“忘れられている”の前に“知られていない”…阪神・淡路大震災で後遺症残った“震災障害者” 国は「定義・把握必要ない」補償制度に課題も【news23】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月17日 15時0分
阪神・淡路大震災から17日で30年。死者6434人という未曾有の災害ですが、震災の後遺症に苦しむ「震災障害者」と言われる人たちの存在はあまり知られていません。地震大国の日本ですが、取材した震災障害者の一人は「あすは我が身と思って私たちの存在を知ってほしい」と訴えています。
「挟まれて痛いっていう感覚すらもなかった」30年も後遺症に悩まされ続ける
1995年1月17日の早朝、阪神・淡路大震災が起こりました。
当時のニュース映像
「見渡すかぎり、右も左も、焼け野原というような感じになっています」
「橋げたが完全に落ちてしまって、バスが本当にギリギリのところに止まっている」
高速道路の倒壊のほか、住宅にも甚大な被害をもたらし、犠牲者の8割近くが家屋や家具の倒壊による圧死・窒息死でした。
倒れた建物の中で生き埋めになった人も多くいて、懸命な救助活動が連日続けられました。
しかし、救出された人の中には、その後、重篤な後遺症に悩まされる人も少なくありません。
神戸市で被災した馬場覚さん(52)は、自宅アパートが全壊し、倒れてきた家の梁などに脚を挟まれ、身動きがとれなくなったといいます。
神戸市で被災 馬場覚さん
「全く何が起こってるのか、わからない状態でした。挟まれて痛いっていう感覚すらもなかったですね。どっちかというと何の感覚もなかった。麻痺していたのかもしれない」
6時間もの間、圧迫され続けた両脚の筋肉は膝から下が壊死し、「クラッシュシンドローム」と診断され、筋肉の切除を余儀なくされました。
馬場さんは、つま先を上に向ける動きができなくなり、今も足首を装具で固定しないとうまく歩くことができません。
馬場覚さん
「冬とか、前日よりも急激に気温が落ちると、もう明らかに硬直しちゃってるんで歩くときにしんどい。ずっと立ち仕事をしていて、足が重たい状態があると思う。あの状態がずっと続いているような状態」
「明日は我が身と思って」震災障害者2000人超との指摘も
馬場さんのように震災が原因で後遺症が残った人は、「震災障害者」と言われます。
住宅の被害は約67万棟、亡くなったのは6434人で、震災障害者は2000人を超えると指摘する声もあります。
ただ、国はこれまで、震災障害者の人数の把握を積極的には進めてきていません。
政府の国会答弁(2019年)
「原因にかかわらず、障害者への支援はすでに行っているため、新たに『震災障害者』を定義して、数や程度を把握する必要はない」
震災障害者について“定義することさえ必要ない”というのです。
馬場覚さん
「“忘れられている”の前に“知られていない”。こういうのがあるっていうのが理解されていないっていう状況」
自然災害の多い日本で、国だけでなく、多くの人に「明日は我が身と思って震災障害者の存在を知ってほしい」と馬場さんは考えています。
馬場覚さん
「『大変だったね』『知ってる』だけの表面的な理解ではなくて、『どうなんだろう』っていう、少しでも何か興味を持ってもらえることがすごく大切」
30年の月日が過ぎても、震災による後遺症と付き合い続ける人々。国が彼らの声に耳を傾ける日は来るのでしょうか。
重傷者1万682人も「見舞金制度」対象は64人
小川彩佳キャスター:
大震災から30年。その間にも様々な深刻な災害が起き続けています。それでもなお、このような形で見過ごされてきた被災者の方がいるということですね。
株式会社QuizKnock 伊沢拓司さん:
調べてみると、他の障害を抱えている人との違いはあると思います。例えば、財産や家を同時に失っていたり、精神的なダメージ、PTSDみたいなものも一緒になっているケースが多いんですよね。
やはり、例外的な対応が必要になってきますが、国の補償は例外的ではないです。神戸や兵庫だと、認定の制度があるというところもあるみたいですが、2024年には能登半島でも大きな地震がありました。
そういうときは、よりPTSDになる可能性もありますし、避難所の中での対応も変わってきたりすると思うので、把握は必要だと思います。
藤森祥平キャスター:
この震災で後遺症のある人について、最大で250万円を支給する「災害障害見舞金制度」が設けられています。対象は、▼両腕を切断した人、▼両足を切断した人、▼両眼を失明した人など、重い障害の人に限られています。
阪神・淡路大震災では、重傷を負った人は1万683人という中で、この制度の対象者は2019年時点で64人となります。馬場覚さんは支給の対象外ということです。
データサイエンティスト 宮田裕章さん:
変えるべきですよね。見えない存在として扱われている震災障害者の人にどう寄り添うかということです。
財源の問題で重傷の人を定義して、まずは支援していくことはわかります。ただ、当初は軽傷だと思っていたことが生活の中で非常に困難を極めるケースもたくさんあると思います。
現在では、デジタル技術を使うことによって、広くネットワークを作りながら、しっかりと状況を把握しながら寄り添うことができるはずです。
今後、政府は「防災庁」を立ち上げますが、そのときには、これからのリスクに備えるだけではなく、振り返って今までの災害・震災にあわれた人たちにも、寄り添えるような仕組みを同時に考えていくべきだと思います。
阪神・淡路大震災から30年 「震災障害者」知っている?
NEWS DIGアプリでは『阪神・淡路大震災』について「みんなの声」を募集しました。
Q.阪神・淡路大震災からあすで30年 「震災障害者」知っている?
「よく知っている」…4.3%
「詳細は知らなかった」…27.3%
「全く知らなかった」…67.2%
「その他・わからない」…1.2%
※1月16日午後11時20分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは17日午前8時で終了しました
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〈プロフィール〉
伊沢拓司さん
株式会社QuizKnock CEO
東京大学経済学部卒 クイズプレーヤーとして活躍中
宮田裕章さん
データサイエンティスト
慶応大学医学部教授
科学を駆使して社会変革に挑む
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