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全土封鎖で新型コロナ感染拡大防止に取り組むインドの経済見通しは? <HSBC投信レポート>

LIMO / 2020年4月16日 20時35分

全土封鎖で新型コロナ感染拡大防止に取り組むインドの経済見通しは? <HSBC投信レポート>

全土封鎖で新型コロナ感染拡大防止に取り組むインドの経済見通しは? <HSBC投信レポート>

マーケットサマリー

インド株式市場は、2020年1月下旬以来、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした世界的な株式市場の急落を受けて大幅に下落。インド国内でも感染が拡大しており、政府は3月24日、国内全土を封鎖すると発表。債券市場は、昨年12月下旬以降、世界的な金融緩和の動き、インド準備銀行(RBI、中央銀行)による金融緩和を支えに堅調(利回りは低下)に推移している(4月6日現在)。

トピックス

全土封鎖で新型コロナ感染拡大防止に取り組むインド

世界中で新型コロナウイルスの感染が急拡大するなか、巨大な人口、密集都市地域、非組織労働力を抱え、公的医療が不十分なインドは、今後数週間、あるいは数ヶ月間、厳しい情勢下に置かれると懸念される。

インドで確認された感染者数は4月13日現在、9,152人、死者数は308人となっている。感染例の大多数は国外から持ち込まれ、その他は海外渡航歴がある人との濃厚接触で発生したものであり、これまでのところ市中感染が拡大している証拠はないと言われている。しかし、感染判定検査の数が限られているため、公表されている患者数、死者数はいずれも大幅に過小報告されている可能性があり、感染者数は今後大幅に増加するとの見方もある。

感染防止策を強化するも、効果は不透明

インド政府は、諸外国の政府や主要中央銀行が導入した対策を参考にして、国民を新型コロナウイルス感染症から守るとともに、感染防止策の経済への影響を和らげるために様々な対策を打ち出している。当局が感染防止策を次々と講じ始めたのは2月初めで、感染者数が増えはじめた3月上旬には行動抑制策が強化された。さらに3月22日から5月3日までの期間は、すべての国際民間旅客航空便の国内への着陸を禁止した。

また、3月24日夜にはモディ首相がテレビ演説で、3月25日から21日間の全土封鎖を突然表明した(その後5月3日まで延長)。インドの総人口を考えると、世界最大規模の外出禁止措置であることは言うまでもない。

強化された対策

現在、世界人口の相当数が何らかの形でロックダウン(都市封鎖)の影響を受けているが、モディ政権が発令した封鎖の規模は並外れており、それに伴う経済的コストも膨大だ。それでも政府は、市中感染の拡大を抑え、大規模な公衆衛生の危機を回避するためには全土封鎖が不可欠と判断した。

全土封鎖により食料品店、薬局、倉庫、通信、電力、銀行、証券取引所を除き、国内経済の大部分は3週間の停止を余儀なくされている。ちなみに、2016年に高額紙幣が廃止された際でも経済活動が止まることはなかった。

全土封鎖の開始直後、最も打撃を受ける分野や社会的弱者を支援するため、総額230億米ドル(国内総生産の0.9%)相当の緊急経済対策が発表された。

対策には、①8億人を対象とする3ヶ月間の食料配給(米または麦)、②2億人の女性、5000万人の地方の非農業部門労働者、8700万人の農業従事者、3000万人の高齢者への現金支給(銀行口座への払い込み)、③中小企業従業員のうち800万人の低賃金労働者について、退職基金掛金3ヶ月分を肩代わりすることで雇用を維持することなどが含まれている。

予想される国内景気の落ち込みを考えると、こうした弱者支援策だけでは不十分のように見えるが、政府は特定の産業向けの緊急支援対策を適宜打ち出す方針を約束している。

インド準備銀行(RBI:中央銀行)は全土封鎖開始から2日後の3月27日に政策金利を0.75%引き下げた。この緊急利下げの幅は市場予想を上回る格好となった。RBIは同時に、銀行部門への大規模な流動性の供給、その他の景気下支え策も発表した。これらの緊急対策によって、銀行部門での流動性の需給バランス、金融政策の波及効果、実体経済への資金の流れの改善への期待が高まっている。

RBIの金融緩和策は借り手の救済策としても有効で、存続の可能性がある企業の事業継続を確かなものとするとともに、資金調達やクレジット市場におけるリスクの軽減にもつながると期待されている。RBIは、金融政策目標の達成に必要であれば伝統的および非伝統的な金融政策をさらに打ち出す用意があることも表明した。

効果は不透明

マクロ経済面では、世界の他の諸国同様に、インドも今後は成長減速に直面せざるを得ない。政府の財政基盤は弱いが、財政出動規模の大小によって経済の先行き見通しが大きく違ってくることは言をまたない。

全土封鎖が続くなか、「不要不急」の消費、特にサービス関連消費(とりわけ低所得世帯の消費)が、最も大きな打撃を受ける可能性が高い。国内全体の家計消費支出に占めるサービス支出の割合はこれまでは上昇傾向にあり、コロナ危機に見舞われる直前には総消費支出の50%、国内総生産(GDP)の30%を占めていた。しかし今後は、感染拡大による失業や家計の減収を受けて家計の消費マインドが急激に悪化することが予想される。

