新型コロナを怖がらない人にワクチンを打ってもらう工夫
LIMO / 2021年6月20日 19時35分
![新型コロナを怖がらない人にワクチンを打ってもらう工夫](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_23819_0-small.jpg)
新型コロナを怖がらない人にワクチンを打ってもらう工夫
新型コロナのワクチンは、必要性を感じていない人にこそ打ってほしい、と筆者(塚崎公義)は考えています。
ワクチンの優先順位の議論は下火に
新型コロナのワクチン接種が、なかなか思うように進んでいませんでしたが、ここにきて急速に進み出したようです。大変喜ばしいことです。
ワクチンを打てる数が少ない時には、誰を優先するのか、という議論がありました。「医療従事者を優先すべき」「罹患すると死亡するリスクが高い高齢者を優先して死者数を抑制すべき」というのが政府の方針だったようです。
それ以外にも「若者は行動範囲が広くて他者を罹患させる可能性が高いのだから、行動範囲の狭い高齢者より若者に優先して接種して流行を抑制すべき」「余命の短い高齢者よりも、余命が長くて日本経済に貢献が期待される現役世代を優先すべき」といった意見もあったようです。
「一部のワクチンを入札制にして、市場原理を活用しよう」「警察、消防等々の関係者を優先しよう」「大臣や首長を優先しよう」といった意見もあったのかもしれません。
価値観の問題もあって難しい議論も行われていたようですが、ここに来て高齢者も現役世代も希望すればワクチン接種が受けられる見込みとなったため、こうした議論は下火になって行くでしょう。
あとは、ワクチンの接種が可能になっても接種を受けない人をどうするか、ということが問題になるわけですね。
副反応を怖れる人に強制することは難しいかも
国民全員がワクチンを打てば、新型コロナは収束するでしょう。そうであれば、全員に義務化するということも選択肢ですね。以前は子供の予防接種は必ず受けなければならない、とされていたわけで、強制にも合理的な理由はあるからです。
ワクチンを接種した人が罹患しないとすれば、「自分以外の人が全員ワクチンを接種すれば自分は接種する必要がない」といったことになるかもしれません。それではワクチンを我慢して打った人々との間の不公平を生じるでしょう。
さらに問題なのは、「それなら自分も接種しない」という人が増えると流行が収まらないでしょう。だから強制が必要だ、というわけです。
理屈はその通りですが、現実問題としては、「副反応が怖いから打ちたくない」という人に強制すべきか否か、というのは難しい問題でしょう。子供の予防接種も義務が努力義務に変更されているようですから、新型コロナのワクチンも強制は難しいのでしょうね。
正しい政策であれば、理解、納得してもらえないことでも断行するべきだ、という考え方もあるでしょうが、相当な軋轢を生じるでしょうから、本件に関しては現実的ではなさそうです。
余談ですが、これは、安全と安心という難しい問題を提起しています。仮に「予防接種をする方がしないより安全なのに、人々は予防接種の副反応の方を怖がっている」とした場合、それをどうやって理解し、納得してもらうのか、ということですね。
副反応を怖がる人には、政府が積極的に情報を提供すべきだと筆者は考えています。「接種した人に占める副反応の割合と罹患者の割合」「接種していない人に占める罹患者の割合」を示して比べてもらうだけでも、意味はあるでしょう。それでも怖がって接種を拒む人はいるでしょうし、それは仕方のないことなのかもしれませんが。
ワクチンの必要性を感じない人に打ってほしい
本稿が論じたいのは、副反応は怖くないけれど、新型コロナも怖くないので、ワクチンの必要性を感じない、という人々についてです。たとえば毎晩居酒屋で飲み歩いている人の中には、そうした人も多いでしょう。
そうした人が、自分で新型コロナに罹患するリスクをどう考えるかは自由ですが、そうした人が罹患すると自分が苦しむのみならず、周囲を罹患させてしまう可能性があるわけです。それは周囲の人々にとって大いに問題でしょう。周囲の人々を罹患させないために、そうした人々にこそワクチンを接種してほしい、というのが筆者の期待です。
新型コロナへの感染を恐れて積極的にワクチンの接種を受ける人は、行動も慎重でしょうから罹患する確率も他人に罹患させる確率も低いわけで、そうした人よりもむしろ打ちたくない人に優先的に打ってもらいたいほどです。
その意味では、今次ワクチンが無料であるのは大変意味があることだと思います。「金を払ってまでワクチンを打つ必要は感じないが、無料なら打っても良い」と考える人が接種するかもしれないからです。
あとは、無料でも接種しない、という人に接種してもらうためにどうするか。上記のように強制は難しいでしょうから、インセンティブを考える必要があります。「接種したら1万円贈呈します」といった選択肢は考えられますね。その場合には、すでに接種した人にも1万円贈呈することが公平でしょう。
周囲の人が自衛のために、「私と飲みに行きたいなら、接種証明書を見せて」と言えば良いのかもしれませんが、「新型コロナを気にしないから接種していない人々」が集まって飲み、感染し、それを翌日職場で広める、といったリスクは排除できないでしょう。
そうだとすれば、居酒屋に規制してもらうしかないのかもしれませんね。行政から居酒屋に対して「酒を出すな」とか「夜は8時で閉店しろ」とか言うのをやめて、「接種証明書のない客には酒を飲ませるな」という規制に変更するのです。
それなら、居酒屋としても受け入れやすい規制でしょうし、多くの人に接種のインセンティブを与えることができそうです。あとは、居酒屋だけなのか一般の飲食店やカラオケ店も含めるのか、といった議論でしょうね。
規制ではなく、居酒屋等が自主的に「接種した人はアルコール2割引」といったルールを設けてくれれば、それも有効かもしれませんね。観光地等々、新型コロナに苦しめられた企業の多くがそうした工夫をすれば、接種する人が増えるかもしれません。期待しましょう。
本稿は、以上ですが、最後に新型コロナと闘っている医療関係者等々に敬意と感謝の念を表したいと思います。
なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>
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