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埼玉・道路陥没から1週間 120万人に「水の使用控えて」 県の“異例”の呼びかけの効果は?「省インフラ」が必要?「インフラ老朽化」とどう向き合う?【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年2月5日 12時46分

TBS NEWS DIG

発生から1週間が経った埼玉県八潮市の陥没事故。救助活動が難航する要因となっている下水の流れ込みを減らすため、埼玉県はおよそ120万人を対象に水の使用を一時的に控えるよう求める“異例”の呼びかけを行いました。その効果はあったのでしょうか。

穴の内部にがれき 救助活動阻む下水

埼玉県八潮市の陥没事故から1週間経ってもなお、救助活動は難航しています。

転落したトラックの男性運転手の安否は、今もわかっていません。

現場周辺の住人
「まだ中に取り残されていると聞くので、いち早く救助してほしい
「水を使わないように流さないようにしている状態で、洗濯も1週間ぐらいしてない」

28日の発生当初は直径5メートル、深さ10メートルほどだった穴。29日には新たな陥没が起き、その後、道路が崩落して一つの巨大な穴に。

現在は直径約40メートル、深さ15メートルほどに広がりました。

消防が新たに公開した穴の内部の写真には、大量の土砂やアスファルトの破片が。穴にたまった土砂やがれきは、高さ約8メートルにのぼるとみられています。

男性の救助に向け、重機を使って土砂などの撤去が進められていますが、作業を阻んでいるのが、穴に流れ込む下水です。

120万人に「水の使用控えて」効果は

下水の量を減らすため、県は異例の呼びかけをしました。

埼玉県 大野元裕知事(4日)
「皆様には午後2時、いまから午後5時まで可能な限り水の使用を控えていただきたい

県内12市町の約120万人を対象に、下水道の使用自粛を呼びかけてきましたが、4日午後の午後2時から3時間限定で、可能な限りの節水を強く求めたのです。

現場近くのクリーニング店。午後5時前に訪れると、洗濯機は動いていませんでした。

東屋クリーニング 尾花謙次店主
「協力のために午前中に洗って仕事をした。今は排水を少なくしようというので、いつもは『高』ですすぎをしているが、今は『中』にして回してすすぎをする。1週間に2回洗っていたところを1回にして」

4日の節水呼びかけの効果について、県は…

埼玉県の担当者
「午後2時から4時までの間は水位低下に成功したが、それまでの間に水位上昇があったため、全体として3日よりも水位を下げることができなかった。『午後2時から5時は(水を)使わないでください』というお願いをしたがために、そのあとではなく前に排水作業があったのかなと」

住民に自粛を求める状況はいつ終わるのか。

埼玉県 大野元裕知事
「救出活動が終わり、応急復旧に入ったら、そこから1週間程度で我々としても順調にいけばお願いを解除できる見通し」

ただ、現場の一部が崩れる可能性があり、本格的な救助活動の再開は見通せていません。

道路陥没から1週間 救助活動は難航

小川彩佳キャスター:
何とももどかしい時間が経過していきます。事故から1週間が経ちますが、救助活動は未だに難航しています。

伊沢拓司さん:
正直ここまで長引くとは思っていなかったですが、これは知らなかっただけで、今後こういう事故が増えていくことをアップデートしていく必要があるかもしれません。

インフラ老朽化どう向き合う?

藤森祥平キャスター:
下水道管の破損が今回の事故に繋がったという指摘もあり、インフラの老朽化は全国的な問題です。

インフラの寿命は、建設から約50年と言われています。

建設後50年経過する割合(2030年3月)
▼下水道…16%、▼水道…21%、▼トンネル...35%、▼道路橋…54%
建設後50年経過する割合(2040年3月)
▼下水道…34%、▼水道…41%、▼トンネル...52%、▼道路橋…75%
ほとんどが危機的な状況になります。(国交省2023年3月時点)

インフラ整備に関する研究の第一人者である、東洋大学大学院・根本祐二教授によると、「インフラの老朽化は“緩やかな災害”。今から着手する必要がある問題もあり、いずれは起きてしまう災害である。しかし、現在のインフラをそのまま維持する場合は、毎年12.9兆円がかかる試算であり、全てを維持し続けるのは不可能だ」といいます。

