「第2のニセコ」白馬村が目指す“新たな観光地” 外国人客が殺到も地元住民「ニセコみたいになったら困る」【Bizスクエア】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年2月5日 7時0分
外国人観光客の増加や外資系ホテルの進出など「第2のニセコ」といわれているのが、長野県の白馬村。インバウンドの恩恵の一方で、様々な問題に直面している白馬村が目指す新たな観光地の形を取材した。
「第2のニセコ」と注目の白馬村 外国人客増加の一方で問題も…
ゲレンデに溢れかえる大勢の外国人観光客。これは先週の長野県・白馬村の様子だ。その目当ては「今まで見た中で一番美しい雪。素晴らしい」「ここの雪はとても軽いパウダースノーでスキーにぴったり」という。良質なパウダースノーに加え、東京や関西からのアクセスも良いことから、白馬は今、「第2のニセコ」として、外国人観光客から注目を浴びている。
観光客の増加に対応するため、こちらのスキー場では去年12月、総額21億円をかけて、38年ぶりに新しいゴンドラを導入しました。今シーズンは、スキーやスノーボードをしない、東南アジアからの観光客も増えているという。
インドネシアからの観光客にスキーはしないのか訊ねると「いいえ、ただ雪を見に来た」「雪遊びをする」と話す。
白馬村によると、2023年の外国人宿泊者数は25万人ほど。10年前と比べると4倍以上になっている。こうした中、外資系ホテルの参入が加速している。
2年前に開業したシンガポール資本の「カノリーリゾーツ白馬」。1日1組限定の宿泊施設は、3つのベッドルームがある広さ400平米のスイート。1泊100万円以上(6名まで同価格・食事代別)だが、2月までの予約は、ほぼ埋まっている状態だという。
広報担当の渡辺篤志さんによると「東南アジアの客が非常に多い。富裕層の中でも超富裕層と呼ばれるような層の宿泊客が多く利用している」という。
ほかにもアメリカ資本の「コートヤード・バイ・マリオット白馬」などが営業しており、今後も外資系高級ホテルの進出が予定されている。
さらに、国内の企業も進出。2024年12月にオープンした「ラヴィーニュ白馬」。国内で宿泊施設を手掛ける「温故知新」が運営する、高級分譲ホテルだ。全38部屋はほぼ完売で、オーナーの滞在時以外はホテルとして利用されている。料金は1泊2食付きで1人5万円前後(2名1室利用時)から。
支配人の清水潔さんによると「予約が1月は9割を超えている。海外の方がメインになっている」。
地元の不動産会社によると、東南アジアなどの富裕層による別荘の購入も増えているといいます。さくら不動産の有井美彩さんは「(購入目的の)一つは自分が使ってない時期に貸し出しをすることによって、1泊ごとのリターンが返ってくるというようなインカム(収入)。あとは土地を購入したまま数年後に売ることによって、キャピタル(資産)にもできる」という。
こうした土地売買の影響で、白馬村では地価が高騰。去年(2024年)7月に発表された路線価では、村内の和田野地区の上昇率が32.1%と日本一となった。村で古くから営業する土産物店は、こうした影響により、地元住民が徐々に白馬から離れていると話す。
古くから土産店を営む倉科光男さんは「(付近の)大体20戸のうち7軒も今いなくなった。(3分の1か?)はい。ニセコみたいになったら困る」という。
北海道のニセコエリアでは、外資による投資ラッシュの影響で、一部では地価が15倍近くに上昇。物価や家賃も上がり、地元住民の転出といった事態も起きている。白馬村は、今後こうした課題とどう向き合っていくのか。丸山俊郎村長に聞いた。
村長・地元はどのように捉えているのか 懸念と対策は?
