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中途半端な「副業容認」より「給与を上げる」ほうが会社のためになる

LIMO / 2020年2月4日 20時15分

中途半端な「副業容認」より「給与を上げる」ほうが会社のためになる

中途半端な「副業容認」より「給与を上げる」ほうが会社のためになる

最近、あちこちの会社で副業を可能にしたというニュースを見聞きします。筆者が新入社員でサラリーマン生活を始めた35年前は、副業どころか一生その会社でキャリアを全うするのが是とされていましたから、隔世の感があります。

副業容認する企業が増えているが、その条件を見ると…

平成から令和へと時代が移り、有名企業が副業を可能にしたり、銀行でさえスーツ着用不要になったり、サラリーマンの自由化(?)が進んでいるように見えます。時代の流れから考えると、こうした自由化は至極まっとうで、そうしないとこの少子化時代、社員が集まらないということもあるでしょう。

もっとも、会社が副業を認め始めたといっても、以下のようにさまざまな条件を付けて、やれるのかやれないのか判断に迷うような事例があることも事実です。

・ライバル企業や公序良俗に反する仕事は禁止
・本業の残業時間と副業の労働時間の合計は、月80時間以内
・翌日の勤務まで10時間のインターバルを設ける
・週に1日は休む
(出典:日本経済新聞 2020年1月12日付記事「ライオン、人事部が副業紹介 今春メド 本業に貢献期待」)

時代の要請という観点では、副業が認められることは良いことかもしれませんし、似たような条件の中で副業にトライする方もいらっしゃるとは思います。筆者はこうした動きを肯定的に捉えたいと思う一方で、中途半端な条件の副業を認めること自体が企業の限界を表しているのではと懸念しています。

たとえば、副業を行いたい社員がいるとします。普通は副業よりも会社の本業の方が忙しいわけですから、時間的・体力的・精神的にこれ以上働きたいとは思いません。そのなかで副業をしようとする理由は、おそらく“もっと稼ぎたい”ではないでしょうか。

“もっと稼ぎたい”にもいろいろな動機があるでしょう。たとえば、「本業の給料では足らない」「独立資金を貯めたい」「本業がつまらないので他で稼ぎたい」「他で自分の能力を試したい」などです。

本業が忙しくても、他でも収入を得たい。これは誰も否定できることではなく、人間の本源的な欲求ですから、本業でしっかり業績を上げていれば、副業することは何も問題ないはずです。

他方、本業の方で十分に稼げているか、将来給料が上る見込みもあるとしましょう。こうした場合、金銭的な理由で副業をする社員はほとんどいないはずです。筆者も30数年前の新入社員の頃は、転職は考えても副業は考えませんでした。

というのも、会社の業績が堅調で毎年給料は上がっていましたし、副業といっても今のような多様な副業ができる環境ではありませんでした。そして本当に能力ある方は、さらっと転職するか起業するかして収入を増やす方向に転身していきました。

参考:米国人が副業をする理由~若年層ほど経済的な理由で副業をする傾向

(/mwimgs/2/5/-/img_25b2c0b7df61898b00bfda72eead5ad4131377.jpg)

拡大する(/mwimgs/2/5/-/img_25b2c0b7df61898b00bfda72eead5ad4131377.jpg)

出典:CNBC "The top reason people start a side business may not be what you think(https://www.cnbc.com/2018/09/28/people-start-a-second-business-for-a-lot-of-reasons-but-mostly-its-this-one.html)"(2018年9月28日時点)

上述の副業条件は、企業からすると当然かもしれません。会社によっては労働組合もありますから、社員の労働条件や労災に関する調整も必要です。ただ、この条件の中でやれるとすれば、残業のない部署にいて、平日夕方6時頃から9時頃まで、週末1日の副業を非ライバル企業で行うといった社員のイメージです。

はたして何人くらいの方が対象になって、そこまでして副業したい方は何%くらいいるのでしょう。加えて、この条件の中でバイト的な副業してもほとんど稼げません。これでは実際に副業する社員はごくわずかでしょう。

副業をめぐって見えてくる日本企業の根本的問題

では、なぜ企業側は副業を容認するのでしょうか。この副業容認の背景を考えると、日本の多くの企業が直面している問題に突き当たります。すなわち低成長下、企業の高成長は望めないので給料はそう簡単に上げられないという理由です。

でも社員に辞められたり、モチベーションが下がったりしては困る。したがってガチガチの条件ながら副業を認めることにしよう、給料が足りない分は他で稼いでもらっていいからね、という示唆です。

筆者が一番引っかかった条件は「ライバル企業の仕事は禁止」というところです。まともな社員であればライバル企業でも稼げますから、副業などというセコいことを考えなくてもライバル企業に転職して給料アップを考えればいいわけです。

また、副業するにも同じ業界での経験や知識を生かせることをする方がスムーズですから、副業可能な企業や業界を縛るのはナンセンスだと思います。いろいろ条件つけて縛るくらいなら、副業禁止にしてその分給料を上げたほうが社員の定着率も上がるはずです。

加えて、その企業も業績にプラスになるのであればライバル会社から正社員であれ副業人材であれ人材を引っこ抜いてくればいいだけです。

筆者が長く経験した外資系金融は特殊かもしれませんが、CEOから平社員まで転職やリストラは日常茶飯事、転職しないと給料は上がらず能力なしと捉えられることもあるくらいの世界です。

そこでの副業は、上司や関係者と話せば”会社に迷惑かけなければまあいいよ”くらいの感じで可能でしたし、そもそも通常業務で疲れ切っていますので給与の足しに副業をするという感覚もありませんでした。

おわりに

こうしてみると、この副業容認問題は日本企業の成長性や賃金上昇性向がいかに低く、人材の流動性も低いかということを図らずも表していると思います。杞憂に終わればそれでいいのですが、現在の副業容認トレンドが企業の賃金抑制に拍車をかけることも懸念されます。

諸待遇が良い会社でないとバイトでさえ敬遠する世の中、それでなくても企業に対するロイヤリティ(忠誠心)はどんどん下がっています。副業容認という矮小な手段ではなく、「業績上げれば給料をドン!と上げる」のが我社のポリシー、という企業が続出することを願ってやみません。

<<これまでの記事はこちらから(https://limo.media/search/author/%E5%A4%AA%E7%94%B0%20%E5%89%B5)>>

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