「まずは3年」は正しいか?入社8カ月で退職した女性のその後
LIMO / 2021年3月12日 18時55分
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「まずは3年」は正しいか?入社8カ月で退職した女性のその後
最近の若者はすぐに仕事を辞める――といわれることは多いもの。「まずは3年」ともよく聞きますが、筆者自身は3年といわず、新卒入社8カ月で正社員を辞めた一人です。
あれから15年。“すぐに会社を辞めた女の末路”…とまではいきませんが、これまでの社会人生活を振り返り、今のキャリアに至るまでの紆余曲折をまとめてみたいと思います。
8カ月で正社員の仕事を辞めた理由
私が新卒で入社したのは横浜にあるホテルでした。親の勧めで志望した航空業界を断念し、華やかな接客業という共通点から選んだ仕事です。
当時の私は世間知らずで、本当に何も分かっていませんでした。決して軽い気持ちで選んだわけではありませんが、一見華やかな世界の裏側、仕事内容や給与・勤務条件などについても入社前に十分理解していたとはいえません。
実際のホテル業は(配属にもよりますが)いわゆる体育会系で、なかなか厳しいものでした。大学時代の接客業アルバイトとは比にならず、さらにパワハラやセクハラも日常的。筆者も「声が小さい!」と怒鳴られ、スタッフ大勢の前で見せしめのような“練習”を強いられたこともありました。
そんな状況に対して給与は低く、安いアパートで一人暮らし。手取りが14万円台の月は菓子パン1つで過ごした日もあります。「頑張って大学を卒業したのに、私の人生これでいいんだっけ…」という思いが日に日に強くなっていくばかりでした。
そんなある日、偶然テレビで見かけた「色」に関わる仕事。その瞬間、ビビッと電流が走るような感覚があったのです。直感的に「これかもしれない」と思いましたが、本格的に学ぶにしても平日のシフト休みしか取れない、そもそもお金が貯まらない。そのことに気付き、このままではダメだと転職を決意したのです。
上司に退職の希望を伝えると、会議室に呼ばれ長時間かけて説得されました。「今辞めたら経歴に傷がつくよ」「すぐ辞めるなんて次の仕事もどうせうまくいかない」といわれたことを覚えています。立場上必死だったのは分かりますが、かえって筆者の決意は固まり、結局それから約1ヶ月後に退職することになりました。
その後ベンチャー企業へ転職するも「失敗」
心機一転、新しい職場に選んだのは渋谷のITベンチャー企業でした。給与も以前よりずいぶん良く、今度は土日休み。初めての“オフィスワーク”にもワクワクしていました。
ところが職場の雰囲気はあまり良いものではなく、実は怪しいビジネスで儲けていることを知り、大きなショックを受けました。そして、実際に振り込まれた給与は提示額よりも低く、社長に問うと「ごめん、元の金額が間違ってたわ」の一言で片付けられたのです。
結局、その会社は試用期間の3カ月で去ることを決めました。意気揚々と踏み出した初めての転職はあえなく失敗。「次の仕事もどうせうまくいかない」…前職の上司に言われた通りの状態になってしまい、ひどく落ち込みました。社会人1年目で2回も会社を辞めてしまったのですから。
消去法で今のキャリアに辿り着いた
そんな筆者を拾ってくれたのが、次の転職先・リクルート社です。ありがたいことに仲間に大変恵まれ、刺激と充実の日々を3年半過ごすことができました。仕事は営業と原稿制作が半々で、ここで初めて「書く仕事」「作る仕事」の面白さに出会います。営業はかなり苦手でしたが、原稿を書く時間は楽しく、それなりに結果を残すこともできました。そしてこの間に念願のスクールに通い、資格(色彩検定1級)も取得できたのです。
3年半の“卒業”後は化粧品メーカーに転職し、今度はカタログ冊子の企画・編集の仕事を担当することになりました。残念ながら社風や方針が合わず転職を決めましたが、仕事の内容は面白く、徐々に自分に合う仕事が分かってきたといえるでしょう。
そして今の会社に転職したのが9年前。紆余曲折ありましたが、ようやく色に関わる企業に入り、専門誌の編集・執筆の仕事に就くことができました。また現在は、会社員としてだけではなく個人でも「書く仕事」を手がけています。
振り返れば、新卒の頃の筆者は世間だけでなく自分自身の理解も足りませんでした。どれだけ自己分析をしても正解が得られなかった筆者には、こうやって「体当たりしてダメなら次」「こっちも違うなら次」と、消去法で残った道を不器用に探すしかなかったのです。
「まずは3年」は今も正しいのか?
さて、冒頭でも触れた「まずは3年」という言葉。これは今も正しいのでしょうか?
筆者は20代で4回転職を経験しましたが、その頃は友人にも「今どこの会社にいるの?」と苦笑されたものです。仕事をコロコロ変えて落ち着かない、長続きしないダメな奴、私の中にそんな後ろめたさがあったことは否定できません。
しかしあの頃から15年も経つと、状況はずいぶん好転したなと感じます。これはあくまで筆者自身の肌感覚ですが、以前よりも転職(転職回数)への視線は変わってきたのではないでしょうか。企業寿命の短命化や働き方の変化で、今や転職は「普通のこと」です。新卒で入った一つの会社にずっと在籍し続ける方が珍しくなっていくでしょう。
だからこそ筆者は、まずは3年という考え方は古いと思います。だってあなたの人生の3年間、転職を引き留めたとして誰も責任を取ってくれません。ただ我慢して過ごすには長いと思いませんか。事情はあれど、時間の枠にコントロールされるのではなく、自分の意志で舵を切りたいものです。
さいごに
筆者自身は新卒入社8カ月で仕事を辞め、その後も転職を重ねましたが、今はそれで良かったと思っています。結果論かもしれないし、遠回りした自分の正当化かもしれません。それでも一つ確かなのは、全て自分の意志で決めたこと。だからこそ、どの方向であれ留まらずに進み続けることができました。
変化のスピードが速い時代、働き方も多様化しています。仕事を変えることはますます「普通」になっていくかもしれません。後悔のない働き方、そして後悔のない生き方のために、自分の意志を尊重したキャリアを切り開けるよう願っています。
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