「ヤンキー先生」義家弘介氏大敗 “県内唯一の裏金議員”の逆風強く 神奈川16区【衆院選2024】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年10月30日 21時10分
自民党の派閥の“裏金”問題で、比例重複立候補が認められなかった「ヤンキー先生」こと義家弘介氏。まさに「背水の陣」となった神奈川16区での戦いは、立憲民主党の後藤祐一氏と事実上の一騎打ちとなった。
これまでの選挙戦でも激しい戦いを繰り広げてきた両者。しかし今回は約3万3000票差がつき、午後8時に後藤氏に当選確実が報じられる圧勝となった。大差の裏には何があったのか、12日間の選挙戦を取材した。
区割り変更に野党共闘不成立… 構図変わる神奈川16区
「私の後ろには歴史はあっても、この戦いの後ろには何もありません!」
10月15日、衆議院選挙公示日の午前10時。秋空の下、出陣式を行う義家氏は力強く訴えた。義家氏は369万円の不記載が問題となり、党の処分は免れるも比例での重複立候補なしという、まさに「後のない戦い」となった。
一方、県立厚木高校の出身だったことから市内での圧倒的支持率を誇る後藤氏。
自民支持者にも「地元の人に当選してほしいから選挙区では後藤さんに票を入れる。そのかわり、比例では自民に入れる」と話す人も多いという。そんな後藤氏の陣営だが、公示前は戦局に不安の色をのぞかせていた。勝利を収めた2021年の衆院選とは異なり、今回の選挙戦では共産党が候補者を擁立。野党共闘が崩れたのである。
そして、崩れた構図をさらに複雑にしたのが、10増10減による区割り変更である。これまで16区に含まれていた相模原市が、今回、対象地域から外れた。この相模原市は、前回選挙で後藤氏が優勢だったのだ。
他方、新たに16区に加わった海老名市は、2021年には立憲・太栄志氏が、激戦の末、自民党・甘利明氏に勝利を収めたエリア。公示の前、後藤氏陣営は「前回の票がそのまま両党に出てくるのか、全然違う答えになるのか、全く予想できない」と話していた。
勝負は海老名市
“裏金”追及強める後藤氏 組織戦繰り広げる義家氏
両候補が勝負をかけたのは、新たに加わった海老名市だった。
「相手候補は、神奈川県唯一の裏金議員!」
投開票まで1週間となった20日、海老名駅近くの交差点で後藤氏はこう訴えた。“裏金”についての糾弾に加え、コロナ対策をめぐり約900億円の経費を削減した実績や、教育費の無償化の訴えなどを繰り返す。信号待ちのお年寄りから小学生まで、足を止めてビラを受け取る姿が見られ、交差点を曲がる車からも手を振る人がいた。後藤氏陣営が「この週末でぐんと反応が良くなった」と話すのも納得がいく市民の反応ぶりであった。
一方の義家氏は、休日は積極的に地元のイベントに参加。平日は駅前での演説に精を出した。後のない戦いとなった義家氏を支えようと、出陣式には河野太郎氏が応援に駆け付けた。また公明党も全面的にバックアップ。投開票日にJNNが行ったインターネット調査によると、比例で公明党に投票した人の95%が、選挙区では義家氏に投票していた。
小泉氏の応援に湧く義家氏の最終日 しかし実情は厳しく…
26日、選挙活動最終日。本厚木駅で、小泉進次郎氏が義家氏の応援演説に駆け付けた。さすがの人気ぶりで、駅前は大きな人だかり。中には海老名からわざわざ小泉氏の応援に来る人の姿もいた。しかし、その盛り上がりとは裏腹に、戦いの実情は厳しいものだったようだ。
演説後、遅めの昼食をとるべく商店街にある喫茶店に立ち寄った記者。そこで偶然居合わせたのが、義家氏陣営の選挙対策委員長だ。
話を聞いてみると、苦笑まじりに「番組冒頭での当確はやめといてね」と話す。義家氏陣営が嘆くのも無理はなく、各社とも「後藤氏がリード」と報じる状況。選挙戦終盤にJNNが行った調査でも、30ポイント以上の差がついていた。どの調査を見ても一つも勝っていないことに対する、陣営の落胆ぶりが会話の節々に垣間見えた。
その差は投開票日まで狭まることはなかった。JNNでは取材結果から逆転が難しいと評価し、午後8時に後藤氏に当確を打つ決定を下した。最終的な開票結果では得票率の差は約17ポイントと調査結果よりは小さかったものの、3万3000票差で義家氏の大敗となった。
調査よりも差が詰まった理由の1つには、両氏が勝負をかけた海老名市で浮動票が維新・伊左次美江氏に流れて、後藤氏が伸び悩んだことがあげられる。
しかしリードを守り切った後藤氏は、自身初となる選挙区2連勝をおさめた。一方2012年から議席を守っていた「ヤンキー先生」は、議席を失うこととなった。
開票の翌日、義家氏陣営に話を聞くと、今回の敗因をこう話してくれた。
「厚木では、地盤を持つ後藤氏の動きに届いていなかった。そして、今回はやはり『県内唯一の裏金議員』という義家氏に対する風当たりが強かった。支援者の中では『納得はしなくても一定の理解はしよう』ということでまとまっていたが、それはあくまで支援者内の話。選挙区の有権者への説明が不十分だった。さらに終盤には“2000万円問題”で自民党に対する逆風が強まった」
厳しい逆風の中、苦杯を喫した義家氏。選挙戦後、自身のSNSで「全ては私の力不足」と総括した。
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