「年金暮らしのスタート地点」60代の平均貯蓄額はいくら?
LIMO / 2021年6月18日 6時45分
「年金暮らしのスタート地点」60代の平均貯蓄額はいくら?
働き続けるシニア世代を後押しする制度が整いつつあります。定年退職後の再雇用制度を活用したり、経験を生かして起業されたりする方も増えていますね。
とはいえ、やはり60代は多くの人が年金暮らしに移行する時期といえるでしょう。
老後を見据えて貯蓄に励んでいた人の多くは、60代で貯蓄額がピークになっているはずです。
そこで、最近データから60代の平均貯蓄額をご紹介します。さらに、老後の収支状況から、必要な老後資金と対策もお伝えします。
60代の貯蓄額の平均はいくら?
金融広報中央委員会が公表している「家計の金融行動に関する世論調査(令和2年)」から、60代の貯蓄額の平均値と中央値を見てみましょう。
まずは【表1】をごらんください。
60代の貯蓄額の平均は、二人以上の世帯で1745万円、単身世帯で1305万円でした。
平均値は一部の富裕層の貯蓄額の多さによって引き上げられる傾向があるため、貯蓄額が低い世帯から順に並べた時にちょうど真ん中にくる世帯の貯蓄額を表した「中央値」がより実態に近いとされます。
中央値は二人以上の世帯で875万円、単身世帯で300万円です。
このデータには、金融資産を保有していない世帯も含まれており、その割合は二人以上世帯で18.3%、単身世帯では29.4%にもなります。
【グラフ1・2】をごらんください。
貯蓄額の割合も見てみましょう。60代の二人以上の世帯では、割合が一番多くなっているのが3000万円以上の世帯で19.6%、次に多いのが「金融資産非保有」世帯の18.3%となっており、両極端の結果になっています。
60代の単身世帯では、割合が一番多いのが「金融資産非保有」世帯の29.4%、次に多いのが3000万円以上の世帯の13.8%となっており、こちらも両極端の結果でした。
こうなってくると、平均値も中央値も実態を表していないように思います。
持っている人と持っていない人の差が時間の経過とともにますます開いてしまったことが、このような結果となったようです。
老後の生活費はいくら?
65歳になると公的年金が受け取れるようになります。公的年金の月額平均は、厚生年金保険(第1号)が14 万6162円、国民年金が5万6049円となっています。(※)
※厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報(令和元年度末)」より
夫婦二人世帯を想定すると、二人とも厚生年金であれば約29万2000円、夫(妻)が厚生年金で妻(夫)が国民年金であれば、約20万2000円、二人とも国民年金であれば、約11万2000円となります。
では、年金収入に対して、生活費はいくらかかるでしょうか。
総務省の家計調査の結果をまとめた【表2】を見てみましょう。
60代では1ヵ月に約27万5000円の生活費がかかっています。
夫婦二人が厚生年金であれば、やりくり可能ですが、厚生年金と国民年金の組み合わせの夫婦では、約7万3000円の赤字、二人とも国民年金の夫婦になると約16万3000円の赤字となってしまいます。
仮に65歳から90歳までの1ヵ月の生活費を平均して23万2000円とすると、
●厚生年金と国民年金の夫婦
6060万円(年金収入)-6960万円(生活費)=-900万円
●二人とも国民年金の夫婦
3360万円(年金収入)-6960万円(生活費)=-3600万円
厚生年金と国民年金の組み合わせ夫婦では老後900万円不足となり、二人とも国民年金の夫婦では老後3600万円の不足となりました。
年金以外の収入を得よう
上記の試算では、二人とも国民年金の夫婦は老後に3600万円不足するという結果になりましたが、これは65歳以降働かずに年金生活に入った場合の試算です。
二人とも国民年金である夫婦は自営業である割合が高いでしょう。それならば、65歳以降も働いているケースは多く、年金に手を付けずに生活できれば、老後資金の不足は大きく減らすことができます。
60代はまだまだ体力気力ともに活力がある時期です。働けるうちは働き続けるのも一つの方法です。
年金以外にも収入を持つことで、貯蓄を切り崩す時期を遅らせることも可能です。これは、60代までに充分に貯蓄ができなかった場合にも有効といえるでしょう。
健康に60代を過ごせれば、さらに10年分の時間を使って貯蓄をすることができるのです。
まとめ
60代の平均貯蓄額は、二人以上の世帯で1745万円、単身世帯で1305万円でした。一方で貯蓄がまったくないという世帯も二人以上の世帯で20%弱、単身世帯では30%近くありました。
若いうちからコツコツと貯蓄をしている者としていない者との差が60代で顕著に表れています。
老後は年金だけで生活するには厳しい状況です。また、年齢が上がるにつれて医療費や介護費の負担が重くなることが想定できます。
よって、年金から生活費を引いた老後資金の不足分、プラス500万円~1000万円程度は準備できると安心かもしれません。
参考資料
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和2年)」(https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/)
厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報結果の概要(令和元年度)」(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/nenpou/2008/dl/gaiyou_r01.pdf)
総務省「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表(年次 2020年)」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000000330001&tclass2=000000330004&tclass3=000000330005&stat_infid=000032048822&result_back=1&tclass4val=0)
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