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“空気以外何でも削る”技術×伝統工芸品…大人気の土鍋『ベストポット』誕生秘話 倒産危機の町工場が劇的復活

東海テレビ / 2025年1月29日 21時27分

ニュースONE

 三重県四日市市で1914年に創業した「中村製作所」は「空気以外は何でも削る」と“削る”ことが強みの町工場だ。一時は、倒産の危機にもあったが、「削る」技術と地元の伝統工芸品「萬古焼(ばんこやき)」を組み合わせて開発した土鍋「ベストポット」が大ヒットし、劇的な復活を遂げた。

2023年に工場の中に「四日市ファクトリーカフェ」というカフェをオープンし、「ベストポット」を使った炊き立てのご飯などを提供することで、商品の認知拡大にも手を広げている。

■「空気以外は何でも削る」…工場内にオープンしたカフェが人気の中村製作所




 四日市市の「四日市ファクトリーカフェ」は、土鍋で炊いたごはんがついたハンバーグランチや…。


見た目も鮮やかなスイーツまで楽しむことができる人気のカフェだ。


このカフェを運営しているのは、1914年(大正3年)に創業した中村製作所。


店はこの工場の敷地内にある。


工場の壁を見てみると「空気以外なんでも削ります」と書かれている。


金属を加工する工作機械に使われる部品を作る工場で、製作所の4代目を務めるのが山添卓也さん(47)だ。


中村製作所4代目の山添卓也さん:
「車の部品もやりますし、飛行機の部品もやりますし、ロボットの部品もやりますし、遊園地のアトラクションの部品もやるんですけども。空気以外なんでも削るっていうのが先代の父親が残していった言葉でして。我々の技術が役に立つ産業であれば何でもやっています」

■リーマンショックで一時は倒産の危機に…




 H3ロケットの部品も手掛けていて、様々な分野の発注を受けているが、過去には倒産の危機にもあった。


山添さん:
「当時1社取引だったんですけど、リーマンショックが起こった時に、そこの仕事が90%ダウンしまして、どうにも立ち行かない倒産するんじゃないかという状況になりまして。真っ暗闇のトンネルを走っているような状態でした」

ほぼ1社としか取引をしていなかったため、その会社からの発注がなくなったことで倒産寸前の危機に追い込まれたという。


絶望的な状況の中で、山添さんが挑戦したのが、自社ブランド製品の製造だ。そのひとつがアルミの塊から削りだした「ワイングラス」。


山添さん:
「自分たちでコントロールできる仕事をやりたいなということで自社ブランドを立ち上げまして」

発注を受けたものを削るだけの町工場から、その技術を生かして自社製品を作る町工場へと方向転換。チタンを削って印鑑も作った。


そのデザイン性の高さは評判を呼んだ。

■遂に大逆転劇に…萬古焼をベースにした土鍋「ベストポット」の誕生




 そして、大逆転劇を生んだのが、地元四日市の伝統工芸、萬古焼(ばんこやき)をベースにしたユニークな形の土鍋「ベストポット」だ。


累計で約2万個を売り上げ、中村製作所のピンチを救う大人気商品に。一番のこだわりは、土鍋の縁を削る工程だ。


山添さん:
「1個1個、鍋をキレイにまん丸に仕上げることによって、金属の蓋と鍋がピタっと合うので。まったくもって動かないくらいピタッと吸い付いていまして」

土鍋は、焼くことで微妙に形が変形し、鍋とフタの間に隙間ができるのが一般的だ。


しかし中村製作所では、得意の技術で鍋と蓋が当たる部分を、1ミリ以下のマイクロメートルのレベルで削って調整し、フィットする土鍋を作り上げた。


土鍋としての耐久性や保温性を備えつつ、隙間をなくすことでお米のうまみを逃がさず、おいしく炊きあげることができるという。


また、水分を逃がさないので無水調理機としても使うことができる。


このことも大ヒットした要因になった。

■ベストポット誕生のきっかけは「何でも削るプライド」




 金属を主に削っていた中村製作所が、土鍋を削ることになったきっかけがあった。

山添さん:
「たまたま陶器を削って欲しいと相談がありまして。陶器を多分削れないとその方は思っていたんですけど。空気以外何でも削ると言っている以上、できないとは言えなかったので削ってみようと」

陶器は壊れやすいことなどから、削るのに適していない“難削材(なんさくざい)”とされているが、山添さんは「何でも削る」というプライドから、削ることに挑戦し、成功。

たまたま陶器を削ったことがきっかけで、萬古焼をベースにした土鍋を作ることにした。

そしてただ削るだけではなく、とことん細部にまでこだわろうと、自社でイチから萬古焼を作ることに。

萬古焼に関しては全くの素人だったが、何度も焼いて理想の形に近づけたという。


山添さん:
「何よりもお客さんにとっての価値というのはおいしくごはんが炊けるかどうか。料理人じゃないので本当においしくできるのかなというところはありました」

試行錯誤を重ねた結果、高度な加工技術と四日市の伝統が合わさった、こだわりの土鍋が完成。「ベストポット」は、今では中村製作所の看板商品と言われるまでになった。

■商品の製造工程を見ることも…中村製作所の全てが詰まったカフェ




 この商品をもっと多くの人に知ってほしいと、2023年に工場内に作ったのが、炊き立てのご飯を食べることができる「四日市ファクトリーカフェ」だ。


山添さん:
「中村製作所オープンファクトリーという形で工場を完全にオープンにしています」

ベストポットで炊いたごはんがついたハンバーグセットに…。


四日市のご当地グルメ、「とんてき」が入ったカレーや…。


栗をシャワーのようにかける、流行りのスタイルのモンブランも楽しむことができる。


女性客:
「めちゃくちゃおいしいです。すごいお米が、家のご飯よりずっとおいしい」

別の女性客:
「ごはんがおいしい。ごはんがおいしい」

また、2階には製品が展示されていて、実際に見て触って、購入することもできる。


そして、タイミングが合えば、目の前で製造工程を見ることも。

山添さん:
「僕らとしてはケーキ屋のパティシエのように見て、すごいなといってもらえるように。自分たちがやっていることを誇りに思える場所を作りたいということで、このようなオープンファクトリーをつくりました」

中村製作所の“削る技術”を生かして、夏の時期は、かき氷もメニューのひとつだ。


山添さん:
「空気以外なんでも削りますという言葉を掲げたところ、『水を削れるのか?』とお客さんから言われまして。凍らせたら削れるということで、かき氷も始めました。僕らのノウハウを生かして、かき氷を削る刃を工夫して、食べた瞬間に溶けるっていうような削り方をしています」

刃物自体にもこだわり、ふわふわに仕上げている。


倒産の危機から、たまたま陶器を削ったことをきっかけにまさかの大逆転劇を起こした四日市の町工場。今後の目標を山添さんに聞いた。


山添さん:
「世の中に役立つものというところで、例えば日本の未来を作るもの、もしくは日本を守るためのもの、また地域に貢献できるようなもの。自社ブランドのほうもどんどん新商品を作ることで、この地域を盛り上げていきたいなと思っております。今後も削り続けます」

2024年10月16日放送

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