ネクタイはタンスの肥やし? 激減した需要にテレワークが追い打ちか
LIMO / 2020年5月22日 20時0分
![ネクタイはタンスの肥やし? 激減した需要にテレワークが追い打ちか](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_17444_0-small.jpg)
ネクタイはタンスの肥やし? 激減した需要にテレワークが追い打ちか
この記事の要点は?
一連のコロナ禍が終息しない中、すっかりお馴染みになったクールビズがスタート
2005年の本格導入以降、国内のネクタイ生産は約3分の1へ激減、輸入品を合わせた需要も半減
在宅テレワークの定着化により、ネクタイ需要はもう一段の厳しい減少局面を迎える可能性
コロナ禍の中、恒例のクールビズがスタート
今年は一連のコロナ禍により、事実上、大型連休がなくなったのはご存知の通りです。外出自粛要請の中、家でゴロゴロしていたら、あっという間にGWが終わっていたという人も少なくないでしょう。
しかし、コロナ禍で日常生活が停止を余儀なくされても、季節は着実に変わっていきます。コロナ一色だった春は終わり、またあの蒸し暑い夏がやって来ようとしています。
実は、コロナ騒ぎでほとんど報道されませんでしたが、環境省ではGW最中の5月1日から「令和2年度 クールビズ」がスタートしています。本来ならば、小泉環境大臣が何らかのパフォーマンスを行ってクールビズをアピールしたのでしょうが、その類のイベントは全て中止になりました。
一方、民間企業でもGW明けの5月7日からクールビズを開始させているケースが増えきましたが、6月1日から導入する企業がまだ圧倒的に多いようです。
クールビズは「ノーネクタイ、ノージャケット」が主体
ところで、クールビズって何のことでしょうか?
実際のところ、環境省のHPを見てもクールビズに厳格な定義はありません。一応、夏期に行われる環境対策などを目的とした衣服の軽装化キャンペーンを意味しているようですが、実態としては「ノーネクタイ、ノージャケット」のビジネスカジュアルウェアと考えていいでしょう。
そして、実質的には男性のみが対象になっていると思われます。男性サラリーマンの中には、“クールビズのおかげで、昔に比べれば夏の暑さもしのぎやすくなった”と感じている方も多いと推察されます。
今から20年弱前まで、どんな酷暑でも社内・社外を問わず、男性会社員はネクタイ着用が当然でした。誰一人、少なくとも表立ってはグチ一つこぼさずにネクタイを着用していたのです。真夏に喉元を締め付けるネクタイのあの苦しさから解放されるだけで、少なくとも気分的に涼しくなるのは確かでしょう。
本格導入は2005年の小泉政権時から
今では当たり前となった夏季期間のクールビズですが、本格導入されたのは2005年(平成17年)からです。当時の小泉政権が旗振り役となり、多くの国会議員や地方議員に“奨励”したことで、日本社会に根付くきっかけとなりました。
しかし、この新しいドレスコード(服装基準)が認知されようとした2005年6月、日本ネクタイ組合連合会が当時の小泉首相や各閣僚に抗議声明文を提出しています。ご記憶にある方もいらっしゃるでしょう。声明内容は正確に覚えていませんが、“クールビズの影響でネクタイの売上が減少する”というものだったと記憶しています。
すると、小泉首相は“これをビジネスチャンスに変えて欲しい”という内容の返答をしたと、筆者は鮮明に覚えています。
いずれにせよ、日本ネクタイ組合連合会が、クールビズの浸透に深刻な危機感を持ったことは確かです。あれから15年余が経過していますが、実際にネクタイの需要はどうなったのでしょうか。
恐ろしいほど激減したネクタイ需要
結論から言うと、ネクタイ需要は恐ろしいほどに激減しています。
日本ネクタイ組合連合会を構成する大組織の東京ネクタイ協同組合によれば、ネクタイの国内生産本数は、平成17年の約1,164万本から平成29年には約398万本へと▲66%減っています。ちょうど3分の1になったわけです。
また、輸入品を含めた本数でみても、同じく4,026万本から2,085万本へ▲48%以上の減少です。こちらはザックリ言えば半減でしょうか。
これだけ需要が激減して、何の影響もないはずがありません。しかも、国産ネクタイの需要激減が著しいことを勘案すると、ネクタイ業界では廃業に追い込まれた業者も少なくないと推察されます。ちなみに、同組合は平成30年以降のデータ開示を止めています。
実は、民主党政権が本格始動した2010年、日本ネクタイ組合連合会は当時の環境大臣にクールビズの廃止を陳情しています。自民党が無理でも、民主党なら理解してもらえると考えたのでしょうか。心情的には理解できないことはありません。
しかし、クールビズ導入から5年も経過してなお、新たな一手を打てなかったところにネクタイ業界の限界を感じます。結果として、ネクタイ業界は社会ニーズの変化に対応できなったと言えるでしょう。
テレワーク定着で需要はさらに減少?
さて、クールビズ導入を契機に需要が激減したネクタイですが、そうは言っても、一定のニーズはあります。実際、1年の半分以上(10月~4月)はクールビズ期間ではありませんし、1年を通してクールビズを実施している企業はまだ少数だと思われます。また、商談、会議、面接などでネクタイ着用が事実上、必須であるケースも少なくないはずです。
もうこれ以上、需要が減ることはなく、底打ちしたと見ることができるでしょうか?
筆者は、ここからもう一段、非常に大きな減少局面を迎えると予想します。最大の理由は、テレワークの普及です。今般のコロナ禍で多くの企業が導入した在宅勤務(テレワーク)は、今後も相当の割合で定着する可能性が高いと思われます。
テレワークの中で、ZoomやSkypeなどを用いて会議を行った人も多いでしょう。その際、皆さんはどのような服装でしたか? 中には、ビシッとネクタイを着用した人もいるでしょうが、ほとんどの人はカジュアルな格好だったのではないでしょうか。
一連のコロナ禍はまだ収束していませんが、必ずしも毎日出勤する必要がないことが認識されたと考えられます。このテレワークが年々定着していけば、ネクタイの所有本数はさらに減っていくのではないでしょうか。
仕事用のネクタイは、1~2本あれば十分であることを深く実感させられた気がしてなりません。
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