”がGDP比1%ぐらい財政で景気を押し上げるという期待感が高まっている。

――規制緩和にも期待が高い?

 りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
財界は、むしろこちらの期待が高い。テスラのイーロン・マスクが委員長になって、政府機関(政府効率化委員会)というのを作った。規制緩和のトップで陣頭指揮をする。イーロン・マスクはいろんなビジネスをやっている。掘削会社が高速の地下鉄道を作る。EV専用のトンネルを作る、あるいは衛星通信などたくさんやっている。そこのトップに規制緩和を強力に進めることから、財界としては大変期待が高まっている。

 ――「規制緩和を進めてくれ」という経済人が、規制緩和を決める、政府のトップになるというのは日本では考えられない。さらに「1つ規制を作ると10の規制を廃止する」いうのを原則にすると言っている。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
もともと「1つ作ったら、2つ廃止する」というのがアメリカのルール。それをバイデンが廃止した。なので、もう1回返り咲いたら、もっと強力にやるというわけだ。

――石油・天然ガスをどんどん掘るともいっている。

 りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
これは庶民のインフレに対する不満が非常に強いので、エネルギーコストを下げるという政策。

――関税政策で「中国製品は60%関税を追加に課す」や、日本を含め、他国のものにも追加関税を課すというが、心配だ。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
国際機関は、これが世界経済を押し下げるということで警告を出している。トランプ氏は中国に対しては実際にやるかもしれないが、他の国はいろんな交渉のための材料であって、ここまで過激なことをやると見る必要はないと思う。 

――日本車に関税20%を掛けられたら、大変なことになる。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
相当影響が大きいと思う。中国に対する関税の問題でも、世界経済がガクンともう一段冷え込むきっかけになる可能性がある。

 ――250兆円規模の政府出資ファンド創設するという。

 りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
これは関税収入を原資にして、「ソブリンベースファンド」国の意思を表すファンドをつくる。それによってアメリカ国内、それから世界中に投資をする。元々、アメリカは産業政策には後ろ向きだったが、最近半導体など非常に前向きになってきて、もっと推し進めるという国家の意思を示すということだ。

 ――新しい産業政策の財布を作るようなものか。 

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
そうですね、はい。

 ――こういう政策の中で、インフレ加速させるような感じになるわけだが、とりわけ注目されてるセクターとしてはどのようなものがあるのか。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
まずインフレよりも先に今、少し政策金利が高すぎて、景気の減速を和らげるという意味で景気を押し上げる方が期待感は高い。さらにセクターでいうと、エネルギーコストを下げることから「エネルギーセクター」。それから「ロシア・ウクライナ戦争はすぐやめさせる」ということで「ウクライナの復興需要」。建機などはもう株価が上がっている。それから「規制緩和で金融」「防衛力強化で防衛」。さらに食品はハリス氏が「生活コストを下げるために食品価格の値上げを認めない」という政策を打ち出していたが、それをやめさせる。

――一方で再生可能エネルギーは下落。住宅も下落。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
パリ協定からもう1回再離脱する可能性が高いと思う。かつ住宅は、ハリス氏は初めて買う人に「頭金2万5000ドル補助金を出す」と言っていたが、これは無理ということで少し期待感が逸れている。

「トランプ・トレード」再び… 世界経済への影響は? 

――「トランプ・トレード」というと、2016年にトランプ大統領当選したときに「トランプラリー」というのが起きた。当選のときから、ものすごい勢いで株価が上がった。だから「夢をもう一度」と、今回も同じように株価が上がると期待する人も世の中にはいる。ただ、セクターごとによって色合いもだいぶ違いそうだが、今回はどういうところが共通してどういうところが違うのか。 

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
共通点という意味では、前回はサプライズが大きかったので株価が大きく反応したが、私の感覚では30%ぐらいは既に織り込んでいると思う。

――2016年はブレグジットもあって株価低調だった。しかも「トランプ当選は怖い」とみんなが思っていたので、おっかなびっくりだった。今は逆に株価はむしろずっと最高値圏で来ていて、伸び代は2016年より少ない?

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
かなり小さいと思う。

――前回はディスインフレの時代だった。インフレ環境にある中で長期金利が上がってドル高になったらインフレを加速する。むしろ逆に景気減速懸念の方が台頭しているのでは。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
それがあるのでここ数日間は株価が下がっている。ただ投資をやる上では、期間が大事。期間という意味では普通、長期の投資家でも3~6か月ぐらいだと思う。そうするとその間で先に景気刺激の効果が出てくるのでそちらがまずプラスになって、しばらくその状態が続いた後には物価上昇懸念が出てくると思う。

――まだ先だと。物価上昇懸念を心配するなと株式市場は都合の良い理解をしようとするがどうか。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
規制緩和の話は確かにすごいエンジンにはなると思う。だが規制緩和でメリットを受ける人がその規制緩和のヘッドになるというのは、フェア・公平さを大事にしているアメリカで、本当にこんなことをやって大丈夫なのかと。当然、規制というのは、それに守られてる人たちもいるから、また分断が進んでいく感じもする。 

――実際になってみなければわからないとは言いつつも、トランプ的な手法で強引に物事を進めていくと国内の混乱を招くこともある。それでも市場の方は、ハリス氏よりもトランプ氏の経済政策に期待する感じが強いのか。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
これはもう相当強いと思う。まず潜在成長率が上がる、それから規制緩和は結局、物価を下げる。その辺の期待も大きいと思う。

(BS-TBS『Bizスクエア』 10月26日放送より)

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