現役最年長プロ・灘麻太郎87歳 幼少期からの夢だった〝麻雀放浪の旅〟「カミソリ灘」の由来は…【前編】
東スポWEB / 2024年6月9日 10時22分
【レジェンド雀士からの金言】麻雀ブームの今こそ、その礎を築いた男たちの声を聞け――レジェンドが自らの麻雀人生や勝負哲学、後輩への思いを余すことなく語り尽くす新連載がスタート。1回目にご登場願ったのは、切れ味鋭い鳴き仕掛けが持ち味の現役最年長麻雀プロ・灘麻太郎(87)だ。「日本プロ麻雀連盟」創設以降、理事長3年、会長30年という任期をまっとうし、現在は名誉会長として麻雀界に貢献中。数あるエピソードからは昭和の麻雀プロがどんな生活を送ってきたのかも見えてくる。
麻雀プロ創成期を作り上げ、先駆者として時代を牽引してきた灘は米寿間近。生まれは北海道で、麻雀を覚えたのは小学4年生の頃だったという。昭和で言うと20年代前半だ。
「近所のお寺の若いお坊さんたちから誘われたのがきっかけ。花札と同じように図柄や数字で組み合わせを作るんだよと教えてくれた。生まれ育った北海道は寒さが厳しいので、当時はよくお互いの家を行き来して子供は百人一首、その横で大人は麻雀という環境だった。それで大人に交ざって麻雀をやるようになったんだ。北海道という土壌が麻雀を覚えさせたんだろうね」
大学生になった1955年は、石原慎太郎の小説「太陽の季節」が発表された年(翌年に芥川賞を受賞)。小説に出てくるような無軌道で不道徳な若者は“太陽族”と呼ばれ、灘もそんな一人だった。
「札幌のキャバレーでアルバイトしていたんだ。ショーが終わったら麻雀好きのオーナーが車を飛ばしてショーダンサーと一緒に定山渓温泉まで行って麻雀。麻雀が終わったらキャバレーに戻って、そこに泊まって大学に行く。そんな日々だったよ」
大学卒業後は、幼少期からの夢だった“麻雀放浪”の旅に出る。
「小さい頃にテレビで見た時代劇に出てきた尺八を吹く虚無僧。あの姿が格好いいなと憧れていたからなんだ。俺の場合は尺八が麻雀牌に変わったんだけどね」
約7年間、麻雀を打ちながら全国各地を行脚した。
「放浪中に新聞社主催のタイトル戦にも出ていたから、麻雀の原稿依頼もどんどん来るようになった。現在も続けているデイリースポーツの連載はもう50年以上になるかな」
69年、「週刊大衆」で作家・阿佐田哲也の小説「麻雀放浪記」の連載が始まり、麻雀ブームが起きる。
「麻雀放浪記が一世を風靡する数年前、五味康祐さんの麻雀小説『暗い金曜日の麻雀』がヒットしていた。そこに双葉社が目をつけ、誰か麻雀小説を書けるやつはいないかと白羽の矢を立てたのが、中央公論新人賞を取ったものの、作家としてはまだ飯が食えていなかった色川武大(麻雀小説では阿佐田哲也名義)さんだったんだ。五味さんが麻雀小説を書いていなかったら麻雀放浪記は誕生しなかったと思うよ」
“雀聖”と呼ばれた阿佐田哲也は、プロデュース能力にも優れていた。
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