「おひとりさま」で死んだら後のことはどうなる? 終活サポート信託とは
LIMO / 2019年12月25日 20時15分
「おひとりさま」で死んだら後のことはどうなる? 終活サポート信託とは
財産や荷物の整理、葬儀やお墓の意思表示などを行う終活。高齢化に伴い、終活市場は年々拡大しています。一方で、現在の終活は「残された家族が苦労しないように」といった側面が強く、家族の在り方が多様化する中で変化するニーズに対応しきれていないのも現状です。
そんな中、12月17日に三井住友信託銀行がおひとりさまのための終活サポート「おひとりさま信託」をスタート。未婚や既婚に関係なく、個人の具体的な終活を一括管理するサービスだそう。どのようなサービスなのか、同日に行われた記者会見を取材しました。
資金管理と終活をワンストップ対応
三井住友信託銀行株式会社 人生100年応援部 部長の谷口佳充さんによると、「おひとりさま信託」は、営業店で日々高齢の単身者から葬儀や墓地といった、死後事務の不安を身近で聞いている社員から生まれたアイデア。三井住友信託銀行が窓口となり、生前の終活だけでは実現が難しい死後事務についても一括管理するのだそう。
一般的な終活では、葬儀や埋葬、家財整理やデジタル遺品、形見分け、ペットの世話など、それぞれの項目ごとに別の会社やサービスに相談する必要があります。
「おひとりさま信託」は、そうした死後事務を三井住友信託銀行と、同社が中心となって昨年11月に設立した一般社団法人安心サポートが一括で請け負うことで、資金管理と終活をワンストップ対応するものです。
具体的には元本保証で口座に300万円以上の資金を預け、受託者が亡くなった後にはエンディングノートに沿って葬儀などの死後事務を執行。執行後の残余財産は、指定していた帰属権利者(信託財産の受取人)もしくは寄付先法人に支払われます。
また、週に1度や月に1度など、自分が希望するタイミングでの安否確認のメッセージを受け取れ、返信がなければ社団法人と連携して安否調査を実施。誰にも見つけてもらえずに孤独死してしまう、といった悲しい事態を避けるためのトータルサポートをしていく方針です。
エンディングノートの難点を解決できるか
また、おひとりさまに特化した独自のエンディングノートを用意。希望する葬儀や埋葬のかたち、家財の処分、SNSやデジタル遺品のデータ削除、クレジットカードや公共サービスの解約、ペットの輸送手配や施設入居に関わることなど、家族形態に関係なく“個人”の終活において、あらかじめ決めておくべきことが項目ごとに書けるようになっています。
今後、ノートはデジタル化して三井住友信託銀行に預けることで、紛失を防ぎ、心境や状況の変化に応じていつでも簡単に更新が可能に。2020年3月頃からの移行を予定しているそうです。
終活の代名詞とも言えるエンディングノートは、書店などでもたくさん売られています。しかし、保険や財産に関することや口座番号などの個人情報も記載したノートは保管場所に気をつけなければなりません。また、自分自身の考えや希望する葬儀などはその都度変化する可能性もあり、見直しや書き直しは面倒に感じがち。
さらに本人の死後、家族や友人などにノートに書いてある意思を実現してもらう必要があります。そうした観点から、エンディングノートはただの記録になってしまうことや管理の難しさなどがデメリットとして挙げられています。
加えて、ログインパスワードを秘密にしたまま亡くなってしまうことで、SNSやデジタルデータの確認や削除が永遠に不可能になってしまうというデジタル遺品に関する扱いも社会問題化しています。
取材をしてみて、「おひとりさま信託」は、そうした終活やエンディングノートにおける小さな難点をひとつひとつすくいあげている印象を受けました。
大事なことだとわかっていても面倒だから取り組めない終活
終活がなかなか進まない理由は、やるべきことの多さや物事の煩雑さゆえになかなか重たい腰が上がらないからでしょう。
財産処分を取り決める遺言書は書いたけれど、書く項目が多いエンディングノートは手が付けられないという人も少なくありません。「終活の諸々をすべて一括で任せたい」というニーズは、確実に多くあると予想されます。
また、自分の死や死後を前向きに捉える終活は家族や身寄りがいれば積極的に取り組めますが、単身者はそうもいきません。そうした終活に対する個人レベルの思いやニーズに、大手の信託銀行が向き合うことは終活市場に大きな影響を及ぼしそうです。
国立社会保障・人口問題研究所の発表によると、2025年にはすべての都道府県で単身世帯(単独世帯)が最大の割合を占めるようになると予想されています。とりわけ、世帯主65歳以上の世帯における単身世帯の割合は、2040年には全都道府県で30%以上に。
離別や死別で単身になった人だけでなく、独身者、単身世帯予備軍とも言える子どもがいない夫婦のみ世帯なども含めると、もはや単身者はマイノリティではなくマジョリティにさえなりつつあるのが、日本の現状です。
自然災害や事故、病気など、いつなんどき自分がどうなるかわからない時代。高齢の単身者はもちろん、忙しい働き盛りや育児真っ只中の30代や40代こそ、こうした事務手続きが煩雑ではない一括管理の終活サービスが必要になってくるのかもしれません。
「おひとりさま信託」は2019年12月17日に日本橋営業部、新宿支店、新宿西口支店で先行リリースされ、2020年10月には全店でのリリースを予定しています。
【参考】「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)(http://www.ipss.go.jp/pp-pjsetai/j/hpjp2019/t-page.asp)」(国立社会保障・人口問題研究所)
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