もうカーシェアで十分!? 急速な市場拡大を消費増税が後押しするか
LIMO / 2019年8月9日 21時40分
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もうカーシェアで十分!? 急速な市場拡大を消費増税が後押しするか
7月に総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(以下、「人口動態調査」)によれば、日本人住民の人口(「日本人」を指します)は10年連続減少となる1億2,477万人でした。人口減少は今さら驚くことではありませんが、10年も連続して減少している事実に、改めて将来の人口減少社会へのに危機感を持たずにはいられません。
人口減少と都心部への人口集中が続く
この「人口動態調査」では、人口の減少が続く中でも地方都市の減少ペースが加速し、都心部へ集中する傾向が見て取れます。今回の調査で人口が増加した都道府県は、東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、沖縄の6都県でしたが、出生数が死亡数を上回って増加となったのは沖縄県だけでした。
つまり、残り5都県は「転入>転出」によって増加しているのです。また、人口増加には至りませんでしたが、大阪府や福岡県などでもこうした傾向が見られます。この傾向は前回調査と全く同じ結果だということにも注目していいでしょう。
都心部へ人口が集中する理由は様々あると思いますが、大きな理由の1つは“仕事(働き口)がある”ということでしょう。人口が増加することで需要が拡大し、さらに働き口が増えるというサイクルに入ったとも考えられます。これらを背景に、都心部への人口増加傾向は今後も続く可能性が高いと思われます。
今後有望な成長事業の1つがカーシェア
こうした都心部への人口集中で注目されるのがシェアリングエコノミーです。シェアリングエコノミーとは、物・サービス・場所などの経済価値を多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組みのことです。ザックリ言えば、“貸し借りを推進する経済”でしょうか。私たちの身近で代表的なシェアリングエコノミーが図書館であり、これはブックシェアリングになります。
そのシェアリングエコノミーの中で、今後の高い成長率が見込めるビジネスの1つがカーシェアリングです。カーシェアリングとは、自動車を共同利用するシステム。自動車を所有しないという点ではレンタカーと同じですが、カーシェアリングはレンタカーより1回の使用時間が短く、使用頻度が高いことが想定されています。
簡単に言うならば、クルマを所有しなくてもクルマを利用できるシステムということでしょう。海外では、国土面積の小さい先進国などで普及が進み、近年では典型的な自動車社会である、あの米国でも徐々に普及しています。
クルマは購入価格だけでなく維持・保有コストも高い
高級消費耐久財であるクルマは、購入価格が高いだけでなく、その後の維持・保有コスト(税金、保険料、駐車場代、車検代、修理補修代、燃料コストなど)がかさみます。クルマをお持ちの方、あるいは、過去に持っていたという人ならば納得していただけるはずです。
カーシェアリングは、その運営企業の会員になれば、一定額の費用(固定費と使用実績に応じた使用料)を払うことで、こうした膨大な費用を負担することなく、クルマを利用できるのです。この支払料金は、レンタカーを借りるよりも割安になることが知られています。
特に都心部でクルマを所有するのは、想像以上にお金がかかります。駐車場代は地方都市に比べて圧倒的に高くなり(ゼロが1個多くなります)、ガソリン価格もかなり割高です。さらに、地下鉄など公共交通網が充実しているため、利用頻度も低くなると見られます。これに加えて、収入減少や今後予定されている消費増税などを勘案すると、クルマを所有する意義・モチベーションが薄れているのは確かでしょう。
こうした点からも、今後は日本でもカーシェアリングが有望と考えられますが、現時点ではどうなのでしょうか?
市場規模は直近10年間で急拡大
結論から言うと、カーシェアリングは急成長しています。以下、全国のカーシェアリングの車両台数と会員数の推移を見てみましょう。
2006年: 118台、 1,712人
2010年: 1,265台、 15,894人
2013年: 8,831台、 289,497人
2015年:16,418台、 681,147人
2017年:24,458台、1,085,922人
2018年:29,208台、1,320,794人
2019年:34,984台、1,626,618人
このように市場は急拡大しており、特に人口減少が不可避となった2010年以降の拡大ペースが顕著であることが分かります。登録されている約163万人の会員全員がカーシェアリングを利用しているわけではないと思われますが、今後の活用に興味を持っていると考えられます。
“クルマを所有するのは大変だけど、クルマは何かと便利だ”という人には、最適のシステムなのかもしれません。
消費増税がさらなる拡大の起爆剤になるか?
一方で、ここ1~2年は、車両台数や会員数が大きく拡大しているものの、その増加ペースがやや緩やかになってきました。また、カーシェアリング事業の最大手(車両台数の約78%)である「タイムズ カー プラス」を運営するパーク24(東証1部 4666)が公表する月次報告データを見ても、爆発的な伸びは一巡して、やや頭打ち傾向になっています。
これは、都心部を中心とした地価高騰などにより、ステーション数の開発(増加)に苦戦しているためと推測されます。地価高騰を吸収して事業がさらに拡大するためには、カーシェアリングの認知普及を徹底させて、いっそうの会員数の増加が必要不可欠と言えましょう。
今年10月に消費増税が実施され、家計を預かる主婦の方を中心に、家計コストの見直しが行われると思われます。この見直しによって、クルマの維持費がコスト削減の対象となり、カーシェアリングがさらに拡大するトリガーになるのかどうか注目しましょう。
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