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“政界のマツジュン” 念願の党公認も復職叶わず 立憲・篠原氏が躍進 変わる神奈川1区【衆院選2024】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年10月29日 22時30分

TBS NEWS DIG

10月27日に投開票が行われた衆議院選挙。神奈川1区では、野党候補が乱立する中、前職の篠原豪氏と、“政界のマツジュン”こと、元職の松本純氏の事実上の一騎打ちとなった。投票日まで接戦が続いたものの、結果は立憲民主党の篠原氏が約9万票を獲得し、小選挙区で2度目の勝利を収めた。一方、自民党の松本純氏は約6万8千票にとどまり、2万票差で敗れ、議席を取り戻すことはできなかった。
なぜ松本氏が敗北し、篠原氏が勝利を収めたのか。両陣営の選挙活動を振り返り、JNNが行った情勢調査を基に、投票行動を分析した。

自民・松本純氏 謙虚に再出発も 党への逆風に阻まれる

「皆さんの生命財産を守り切るということが、国会議員の責務であります。その責任を果たすためにはバッチをつけないとできないんです。バッチがついて初めて公の議論ができる」

横浜・桜木町駅前でこう訴えた、松本純氏(74)。襷には念願の“自民党公認”が光る。最終演説には、麻生太郎自民党最高顧問が応援に駆けつけた。

中区生まれの松本氏は、1996年に初めて当選して以来、衆議院議員を7期25年の間務めてきた。麻生太郎氏率いる麻生派(志公会)の前身である「為公会」の立ち上げにかかわり、麻生氏の右腕として、信頼が厚い。安倍内閣では国家公安委員長兼防災担当相として入閣。自民党内で重要な役割を担ってきた。

しかし、2021年、コロナ禍の緊急事態宣言中に、銀座のクラブに深夜まで滞在した問題で国民からの厳しい批判にさらされる中、自民党から離党勧告を受け、離党。無所属で挑んだ直後の衆院選では、約3万票差で落選を喫した。

「真摯に反省、謙虚に再出発」自身のブログにこう綴った松本氏。
落選してから選挙までの3年間は「時間に余裕が出来た」こともあり、地元での活動には余念がなかったという。自民党関係者からの評判も悪くない。松本氏が自ら編集しているというブログにも、日々の活動が事細かく記されている。

自民党に復党し、党公認ももらって、再び挑んだ衆院選。陣営は松本氏が落選中の3年間に積み上げてきた活動に自信をのぞかせていた。12日間と短い期間だったが、準備不足は全く感じられず、むしろ松本氏にとっては待ちに待った選挙という方がふさわしいだろうと感じた。
地元県市議と薬剤師連盟らによる強い結束のもと、今度は「何がなんでも勝つ」。勝利に向けた並々ならぬ決意があった。

立憲・篠原豪氏 「荒削りも、若く勢いがある」 

「この10年で日本は豊かな国から貧しい国になった。自民党の政策が間違ってきたからではないか」

神奈川1区で、松本氏と戦うのは立憲民主党・篠原豪氏(49)。「荒削りながらも、若く勢いがある」篠原氏について、地元議員の1人はこう評価する。地元出身で、横浜市会議員を経験。これまで比例復活で2回の当選を果たし、前回は無所属の松本氏に3万票の差をつけ、小選挙区で初の当選を果たした。

与党を批判し、物価高への対応として食料品の消費税ゼロを掲げ、自転車で選挙区を駆け巡り支持を訴えた篠原氏。1区では10年ぶりに共産党候補が出馬、野党候補者が乱立する事態となり「共闘」が叶わず、リベラル層の票割れが大きな懸念となった。篠原陣営は人手不足の中、順調な出だしではなかったものの、選挙終盤には野田代表や連合の吉野会長が応援に駆け付け、支持層をさらに固めていった。取材でも、篠原氏の演説に足を止める市民が終盤にかけて多くなったのを感じた。

神奈川1区 勢力図が変わる

神奈川1区は、県庁など行政機関が集まる横浜市中心部の「中区」、工業地帯とベットタウンが広がる「磯子区」、歴史ある景勝地や海岸エリアを擁する「金沢区」の3つの区で構成されていて、約42万5千人を超える有権者を抱える小選挙区。ここは松本氏が長年、強固な地盤を築きあげてきた。しかし今回の選挙で、その地盤が揺らいだことは明白だと感じた。

JNNが行った事前の情勢調査では、公示日前は松本氏がリードするも、選挙終盤になると篠原氏が逆転。自民党の旧統一教会・裏金問題と続き、選挙期間中に報じられた“非公認候補への2000万円支給”問題が追い打ちをかけたとみられる。自民党に対する有権者の目は厳しい。

「最初から厳しいと分かっていたが、ここまでとは」松本陣営の1人からは、思わずため息もこぼれた。電話口での支持者の反応は予想以上の厳しさを物語ったという。取材でも、自民党支持の有権者から「投票先に迷っている、白票にするか迷っている」という話をよく聞いた。松本氏は、支持層を固めきることができなかったのではないかと推察する。

JNNの行った当日の出口調査では、立憲支持層の9割が篠原氏に投じたのに対し、自公支持層で松本氏に投じたのは7割にとどまった。さらに、無党派層については、5割が立憲民主党に、わずか1割弱が自民党に投じる結果となった。

投開票日の当日、深夜に篠原氏に当選確実が出る。74歳の松本氏は「73歳定年制」という党の規定により、比例復活はない。2度目の落選となった。今後の進退について、松本氏は次のようにブログに書き留めた。

「これまでの経験と人脈を活かし、地元、企業、団体の皆様に寄り添い、お役に立てるよう微力を捧げて参ります」

一方、当選を果たした篠原氏。陣営は今回の結果について、自民党に対する国民の不信の表れだとし、自民への逆風の強さを認めながらも、これまでの地元での活動、交流を通して1区で篠原氏の存在が浸透してきたことを実感するという。
ただ、陣営の一人はこうも語る。「自民党が次の新しい候補を立てた時が本当の勝負だ」

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