「いい企画」や「企画力」なんて存在しない。ではその正体とは?
LIMO / 2021年8月25日 6時45分
「いい企画」や「企画力」なんて存在しない。ではその正体とは?
あたらしい「企画」の考え方
「企画職」に憧れていたけれど、いざ企画を考えようと思っても、何も思い浮かばない。やっぱり自分には才能もセンスもないんじゃないか……。そんな堂々巡りをしてしまうことはありませんか?
「企画」について悩みを抱えている人は、実は大きな誤解をしています。この記事では、拙著『企画――「いい企画」なんて存在しない』より、「いい企画」と「企画力」の正体を考えていきます。
「いい企画」なんて存在しない
「いい企画が思い付かない」と悩んだことはありませんか? ですが、そもそも「いい企画」というものは幻想に過ぎません。
一般的に、人々が「いい企画」と口にするときは、「高確率で当たりそうな企画」や「絶対にバズりそうな企画」のことを指しているのではないでしょうか。しかし、実際は企画の「当たる確率」と「バズるエネルギー」はトレードオフの関係にあります。
というのも、「バズる」という現象は、企画の尖った部分が「人の狭くて深い感情にブッスリとハマる」ことにより生まれるものだからです。一方で、尖っている部分は特殊なカタチですから、その形にカチッとハマる人が少なく、結果として誰の感情にも刺さらないリスクも併せ持っています〈別図版1参照〉。
当たる確率を高めようとするのであれば、企画の尖った部分を丸くして、より多くの人に「嫌われなく」することです。自分の好みに合わない「尖った部分」は邪魔ですよね。丸い企画は多くの人に受け入れられる確率は高まりますが、感情の深い部分に刺さることはなくなってしまいます。
企画は実際に世に出してみるまで、当たるかどうかはわかりません。外れる確率を下げることはできますが、百発百中で企画を当てる方法はありません。当たる企画を生むためには「いい企画ができない」と思い悩むのではなく、一つでも多く企画を世に出すことが大事です。一つの企画が誰かに刺さって拡散されたとき、結果としてその企画が「いい企画」と評価されるようになるのです。最初から「いい企画」はありません。
「企画力」も存在しない
「企画力を高めたいけど、どうすればいいかわからない」と悩んでいる方も少なくありません。ですが、自分の「企画力の低さ」を憂う必要はありません。そもそも「企画力」という単独のスキルは存在しないからです。
「企画」とは「システム」、すなわち企画を世に出し、実現させるうえで必要な機能のネットワークなのです。「企画力」は、次の5つに分解できます〈別図版2参照〉。
①インプット力
②結び付け力
③多産力
④巻き込み力
⑤やり切り力
ただしこれは、「企画力は単独のスキルではない」ということを示すために、わかりやすく5つに分類したにすぎません。「企画力」を高めようと考える際には、企画を実現するプロセスにおいて、「どんな機能・能力・習慣があれば実現できるのか」という視点で、この5つの力をたたき台にさらに細分化し、企画に対する思考の解像度を高めていただければと思います。
企画力を深掘りすると……
まず、「①インプット力」です。インプット力とは、知識や体験を頭に入れる力のことです。ゼロから企画は生まれません。過去の自分、今の自分の周りにあるすべてのことから創られます。たくさんの可能性から「道筋を決めていく」ので、たくさんの可能性があるほど有利です。
次に、「②結び付け力」です。無限にある選択肢から何かを組み合わせる力のことで、多くの方がこの部分に課題を覚えているかもしれません。最も有効な視点は、「人起点で結び付ける」ということです。たとえば「ビール」「イス」を単に結び付けるのではなく、「ビールを飲んでいる人の気持ち」と「イスに座る人の気持ち」と言ったように、人の感情を軸に「生活者視点で考える」のです。
続いて、「③多産力」です。成功する企画を生む最高かつ確実な方法は、とにかく「たくさんの企画を世に出す」ということです。前提として「企画なんて何が当たるかわからない」のです。実は「たくさんの企画を世に出している人」は本当に少数です。ですから多く世に出し続けるだけで、他の人と差がつきます。
次に、「④巻き込み力」です。自分の企画に協力してくれる仲間を増やす力のことで、企画力というネットワークには必要不可欠です。なぜなら、大半の企画は一人では実現できないからです。これはいわゆるコミュニケーション能力とは少し異なります。「巻き込む」とは「交渉」ではなく、「頼る」ということです。頼られて嫌な気持ちになる人はほとんどいません。思っていた以上に企画に協力してくれる時もあり、その時、相手はすでに「巻き込まれ」ているのです。
最後に、「⑤やり切り力」です。企画が実現するまで諦めずに粘り強く取り組む力のことであり、この力はとても重要です。なぜなら、企画の進行には障害がつきものだからです。企画を止めないために、「そもそも企画は実現しない」と認識しておきましょう。そうすることで、トラブルが起きても、どっしりと構えることができます。達観した視座で、とにかく「企画」というボールを「実現」というゴールまで無理矢理にでも運んでいく力が必要なのです。
悩むより先にやるべきこと
企画を実現しようとするとき、「いい企画が思いつかない」「企画力が低い」と悩む必要はありません。「いい企画」も「企画力」も、企画が世に出た末の結果論に過ぎないのです。
悩むより先に、一つでも多く企画を実現させていきましょう。
■ 高瀬敦也(たかせ・あつや)
コンテンツプロデューサー。原作企画者。株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。
フジテレビ在職中「逃走中」「ヌメロン」「有吉の夏休み」などを企画。ゲーム化もプロデュースした「逃走中」は累計100万本を達成。独立後は多分野でヒットコンテンツを企画。YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」の動画プロデュース・ Twitterでの「伯方の塩二代目声優オーディション」・日本酒「騨飛龍」のプロデュースなど、現在15社以上で顧問・アドバイザーを務める。「メンバー全員がコンテンツを創って世に出しまくる」ことを応援するオンラインサロン「コンテンツファクトリー2030」主宰。著書『人がうごく コンテンツのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)はベストセラー。
(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4295405493/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4295405493&linkCode=as2&tag=cmpubliscojp-22&linkId=2437cb89be6a9fd1ef6ce71839e8e40c)
高瀬氏の著書:
『企画――「いい企画」なんて存在しない(https://amzn.to/3ASlOnb)』
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