育児の孤独感を癒してくれるのは「何気ない会話」 親が神経質にならず子育てできる社会とは?
LIMO / 2019年12月19日 10時15分
![育児の孤独感を癒してくれるのは「何気ない会話」 親が神経質にならず子育てできる社会とは?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_14880_0-small.jpg)
育児の孤独感を癒してくれるのは「何気ない会話」 親が神経質にならず子育てできる社会とは?
「産後うつ」までいかなくても、赤ちゃんを育てる母親のほとんどが経験しているのが「孤独感」ではないでしょうか。
産んですぐに職場復帰するのでもない限り、家で子どもと向き合う時間は長く、慣れないことだらけ。孤独感は個人差こそあれ、母親ならば誰もが通り過ぎねばならない関門なのかもしれません。
筆者が暮らすニュージーランドには、子育ても家事もこなしてくれる夫、「キーウィ・ハズバンド」がいるから大丈夫なのでは? と思われる向きもあるでしょう。しかし孤独感は大なり小なり、この国の母親にも影響を与えています。
子どもは2カ月、慣れない子育て、新しい町
筆者がニュージーランド国内で別の町に引っ越しをしたのは、娘が生後約2カ月の時です。引っ越し先は当時、人口4万人という小さな田舎町でした。田舎といえば、一般的にすでに住人たちの間で「輪」ができていて、なかなか新顔が入り込みにくいことで知られています。
子どもが小さくて、なかなか友達作りまで手が回りそうもない上、引っ越し先は地元民の結束が強い田舎町。確実に孤立化するだろう条件が揃う中での引っ越しでした。今振り返ると、向こうみずというか、よく度胸があったものだと我ながら思います。
親戚も知り合いも友人もいない新しい町で、生まれたばかりの赤ちゃんと2人きりで過ごすのはなかなか辛いことでした。頼りになるのはパートナーのみでしたから、夕方帰宅するのが毎日待ち遠しかったのを覚えています。
赤ちゃんがなぜ泣いているのかわからない時などに、「仕事ならうまくやれる自信があるのに。育児は私には向かない」と、勤め先から帰宅する人や車をうらやましく思いながら眺め、悲しくなったこともしばしばでした。
見知らぬ人がくれる言葉と笑顔で元気に
まだ知り合いも友人もおらず、孤独感に苛まれた私を癒してくれたのは、外出先で行き会った人々でした。これは予想外のことです。
見知らぬ私にかけてくれる人々の言葉や、通り過ぎる際に目が合った時の笑顔でずいぶん救われました。他愛のないことを一言二言、ちらっと見せる微笑み。それで十分でした。
たとえば、ベビーカーを押しながら近所を歩いていると、通り過ぎがてら見知らぬ人が「おはよう! 今日はいい天気ね」とか、公園で散歩中に「まぁ! なんてかわいい赤ちゃんなの! 女の子なのね? 今お幾つ?」とか。スーパーマーケットに買い物に行けば、「ママがお買い物している間、いい子にしていて偉いわね」といった具合でした。
私も質問に答えたり、話をしたり。こんな単純な会話はほんわかと温かく、じわっと心にしみ、筆者の孤独感にはよく効きました。
理由ははっきりわかりません。強いていえば、知らない人とはいえ、やりとりを通して周囲とのつながりが感じられたこと、自分の存在を認めてもらえたことにあるのかもしれません。
皆で見守る子どもの安全
幼児期に入ると、親子で遊び場に頻繁に通うことになります。遊具は定期的に検査され、地面にはバーク(樹皮)やゴム製マットが敷かれ、安全管理は行き届いています。しかし、子どもの行動は予測できません。親をはじめとする近くにいる大人がいてこそ、遊び場の安全は初めて確保されたといえるのです。
子どもはあちらこちらと遊びまわりますから、親であれば必然的に遊び場全体の様子が目に入ってくるものです。何か危ないことをしようとしている子がいれば、たとえ自分の子どもでなくても、すぐに注意します。
遊具から落ちたり、転んだりした子がいれば、すぐに駆け寄り、けがをしていないか確認します。親同士お互いさまの厚意であり、ありがたくそれを受けこそすれ、迷惑に思う人はいません。
親がちょっと目を離した瞬間に、子どもに何か起こることは十分あり得ることで、周囲の人がそれを無視することはまずないのです。その場に居合わせた大人の「暗黙の了解」が、子どもを守ります。
大きな声は子どもの「権利」?
どんなにおとなしい子どもでも、うれしいことがあれば興奮して声が大きくなったり、飛び跳ねたり、また反対に嫌なことがあれば、泣いたり、駄々をこねたりするもの。外出先であれば特に、同伴している親たちは子どもを注意しますが、それでも収まらないことがあります。
周囲の人たちは最初はびっくりしても、「ああ、子どもか」と、気にしている風には見えません。「そもそも子どもとは泣いたり、笑ったり、大声を出したりするものなのだ」と納得しているようです。自分にもそんな時期があったと覚えているのかもしれません。
居合わせた人の多くは動じずに、自分がしていることを続けます。中には親切な人がいて、子どもに話しかけ、なだめることもあります。
ニュージーランド社会は、子育て中の親や子どもに寛容です。この寛容さは、人々が子育てする親の苦労や、子どもとはどんなものなのかを理解していること、そして何より気持ちに余裕があるからといえるでしょう。
今日も多くの母親が社会から「元気」をもらい、笑顔を取り戻しています。
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