銀行のサービスはもはや汎用品。なぜそうなってしまったのか?
LIMO / 2019年9月25日 21時15分
銀行のサービスはもはや汎用品。なぜそうなってしまったのか?
筆者は金融機関、特に銀行の将来像にとても興味があります。かれこれ35年ほど前に、某メガバンクに入社したからです。もともと金融に進むつもりもなく、銀行窓口の方々のにこやかな応対が当時の私には面映ゆく、むしろ敬遠していた業種でした。しかしながら、最も早く内定が出してもらえたのは、学生最後の年にも体育会優先だった私にとって願ったり叶ったりの就職先でした。
スキルあふれる行員がゴロゴロいた1980年代
入社後もいろいろ勉強になりました。税金出納で全くミスをしない白○さん。ゴム印を連打する技と正確性はIT以上です。両手で札勘できる萩○係長。両手で扇子のようにお札を広げる技は、マジシャンもびっくりです。しかもATMよりも計算は正確。
加えて、粉飾手形を見抜くのが天才的なトラさん。勢い余って、手形割引を拒否してその手形を自分のロッカーにしまい込んでしまう鋼のメンタルの持ち主。さらに、営業をやらせれば20年選手も真っ青の19歳のトップセールスN君。全く競争する気にははなれなかった同僚です(泣)。
とまあ当時は、人間的スキルあふれる人材がごろごろしていた職場でした。が、そんな人材が不要になっているのが現在の銀行です。いや、銀行という業種より、金融サービスという広いくくりでの金融機関が様変わりしているのが令和の今です。
個人的なスキルに頼る人間的な組織から、フィンテックやデータ分析で大網をかけて、根こそぎ商売を取っていこうとする方向になっているのですね。実際、すでに一部の業務はフィンテックによって取って代わられています。たとえば、送金・決済業務のペイパルなどは私も愛用しています。
情報の非対称性がカネになる金融機関
金融機関のサービスを挙げていくと、だいたい次のような顧客サービスに集約されると思います。
(1) 預貯金
(2) 融資(ローン)
(3) 決済
(4) ブローカレッジ(売買委託、主として証券会社。不動産会社もこの範疇)
(5) 引受(証券会社自身の有価証券売買)
(6) 投資一任(投資信託など)、投資助言
(7) 信託
この中で、フィンテックでほとんどカバーできるのは、(1)(2)(3)でしょう。(4)も勝率の高い運用アドバイスがなければネット証券のサービスで十分です。(5)(6)(7)も投資判断や顧客サポートを除けば、事務的なところはフィンテックで置き換えることが可能です。
もっとも、(2)や(5)での不定形の案件は大いに人が絡む可能性があるでしょうね。たとえば、頭取案件のような政治的案件です(笑)。
ではこれから、金融期間はどの分野で高い収益性を求めていくのでしょう。私見ではかなり限られていると思います。(1)〜(3)の作業は原則、人の作業は要りません。銀行は口座を保有していればよいという立場です。クレジットカードが絡む手数料も、フィンテック同士の競争が高まるので漸減でしょうね。
(4)〜(7)も既述のように事務的なところは、全部テクノロジーでカバーされます。ゼロ金利政策がさらに長期間継続すると、個人預金口座維持手数料も導入される可能性大ですね。
過去の事例を鑑みると、金融機関がサービス対価の手数料を徴求できるのは、金融機関の方が一般顧客よりもよりよいサービスを提供できたり、より優れた情報を提供できたりする分野です。そして、これらのサービスは、結果的に顧客の儲けにつながらないといけません。私はこれを、“情報の非対称性による裁定取引(アービトラージ)”と言っています。
情報格差がなくなっている今の時代
ところが、今では銀行など金融機関の社員と一般個人顧客との情報格差はほとんどありません。つまり、“情報の非対称性による裁定取引”が成り立たなくなっています。もちろん、一般個人顧客が金融機関担当者と同じレベルになる必要はありますが、ネットでいくらでも情報は取れます。個人がしっかり勉強すれば軽く追いつけるのです。
ということは、それなりの知識を身につければ、バカ高い手数料の金融商品の勧誘も避けることができます。もっとも、こういうことを教えてくれる身近な人が必要ではありますが。
フィンテック化が進めば進むほど、金融サービスや商品は汎用品化してきます。同時にサービスの種類も増えてきますから、自分に必要なサービスを見極める必要があります。くれぐれも、「テレビコマーシャルで見た」で決めるのではなく、内容をよくわかった上で選んでいきましょう。
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