小説家・真山仁さん:
一般の道路やインフラの整備は、税金で行われています。現在のインフラをそのまま維持するお金はどこにもないとなると、インフラの老朽化対策をしない方向を考える必要があると思います。

例えば、能登半島地震の復旧が遅れている一つの理由は、インフラが戻らないことです。日本は、たとえ人口が15人のところでもインフラを元に戻そうとします。人口が減少して、人がいないところのインフラを完璧に元に戻すことが大変難しくなっています。便利さを追求してきた時代で、川には何本も橋がかけられましたが、本当にそれが必要なのかは誰も考えません。その維持にかかるお金のことを考えていないからです。

2040年になり、古い道路橋などを変えるには、大幅な増税をしない限りはできません。行政サービスは、無尽蔵にいくらでもしてくれるという考えを改めるところに来ているんだと思います。

藤森キャスター:
どうしても当たり前に受けられるサービスだと思ってしまいますよね。

根本教授は“省インフラ”という考え方を提言されています。サービスの質を維持しつつ、最大限コストを抑えようというものです。大規模な設備ではなく、各家庭や集合住宅ごとで行う「合併処理浄化槽」という下水処理方法や、橋の修繕の優先度を設定する「橋梁トリアージ」などがあります。

真山仁さん:
日本は多くの人が忘れていますが、世界で最も省エネが上手な国です。原料がなく電気代が高い。省インフラも、省エネと発想は同じで、今まで100%完璧だった部分を半分に減らしても何とかなるところはたくさんあって、それを実践してるところもあります。しかし、そうすると、実践しているところから、「どうしてうちが請け負う必要があるんだ」という、“不公平”という言葉が行政には立ちはだかっていきます。もう一度省エネと同じ発想に戻ってほしいと思います。

小川キャスター:
“省インフラ”という言葉もありますが、今後どう維持していくかを考えていかなければなりませんね。

伊沢拓司さん:
もちろんAIや人工衛星等技術革新を利用したアセスメントが進んではいますが、多少は税金を使わなければならないレベルに来ています。マイナスがゼロになる行為は、ゼロがプラスになる行為に比べると、実感が湧きづらく、担税感が強いと思います。財源がなく、国民に一定の増税を求めていくには、国民と政治とのコミュニケーションが足りない部分はあります。政府は国民の不信感を解消していく必要があり、国民も細かい議論をしていく必要があると思います。

小川キャスター:
岩手県の矢巾町では、行政側がワークショップなどを通して情報発信を行ったことが、行政サービスについて住民たちが考えるきっかけとなり、結果的に水道料金の値上げに繋がったケースもありました。

真山仁さん:
もう少し自分たちの財政やサービスをオープンにしていかなければならない。そうすると、減税しなくていいという発想が国民に起きてくることもあると思います。ところが選挙で勝利したいから、「減税する」と政府が言ってしまうと、国民は「なんだ減税できるんじゃないか」と思ってしまいます。

伊沢拓司さん:
技術系の職員さんも減少しており、人材の確保なども課題にはなりますよね。

藤森キャスター:
インフラの老朽化や維持にかかるコストをしっかりと受け止めつつ、話を聞いていく必要がありますね。

小川キャスター:
改めて先送りできない問題として捉えなければならないです。そして1日も早く運転手の方の救助が進むということを祈るばかりです。

インフラ老朽化について「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『インフラ老朽化』について「みんなの声」を募集しました。

Q.『インフラ老朽化』に最も必要な対策は?

「既存インフラを管理」…14.8%
「古いインフラ廃止・スリム化」…51.8%
「先端技術の活用・人材の待遇改善」…26.9%
「その他・わからない」…6.5%

※2月4日午後11時23分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは5日午前8時で終了しました。

==========
<プロフィール>
伊沢拓司さん
株式会社QuizKnock CEO
東京大学経済学部卒
クイズプレーヤーとして活躍中

真山仁さん
小説家
「ハゲタカ」「ロッキー」など
最新著作に「疑う力」

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