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私立大学のお寒い経営事情。質の低下を食い止めるには統合が不可避?

LIMO / 2020年1月13日 20時15分

私立大学のお寒い経営事情。質の低下を食い止めるには統合が不可避?

私立大学のお寒い経営事情。質の低下を食い止めるには統合が不可避?

大学入試センター試験は今週末実施

いよいよ大学受験シーズンの到来です。その皮切りとなる2020年の大学入試センター試験は、1月18日(土)と19日(日)に実施されます。

最後の総復習に取り組んでいる受験生も多いと思われますが、試験で実力を十分に発揮するための健康管理が最重要であることは言うまでもありません。クリスマスなど年末年始の華やかなイベントに目もくれず、ラストスパートに打ち込んだ成果を発揮して欲しいところです。

ところで、受験生が入学を目指す大学のほとんどが、ご多分に漏れず少子化の影響を受けています。受験シーズン開始前に、大学の経営状況がどうなっているのか見てみましょう。

何と!私立大学の約4割が定員割れ

文部科学省が発表する「私立学校の経営状況について(概要)」によれば、入学者数の減少が顕著であることが見て取れます。

入学定員に対する入学者数の割合(以下「入学定員充足率」)を見てみましょう。これが100%超となった(つまり、定員割れしていない)大学の割合は、平成8年度の96.2%に対して、昨年(平成30年度)は63.9%へ大幅に低下しています。私立大学の約4割弱は定員割れしているのが現状です。

今度は、入学定員充足率のハードルを80%に下げてみます。これは、文科省が入学定員の8割入学を1つの判断基準にしているからです。“定員の8割確保できればよし”ということでしょうか。

すると、平成8年度は99.3%とほぼ全校が満たしたのに対して、平成30年度は88.8%に低下しました。これは、全体の約11%の私立大学で、入学定員に▲20%以上の欠員が生じたことを意味します。

見た目は入学定員充足率が改善しているが…

一方で、前述した入学定員充足率(100%、80%超)は、年々徐々に改善しています。昨年度(平成29年度)との比較で見ても、100%超が+3.3ポイント改善(60.6%→63.9%)、80%超が+4.3ポイント改善(84.5%→88.8%)となりました。

ちなみに、入学試験時にリーマンショックの直撃を受けた平成20年度は、100%超が52.9%、80%超が72.7%でしたから、ボトムから見ればこの10年間で大幅な改善を遂げたと言えましょう。

確かに、改善したことは喜ぶべきことです。しかし、その背景には、各校が年を追うごとに定員数を減らしており、また、各校が合格基準のハードルを下げた可能性のあることが見逃せません。

私立大学の約4割が“営業赤字”という厳しい収益状況

次に、私立大学の収支状況を見てみましょう。ここでは、帰属収入(納入学費、寄付金、補助金等)から支出(人件費、教育研究費、減価償却費などほぼ全ての費用)を差し引いた「帰属収支差額」が重要です。これは、一般企業(金融を除く)の“営業利益”に近いものと考えていいでしょう。

この帰属収支差額がマイナスの大学、つまり、運営費用を学費収入等で賄えない大学は、平成4年度の52校(全体に占める割合13.8%)に対して、その24年後の平成28年度は233校(同39.5%)へと増加しています。全体の約4割超が“営業赤字”という状況です。

また、帰属収支額に対する割合(=帰属収支差額比率、全学合計)は、同じく19.5%から3.3%へ大幅に悪化しました。一般事業会社に例えれば、営業利益率が24年間で19.5%から3.3%へと大幅悪化したということです。

まだ公表されていない平成29年度以降はさらに悪化している可能性もあります。

約6割が“営業赤字”の短期大学、学校数も減少

ここまで論じてきた私立大学の対象は4年制大学です。実は、短期大学になると、さらに厳しい現状を見ることができます。

平成30年度(以下同)に80%超の入学定員充足率を確保している短大は64.2%となっており、短大全体の3分の1が▲20%超の定員割れです。また、「帰属収支差額」がマイナスの比率は54.2%に上っており、半数超の短大が“営業赤字”なのです。

短期大学の存在価値が問われていると言ってもいいでしょう。実際、短期大学(私立)の校数は、平成7年度の500校から、平成27年度には既に320校へと激減しています。実に、20年間でピーク時の3分の1が消滅しました。

同じような動きが今後、4年制大学にも波及するのは必至なのかもしれません。

大学の質を低下させないためには統合化促進が必要?

実際、今年のセンター試験志願者数は導入以降初の2年連続での減少となりました。この傾向が来年以降も続くなら、仮に大学側が入試合格ラインをもう一段引き下げても、入学者数がいっそう減少することは不可避と言われています。

そもそも、大学は高度に専門性の高い学問の学び舎であるはずです。大学の経営維持を重視するあまり、質を低下させては本末転倒と言えます。文部科学省は、大学の統合促進など早急な施策を講じる必要があります。いや、実は、もう手遅れの段階にあるのかもしれないのです。

こんな暗い話をしてから言うのも不謹慎かもしれませんが、何はともあれ、受験生の健闘を祈ります。

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