「コロナショック」で見直されるテレワークが「甘くない」事情
LIMO / 2020年3月23日 20時45分
![「コロナショック」で見直されるテレワークが「甘くない」事情](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_16546_0-small.jpg)
「コロナショック」で見直されるテレワークが「甘くない」事情
「働き方改革」
「労働生産性向上」
少子高齢化による人口減少、グローバル化への対応として内閣府の施策が打ち出されてきましたが、いずれも抜本的に進捗している様子はありませんでした。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に端を発し、半ば強制的にいくつもの会社でテレワークが実施されるようになりました。これまで進まなかったテレワークが浸透しつつあります。
「塞翁が馬」「災い転じて福となす」…この災厄を転機に変えられるかが問われています。
一度やったら止められぬテレワーク
企業文書を電子化・ペーパーレス化するクラウドサービス『paperlogic®』を展開するペーパーロジック㈱が実施した調査(※1)によると、テレワーク社員の96.4%がこのワークスタイルを望んでいるとあります。通勤電車に乗る必要がなく、オフィス近辺のお店に食事に出かける必要もない。目の前に上司もいなければ、かかってきた代表電話に集中力を奪われることもないのです。
一度体験すると、半数以上の人が満足するというテレワーク。中長期的なテレワークを、「コロナショック」を機に初めて体験したという人もおり、通勤している感覚がないテレワークに「これほど楽とは思わなかった」という喜びの声を上げる人もいるのです。
テレワークは遅効性の毒である
筆者は会社員時代から、テレワークを採用する会社で働いていました。現在は起業し会社があり、従業員を雇っていますが、最近はほぼ完全に在宅で仕事をしています。
元々、チームプレーよりソロプレイが得意な気質であり、すっかりテレワークという働き方に慣れてしまいました。しかし、同じようにテレワークというスタイルを取るフリーランスや経営者仲間の話を聞くと「もう在宅で仕事をすることに疲れた。できることならオフィスで働きたい」とこぼす人もいるのです。
テレワークは遅効性の毒のようなもので、人によっては最初は良くても徐々に辛くなる要素があると感じます。
テレワークは集中するのが難しい
どんなワークスタイルでも、仕事は仕事。ビジネスですから、結果がすべてです。結果を出すためには、集中して業務に取り組むことが必要ですが、いきなり自宅で仕事をするようになった人がこれまでオフィス勤務をしていた時のような集中力を出すのは難しいのではないでしょうか。
理屈の上では、自宅でもPCやデスク、インターネットがあれば仕事はできます。しかし、事実上、精神的な理由により自宅で仕事に集中することは容易なことではありません。
テレワークに慣れていない人にとっては、自宅はリラックスするために特化した空間です。緊張感を維持し、集中力を発揮するためのものではありませんから、どうしても気が散ってしまう人もいるでしょう。子供がいる家庭では尚更です。
普段からテレワークをする人の中にも、自宅では集中できないとわざわざカフェや図書館に「出勤」して仕事をする人もいるのです。緊張感がない空間である自宅で仕事をするのは意外と難しいものです。
否めない孤独感
人間は社会的な動物です。多くの人は群れに属して、チームプレーをすることの方が、完全に一人でソロプレイヤーとして働くより能力を発揮できるものです。
ソロプレイヤーとして力を発揮できるタイプは、テレワークを何の苦痛にも感じないでしょう。筆者もその一人なのでよく分かります。しかし、これまで同僚や上司とコミュニケーションを取りながらチームプレーをしていた社員にとって、突然、テレワークで社会から切り離されて孤独を感じる辛い状況になっている人もいるのではないでしょうか。
アドビ システムズ社がテレワークについて行った調査結果(※2)によると、テレワークスタイルでの心理的・身体的な課題として次のようなものがあったといいます。
「同僚とのコミュニケーションの量が減る」(38.4%)
「時間管理が難しい」(30.0%)
「運動不足になる」(26.8%)
「孤独を感じる」(16.4%)
特に会社員として、チームプレーに慣れている人にとっては、突然ソロプレイやリモートでのチームプレーを余儀なくされると、孤独に感じてしまうと推測されます。
心理的側面の他にも、ビジネスチャットやビデオ通話でのコミュニケーションがやりづらい。体を動かさないので、頭は疲れているのに体は元気、という状態に違和感を覚える人もいるようです。そのため、通勤電車に乗らなくて楽をしたはずなのに、ジョギングやジム通いであえて疲れることをする、という状況になっている人も。
結局、どこまでテクノロジーが発達しても、ソフトウェアというべき人間の心理的な本質は変化がありません。理論上、リモートワークが便利なワークスタイルであったとしても、ずっと続けていくことは多くの人にとっては幸福につながらないように思えます。
COVID-19の蔓延によって、突然顕在化したテレワークのメリットとデメリット。COVID-19への対応とともに、テレワークにどこまで適応できるのかが問われています。
【参考】
(※1)「リモートワーク・テレワークに関するアンケート調査(https://paperlogic.co.jp/news_20200306/)」ペーパーロジック
(※2)「テレワーク勤務のメリットや課題に関する調査(https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202003/20200304_adobe-telework-survey.html)」アドビ システムズ
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