日本新三大夜景、”工場萌え”で北九州市が躍進。夜景観光の経済効果は?
LIMO / 2019年10月25日 20時15分
日本新三大夜景、”工場萌え”で北九州市が躍進。夜景観光の経済効果は?
あと数日で11月となり、今年も残すところ2カ月です。もう2週間も経つと、街並みは徐々にクリスマス・年末モードに突入します。そして、その年の終わりが近づいたことを実感する代表的なものは、イルミネーションではないでしょうか。
美しいイルミネーションに飾られた街並みを観て歩いて、過ぎ去ろうとする1年に思いを馳せることは、今や世界共通の恒例イベントと言えそうです。
「日本新三大夜景都市」は国内イルミネーションの正式な格付け
さて、そのイルミネーションですが、日本では一応、正式なランキング付けが行われています。ご存知でしたか?
「日本新三大夜景都市」がそのランキングですが、これは一般社団法人「夜景観光コンベンション・ビューロー」が2015年に、新たな日本ブランドとして国内外への発信・普及と夜景観光の活性化を目的として発表したものです。
選考方法は、全国約4,500人の夜景鑑賞士と称される人が投票を実施。投票された各夜景スポットを都市別に分類し、集計結果から上位三都市を日本新三大夜景と認定するものです。
夜景観賞士は耳慣れない言葉ですが、少なくとも、夜景観光コンベンション・ビューローの独断・偏見ではないことは確かのようです。
昨年発表された第2回ランキングの結果
そして、昨年2018年は3年に1回の再認定の年となり、改めて投票が行われた結果、第2回のランキング発表に至りました。まずは、その結果を振り返ってみましょう。なお、カッコ内は前回(2015年実施)の順位です。
第1位:長崎市(1位)
第2位:札幌市(2位)
第3位:北九州市(5位)
第4位:神戸市(3位)
第5位:東京都(8位)
第6位:函館市(4位)
第7位:大阪市(6位)
第8位:横浜市(7位)
第9位:京都市(9位)
第10位:静岡市(圏外)
神戸や函館を抑えて北九州市がトップ3に食い込む!
第2回ランキングで注目されるのは、何と言っても北九州市の躍進でしょう。“1,000万ドルの夜景”と称される神戸市や、世界屈指の夜景と評される函館市を抜いて堂々の第3位となり、新たな日本新三大夜景都市として認定されました。
前回も第5位と一定の高評価はあったようですが、神戸や函館を上回るとなれば、一度は観てみたい人も多いのではないでしょうか。
ただ、北九州市の夜景と聞いてもピンと来ない人も多いでしょう。しかし、北九州市はコツコツと夜景観光に注力してきました。
特に、北九州工業地帯にある巨大煙突のライトアップや大規模工場群の照明などを海から眺める「夜景観賞クルーズ」が大人気となっているのです。従来の夜景観光とは違った独自のアプローチと言えましょう。
増加する訪日外国人観光客数、その一方で深刻化する“素通り”問題
実は現在、北九州市に限らず、夜景観光に注力している自治体(大都市、地方都市等)は多いようです。この背景にあるのが、観光客、とりわけ、国人観光客の“素通り”問題です。
確かに、訪日外国人観光客は大幅増加が続いており、2018年は約3,120万人となり、2019年は3,400万人に達する勢いになっています。そして、こうしたインバウンド需要は国内景気にも大きなインパクトを与えているのはご存知の通りです。
しかしながら、有名観光地やランドマークへは日帰りで行く外国人が圧倒的に多く、宿泊は有名飲食店や繁華街のある大都市部に集中しているのが実情です。実際、地方都市のホテルが満室で予約が取れないということは稀と言っていいでしょう。
その結果、大都市以外には、想定していたほど経済効果が及んでいないと見られています。現在、地方の百貨店で閉鎖・閉店が相次いでいるのはその結果の1つでもあります。
やはり、泊まって飲み食いして支出金額を増やしてもらわないと、観光地は経済的に潤わないのです。実際、宿泊観光客の消費額は、日帰り観光客の4倍以上というデータもあります。つまり、外国人観光客を“素通り”させずに、いかにして長く滞在させるかが、重要な課題となっているのです。
インスタ映えする夜景観光は外国人観光客の宿泊を増加させる
この課題を解決する1つの大きな手段が、夜景観光です。何しろ、夜景を観るためには、基本的には宿泊する必要があります。また、外国人(日本人も?)が大好きなSNSに美しい夜景はピッタリ合致します。インスタ映えには最適と言っていいでしょう。
また、一部の新興国では、治安上の問題などから、夜間の外出を控えることも珍しくなく、夜景を楽しむという発想そのものがないと考えらえます。
美しい夜景を安全に観ることができるのは、日本の魅力の1つとして定着しつつあるのではないでしょうか。
リピート需要を見込みにくい夜景観光、今後の課題はブランド化の促進
しかし、夜景観光には問題点もあります。それは、リピート需要を取り込み難いということです。確かに、一度観た夜景をもう一度観に行く人はそう多くないかもしれません。
今回の新ランキングで躍進した北九州市の外国人観光客データを見ても、平成26年:16.7万人、平成27年:25.2万人、平成28年:34.9万人、平成29年:68.2万人と飛躍的に伸びてきた外国人観光客数が、平成30年は69.1万人と伸び悩みました。
一方で、宿泊観光客数は着実に増加しています(平成29年:21.6万人から平成30年:29.3万人へ)。海外で北九州イルミネーションがブランド化するのは、今回の躍進を踏まえたこれからなのかもしれません。
今後は、各都市間でのイルミネーション競争も激化することが予想されます。各都市の取り組みに注目しましょう。
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