コロナ禍で怒りっぽい人急増?ロスマリン博士の「怒りのコントロール4ステップ」
LIMO / 2020年11月30日 20時45分
コロナ禍で怒りっぽい人急増?ロスマリン博士の「怒りのコントロール4ステップ」
コロナ禍ですべてが通常通りに行かず、我慢の連続、先の見えない長引く不安、感染の恐怖、多かれ少なかれ世界中のほとんどの人が、自分では気が付かないうちに精神的にかなり疲労が溜まっているようです。人によっては鬱になったり、不眠症になったり、怒りっぽくなったりと、様々な形で現れています。
特に、いつもより怒りやすくなったという人が増えているようです。今まで気にならなかったことに妙に頭にきたり、カッとして言わなくてもいいことを口走って相手を傷つけてしまったり、喧嘩になったり…。今回はそんな厄介な怒り、アンガーについてハーバード大学医学部の心理学助教授デビッド・ロスマリン博士のお話をもとに考えます。
怒りが犯罪へ
ここ数年、「アンガーマネジメント」という言葉が浸透しています。コロナ禍以前からストレスの多い社会で、ただ単に「短気な人」「キレやすい人」というレベルでは収まらないような人が増えているからではないでしょうか。
そういう人達をアメリカでは「アンガープロブレム」「アンガーイシュー」を抱えているといいます。こういう人達は、ちょっとしたことですぐに攻撃的になり、言葉や態度で他人の心を傷つけてしまいます。それだけではなく、他人や家族に暴力を振るったり、モノを壊したりと犯罪に繋がるケースも増えています。同時に自分自身の心も深く傷つけてしまうこともあり、「アンガーマネジメント」、つまり怒りの感情をコントロールするためのセラピーやカウンセリングの必要性が注目されるようになっています。
特に今のアメリカでは、コロナ禍のフラストレーションに加え、歴史的にもっとも注目を集めた大統領選挙という政治的な要素も影響しています。アンガープロブレムを悪化させる人が多く、銃社会のアメリカでは緊張感が高まっています。
怒りは「2次的な感情」
――怒りは人間が持つ感情の1つではあるが、他の感情に付随して起こる2次的な感情だ
ロスマリン博士は、ハーバード大学が運営するニュースサイトThe Harvard Gazetteのインタビューで、怒りについての考え方の1つとしてこう説明しています。ある出来事による不安、恐れ、悲しさ、寂しさという負の感情を受入れたくないために反応して、怒りが発生する場合が多いということです。
例えば、マスク着用問題。マスクを着用していない人を怒鳴る人は、感染して死ぬかもしれないという不安、恐れという感情が先にあり、その感情の処理を素通りして、すぐに怒鳴りつけるという行動をとってしまっているのだろうといいます。
トランプ大統領の支持者達の多くは、銃規制にしてもマスク着用義務にしても、「政府(民主党)がアメリカ人の自由を奪うという恐れが根底にあるのだろう」とロスマリン博士は述べています。
もちろん2次的でない場合もあるかもしれません。また、精神疾患による被害妄想で常に怒りの感情を抱え、関係のないことや関係のない人に対してもすぐに怒るというケースもあるでしょう。
怒りのコントロール方法
このような怒りのしくみを知ることは、アンガープロブレムを抱える人も、また、周りの人にとっても役立つかもしれません。ロスマリン博士は、怒りが2次的な感情だということを前提に、怒りをなだめる方法の1つとして「Emotionally focused therapy(感情焦点化療法)」という、感情に向き合う心理療法を使って自分に問いかけるテクニックを紹介しています。
なぜ自分は今怒りを感じているのか?
その怒りの元の感情は何か? (不安、恐れ、寂しさ、悲しさ)
その元の感情を受け入れられるか?
その元の感情と原因を他人に伝えられるか?
またロスマリン博士は、人は誰でも他人と繋がる必要があるという「Attachment theory(愛着理論)」も怒りのコントロールに役立つといいます。自分が正しいと相手を責めるのではなく、相手と繋がりを保つことを目的とし「あなたが必要だ」「あなたがこうしてくれることを必要としている」と、自分にも相手にも認めさせることが大切だそうです。
例えばカップルの関係において、「なんで電話してこないの!」と一方的にぶつけるよりも、「電話がないと、あなたが私を気にしていないようで、不安で寂しくなる。私はあなたが必要です」と不安で寂しいという元の感情を伝えたほうが効果的だといいます。
マスク着用の例でも、「マスクしろ!」と一方的に怒鳴るのではなく、「自分はハイリスクだから感染するのが怖いので、マスクをしてもらえないか」といえば喧嘩にはならないだろう、ということです。
このように自分の不安、恐れ、寂しさ、悲しさなど負の感情と脆さをさらけ出すこと、つまり他人に頼ることは怒りをぶつけるよりも理解してもらいやすいのでしょう。また逆に、激怒している人の元の感情とその原因は何かを理解しようとすることで、相手の怒りを抑えられるかもしれません。
「いや、そんな論理的に上手くはいかない…」というご意見もあると思います。なにはともあれ、「短気は損気」、怒るという感情は様々なことにダメージを与えます。怒りっぽくなったと感じたら、是非、ロスマリン博士のアドバイスを参考にしてみてください。
参考
The Harvard Gazette “Soothing advice for mad America”(https://news.harvard.edu/gazette/story/2020/08/a-closer-look-at-americas-pandemic-fueled-anger/)
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