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【消費減税】実は景気対策の効果が薄く、弊害が大きいのはなぜか

LIMO / 2021年8月15日 19時45分

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【消費減税】実は景気対策の効果が薄く、弊害が大きいのはなぜか

景気対策としての消費減税は無用な景気変動を4回も引き起こす愚策だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

消費税減税の議論が出てくる心配あり

五輪が終わり、新型コロナの感染拡大に伴い緊急事態宣言が出されている中で、景気対策を求める声が大きくなっていくことが予想されます。

特に、年内に総選挙を控えている今年は、広く国民に嫌われている消費税を減税しようという政策を唱える政治家が増えてくることも予想されます。しかし、景気対策としての消費減税は無用な景気変動を4回も引き起こす愚策だ、と筆者は考えています。

冒頭に明言しておきますが、筆者は消費税というものを評価していません。理由は後述しますが、将来増税が必要になった時には消費税より他の税を増税すべきだと思っています。しかし、その筆者でさえも、景気対策として一時的に消費税を引き下げることは避けるべきだと考えています。効果が薄い割に弊害が大きいからです。

景気対策として消費減税は効果が薄い

景気が悪いので景気対策が必要だ、という発想自体は筆者も共有しています。しかし、景気が悪いのは人々に金がないからではなく、金があっても旅行や飲み会等に使えないからなのですから、広く浅く人々に恩恵が行き渡るような施策は景気への効果が薄いでしょう。

その意味では、消費税減税のみならず、10万円の一律配布にも筆者は反対ですが、10万円一律配布の方がまだマシかもしれません。消費税減税は、多く消費する人に多く減税されるわけですが、多く消費する人は相対的に余裕があるでしょうから「消費減税で懐が温かくなった分は、消費を増やすより老後のために蓄えておこう」と考える人も多いはずです。

一方で、一律10万円配布であれば、金がなくて消費ができずに困っている人にもしっかり10万円が渡ります。少なくともその分は老後のための貯金などではなく現在の消費に回るでしょうから、景気へのプラス効果が多少はあるからです。

なお、上記は景気対策としての効果を論じたものであり、そもそも貧富の格差はどれくらいの大きさが望ましいのかという観点には本稿では触れないこととします。その観点は、累進課税の税率をどうするかという議論の際に行えば良いことだと思っていますので。

景気対策としての消費減税は弊害も多い

過去の消費増税の際に、増税前の駆け込み消費で景気が良くなり、増税後に景気が大きく落ち込みました。増税すれば景気が悪くなるのは仕方ないのですが、その前に不必要な景気拡大があり、その分だけ反動減で景気の落ち込みが激しくなったわけです。

所得税増税等々であれば、そうした不必要な景気変動は発生せず、増税分だけ素直に消費が落ちて終わりでしょうから、消費増税の問題点は明らかです。

景気対策として一時的に消費税率を下げるということだと、結局消費税はなくならない上に、減税前後と増税前後の4回も無用な景気への悪影響が起きるわけです。

消費減税前には買い控えが起きて景気が一層悪化し、減税後には反動増で景気が一時的にかなり良くなるでしょう。反動増が一巡すると景気は現在より少し良い水準で落ち着くはずです。減税分だけ人々の懐が温かくなるからです。ただ、その恩恵は上記のように小さいと思いますが。

そして、減税の終了が近づくと、今度は従来の消費増税と同様に買い急ぎと買い控えという2回の不必要な景気変動が起きるわけです。

消費税は悪税だから廃止しよう(税率を下げよう)というのであれば、消費税を好かない筆者としてはやむを得ず賛成するかもしれませんが、一時的な減税には反対です。

そんなことに金を使うくらいなら、「飲食店等に多額の夜間休業補償をして、飲食店が進んで夜間休業を選択するように誘導する」とか「新型コロナの診療をしてくれた医療機関に巨額の報酬を払って多くの医療機関が争って新型コロナの患者を受け入れたがるようにする」ことに金を使うべきでしょう。

なお、以前は消費税率変更のためにレジの機械の総入れ替えが必要な店も多かったようで、無用なコストもかかっていたようです。さすがに最近ではレジ内のプログラムを変更するだけで良いはずで、レジの機械の入れ替えは必要ないと信じていますが。

増税するなら他の税で

以下は、なぜ筆者が消費税を好まないかという話です。将来増税が必要なら他の税を増税すべきで、消費増税は2度とすべきでない、と考えているわけです。具体的には相続税と固定資産税を増税すべきだと思いますが、その話は別の機会に。

財務省は、少子高齢化時代には現役世代だけではなく皆が税を負担すべきだから所得税等よりも消費税が好ましい、と考えているようですが、それには異論があります。

消費税が上がると消費者物価が上がります。高齢者に支払われている公的年金は原則として物価スライドですから、消費者物価が上がると年金支給額も上がります。

高齢者の多くは年金生活者でしょうから、消費税が上がっても、それほど困らないのです。結局、年金保険料を払っている現役世代だけが実質的に税等々を負担する構図は消費増税によっても変えられないのです。

財務省はもうひとつ、消費税は景気に影響されずに安定した税収が見込めるから良い税だとも考えているようですが、そちらの問題の方がさらに深刻です。

ビルトインスタビライザーという言葉があります。所得税には景気の自動安定化装置としての役割があるという意味です。所得税は累進課税なので、景気が落ち込んで所得が落ち込んだ時には納税額が大きく減るために、景気の落ち込みを和らげてくれるということなのです。

財務省は、所得税の持つ景気自動安定化装置の役割を無視して税収の安定性の話を消費税のメリットとしているわけですが、日本経済のことより税収が気になるのはセクショナリズムとしか言いようがありませんね(笑)。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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