インドの労働市場では「非組織労働者」と呼ばれる、労働法や社会保障制度の適用対象外である「インフォーマル・セクター」で「自営業者」または「日雇い労働者」として働く人たちが圧倒的な割合を占めるが、インドでは全土封鎖が彼らに及ぼす極めて深刻な影響への懸念が高まっている。

また、パンデミック(世界的大流行)で起きたサプライチェーンの分断による影響はインドでも顕著だ。さらに、世界的なリセッションのリスクが増すなかでの需要の大幅減が懸念される。コロナ危機によって悪化した金融市場環境の二次的な影響も心配である。

原油価格の急落(今回の状況ではインドにとっては異例のポジティブな要因)、政府の緊急対策、さらにインドの場合、世界のバリューチェーンへの統合が限定的である事実などいくつかのプラス要因はあるものの、全体として見れば、多大な経済的損失が予想される。

新型コロナウイルスの感染拡大は、マクロ経済にどのような影響をもたらすのだろうか。それには、パンデミックがどこまで広がるか、収束がいつになるか、社会的距離(social distancing)を保つ措置がどこまで厳しく、どれだけ長い間講じられるか、政府の緊急対策で感染拡大を抑制できるのか、さらにそれで経済への影響を抑えることができるのかを注視するしかないのが実情だ。

そうした制約があるなかで、当社では2020年度の実質GDP成長率見通しについては、上期(2020年4~9月)は「横ばいからマイナス」で推移し、下期(2020年10月~2021年3月)に入ると、感染拡大の行方次第では景気回復があると見ている。

しかし、当社では、封鎖終了後もウイルス感染への「恐怖心」が社会からすぐに消えるとは考えにくいため、インドの経済活動が数ヶ月間は通常以下の水準で推移すると予想している。新型コロナウイルスへの警戒感が民間消費及び企業設備投資にもたらすマイナス効果が解消するまでには、長い時間がかかりそうだ。経済活動の中には、とりわけサービス産業の一部では、永久に消滅するところが出てくることさえ考えられる。

インド経済がコロナ危機以前の水準まで回復するには長い時間がかかるだろう。長く待ち望まれてきたインド経済の景気の循環的回復は新型コロナウイルスの感染拡大によってさらに先延ばしされたと言える。

株式市場

新型コロナウイルスの影響を受けて1月下旬以降大幅下落

インド株式市場は、2020年1月下旬以降、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした世界的な株安を受けて大幅に下落している(4月6日現在)。

当面は新型コロナウイルスの感染状況、各国の政策対応を巡り、世界の株式市場は不安定な展開となり、インド株式市場もその影響を受けることが見込まれる。また、インド国内でも感染が拡大しており、インド政府は3月24日、全土を封鎖すると発表した。外出や移動の制限による国内経済への影響が懸念される。

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HSBC投信の株式運用戦略

インド株式市場は短期的には新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、引き続き不安定な展開を続ける可能性がある。また、当面は感染予防対策が国内の経済活動に大きな影響を及ぼすことが見込まれる。

インド経済は当面は厳しい局面を迎えそうだが、当社は長期的にインド株式市場に対する強気の見方を維持している。インド経済の成長ポテンシャルは高く、構造改革の進展から、長期的に成長率はさらに高まると見られている。与党インド人民党(BJP)が安定した政治基盤のもとで高成長・構造改革路線を継続すると見込まれることも、株式市場にとり強力なサポート要因となる。

インド株式の運用では、持続的な収益成長性を有しながらバリュエーションに割安感のある銘柄を選別する。業種別には金融と不動産をオーバーウェイトとし、エネルギー、生活必需品、ヘルスケアをアンダーウェイトとする。また、インフラ関連銘柄は、第2期モディ政権が推進するインフラ投資計画の恩恵を受けると見込まれる。

債券市場

2019年12月下旬以降、上昇(利回りは低下)基調

インド国債市場は、2019年12月下旬以降、上昇(利回りは低下)基調をたどっている(4月6日現在)。

インド準備銀行(中央銀行)は3月27日、緊急会合を開き、政策金利のレポレートを0.75%引き下げ4.4%とすることを決定した。中央銀行は新型コロナウイルス感染拡大の国内経済への影響を抑制することが利下げの目的と説明している。世界的な金融緩和の流れ、インドの中央銀行による利下げはインド債券市場にとって追い風となっている。

HSBC投信の債券運用戦略

インド債券市場は、グローバル投資家にとり良好な投資機会を提供している。新型コロナウイルスによる経済的混乱が収束すれば、インド経済は再び優位性を取り戻すと思われる。インド経済のファンダメンタルズは比較的良好であり、また、インド国債は投資適格級ながら、利回りが依然として高水準にある点も注目される。

インド債券の運用においては、引き続きインドルピー建国債に重点を置いて投資を行う。また、短中期のインドルピー建社債を選好する。一方、米ドル建債券には慎重な姿勢を維持する。

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為替市場

インドルピーは2月下旬以降は他の新興国通貨とともに急落

インドルピーは対米ドル、対円ともに本年2月下旬以降は新型コロナウイルスの感染者の世界的な広がりを受けた投資家のリスク回避志向の高まりを受けて、他の新興国通貨とともに急落している。

インドルピー相場は、短期的には引き続き不安定な動きを続ける可能性があるが、長期的には、相対的に良好な経済ファンダメンタルズや潤沢な外貨準備高が支援材料となり、堅調な展開が予想される。

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