NHKをどう変える? 受信料より税金で運営すべき理由
LIMO / 2019年10月27日 20時15分
NHKをどう変える? 受信料より税金で運営すべき理由
NHKの受信料は逆進的でかつ非効率なので廃止して、NHKは税金で運営すべきだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。
NHKの受信料は逆進的で非効率
所得税は累進課税です。所得が増えると税率が上がるので、所得が2倍になると所得税額は3倍にも4倍にもなり得ます。
消費税は、原則として消費額に比例するので、消費額が2倍になると消費税額も2倍になります。これでさえも、所得税と比較すれば逆進的だ、と言われているわけです。
これと比べると、NHKの受信料は大いに逆進的です。テレビ受像機を持っている人は、高額所得者も低額所得者も、原則として同じ金額を徴収されるのですから。
また、受信料は非効率です。誰が受信機を持っているかを調べて請求し、入金を確認して未納者には追加で請求する必要があるのですから。
これを廃止して、NHKを税金で運営することにすれば、逆進性の問題も非効率の問題も、一気に解決するはずです。
税金を投入すると政府が介入する?
税金を投入すると、政府が介入して政府に都合の良い情報だけしか放送しなくなる、と懸念する人がいるかもしれません。しかし、そういう理由で税金投入に反対する人は多くないでしょう。
政府性善説に立って「政府が悪いことをするはずがない」と考える人は、「税金を投入しても政府は不当な介入はしないはずだ」と考えるでしょうから、税金投入に反対しないでしょう。
反対に、政府性悪説に立って「政府は悪いことをするに違いない」と考える人は、「今でも政府がNHKに介入しているに違いない」と考えているでしょうから、「税金を投入しても事態が今より悪化するわけではない」と考えるので、やはり税金投入には反対しないはずです。
ちなみに筆者は、税金投入によって政府が介入するようになるとは考えていません。国立大学の教授陣を見ていると、政府に反対意見を持っている教授が冷遇されているようには思われないからです。
頭の体操として、各国立大学の学長がNHKの社外役員になると考えてみてください。到底政府の介入など行われそうもないでしょう。
そもそも公共放送は必要なのか
税金を投入しなくても、NHKを民営化してしまえば良い、という考え方もあるでしょうが、筆者はそうは思いません。公共放送が担うべき役割があるからです。
障害者向けの番組は、民営化すれば廃止されてしまうでしょうから、これは公共放送が担当するしかありませんね。
災害関連の情報などは、民放も取り扱うでしょうが、やはり国民の安心という観点からは公共放送があると安心です。
ニュースも公共放送が担うべきでしょう。もちろん、政府に忖度することなく、政府に都合の良いニュースも悪いニュースもしっかり流すということで。
民放の場合には、視聴率を追い求めて芸能関連ニュースばかり流すようなことになる可能性がありますから、政治、経済、国際情勢などのニュースも公共放送がしっかり担うことが必要でしょう。
娯楽番組等は分社化して民営化
娯楽番組等は、受信料を払わない人は見れない仕組みにすれば良いでしょう。しかし、そうなると民間の有料放送との違いがなくなりますから、公共放送が担当する必要はないので、分社化して民営化すれば良いでしょう。
民営化するとなれば、有料放送にするのではなく、スポンサーから広告料を得て無料で放送するという選択肢もあるでしょう。そのあたりのことは、民間会社ですから株主が考えれば良いことで、筆者が口出しすることではありませんね(笑)。
もっとも、当初は激変緩和措置が必要かもしれません。いきなり既存民放との競争に晒されると、大きな打撃を被る可能性もありますから、数年間は補助金を交付する、等々の措置は必要かもしれませんね。
公共放送の範囲はしっかり議論して決めるべき
政府の仕事はどこまでか、という点については、曖昧にされている部分も多いのですが、しっかりした議論が必要です。たとえば私立学校と国公立学校の役割分担をどう考えるのか、なぜ一般道路は政府が敷設するのに高速道路は利用者負担なのか、といった議論です。
それと同様に、公共放送の扱う範囲はどこまでか、しっかり議論しましょう。たとえば教養番組はどうでしょうか。国民の啓蒙という観点からは、公共放送が担うべきだ、という考え方もあるでしょう。国立の美術館や博物館があるのと同じ意味合いですね。
もっとも、切り分けは容易ではなさそうです。「クラシック音楽は教養番組だがロックは娯楽番組だ」「相撲は国技だから公共放送だが、他のスポーツは娯楽だから民営化だ」といった切り分けをして良いのか否か、等々は様々な意見があるでしょうから、活発に議論すれば良いと思います。
本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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