長野・白馬村 丸山俊郎村長:
外資をウェルカムと思ってはいないが、幅広い価格帯の宿泊施設があるということは、客の様々な需要に応えることができるのでいいこと。
「民宿発祥の地」と言われる白馬村。現在でも900軒ほどの宿泊施設があり、その大半が家族経営の民宿やペンション。
丸山村長によると、こうした地元の宿泊施設は、外資系などの高級ホテルと価格帯が違うため、客のすみ分けが可能だという。地元の宿泊施設は、外資系高級ホテルの進出をどのように捉えているのか。
ペンションのオーナーである林信之さん(70)は「活気があってこその観光地だと思う。その中でうちを選んでくれる人も中には出てくるということ。喜ばしい」。
別のペンションオーナーの福島哲さん(74)も「私たちは、別に競争相手でも何でもない。観光地なので、全然のノープロブレム。どうぞ歓迎です」と話す。民宿やペンションには国内の常連客や、日本らしい雰囲気を求める外国人客が来ているため、外資系高級ホテルとの住み分けは出来ているという。
一方でこんな懸念も…
福島さんは「一番の問題は、私たちは身内でやっている。何年後から相続が発生するので、その時にどうなっているかが心配」という。地価の高騰にともない、相続税の負担が増えることへの心配とともに、土地の転売への懸念も住民にはある。先ほどの土産店店主の倉科さんは「(土地・建物を)買った外国人もこの円安が円高になっていくと、また別のところに行くと思う。そうすると、ここがどうなるか怖い」と話す。
こうした問題について、丸山村長は…
長野・白馬村 丸山俊郎村長:
非常に高い相続税を払う。そのためには現金が必要だが、(土地を)売らないとその金額が払えない一方で、売ってしまうと今度は住んでいられなくなる状況が起きる。そこに関しては行政という立場から国に(見直しを)訴えている。
丸山村長は、外資系企業の進出などに伴う地価の高騰対策として、相続税の評価方法の見直しや転売防止のための税制改正を求める要望を国に出しているという。
こうした問題以外にも白馬村が直面している課題がある。白馬丸金旅館の社長である丸山貴義さんは「この辺の宿は小さく、家族経営が多い。世代交代で帰ってきた息子やその妻が食事を用意することができればいいが、そうは簡単にいかない。食事の継続ができないことになる」と懸念を話す。オーナーの高齢化や人手不足による、食事を提供できる宿泊施設の減少。現在は村のあちこちにキッチンカーが出店している。牛丼はソールドアウト。価格は2500円と高めだが、それでも結構売れているという。
「第2のニセコ」外国人客が殺到 白馬村が目指す“新たな観光地”
こうした食事の問題を解消するため、白馬村では新たな取り組みも始まっている。外国人観光客でにぎわう長野県・白馬村。食事を提供できる宿泊施設が減少しており、それを解決するための取り組みが始まっている。ズクトチエ代表取締役の和田寛さんは「丸金旅館さんの元々の食堂だった部分をお借りして、僕らが宿泊客及び外部向けのレストランとして開業した」食事の提供が困難となっていた旅館。地元の企業が食堂の運営を引き受け、宿泊者以外も利用できるようリニューアルした。
和田さんは「外部の人がほとんど利益を外に持って行って、地元はただそこの舞台になりましたみたいなことにはしたくないと思ってやっている。(ニセコとの )一番大きな違いは、将来的にわたって白馬の人がきちんと中心プレイヤーで居続けることをまだ整えようと思ったら、整えられる時点だということ」という。
行政・民間それぞれで、様々な取り組みが続く白馬村。丸山村長は今後も、それぞれの分野で力を合わせることで、持続可能な観光地を目指したいと話す。
長野・白馬村 丸山俊郎村長:
しっかりと地元の人達が長く暮らして、やりがいを持って進んでいけるような地域を作り上げていきたい。その中で生じる課題を行政としてできる解決、また、民間でないとできない解決をみんなで共有し合って、力を合わせていい地域を作り上げていきたい。
現在外国人観光客が9割で、日本人が1割ぐらいの白馬。地元の人たちの中で、今一番の悩みの種が税金。白馬で上昇している地価だが、1位が白馬村で32.1%。TSMC誘致で話題の熊本・菊陽町より高く、3割も相続税が上がっている。
地元としては「外国人観光客とどう共存していくか」という取り組みをしている。「大規模開発に伴う住民説明会を義務づける」「宿泊税など観光財源の導入を検討する」そして国への要望としては「相続時の時価評価の見直し」「転売防止のための税制改正を求める」などの対策を挙げている。
――「第2のニセコにはしたくない、なりたくない」という思いが強いのか。
千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
特に白馬の場合は家族経営・中小規模の旅館がいっぱい並んでいるという町。そこへ大規模資本が入ってきて買収されてということになると、地元の人たちは何のメリットもないということになる。それをどうやって避けていくか。自由に土地が売買できる日本だと歯止めをかけるのは簡単ではない。
――とりあえず何から始めるべきか。
千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
牛丼2500円でも売れるというのはある意味いいこと。儲けるチャンスだし、インバウンドにたくさん来ていただいてお金をたくさん落としてもらうことは、日本経済のためにプラスにはなる。そこの部分と日本人が遊びに行ける場所ということをうまく両立させるように二重価格制度のような感じで、日本人が行く場合には値段が抑えられるような工夫をすることは非常に大事なのではないか。
――白馬に落ちるお金が、地元のコミュニティにもちゃんと落ちるような仕組みを作ることが必要か。
千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
そうですね。
(BS-TBS『Bizスクエア』 2月1日放送より)
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