空飛ぶクルマに乗れるのはいつ?市場規模は160兆円?
LIMO / 2021年10月31日 11時45分
空飛ぶクルマに乗れるのはいつ?市場規模は160兆円?
2025年に開催される大阪・関西万博において空飛ぶクルマの活用を目指し、大阪府・大阪市・株式会社SkyDriveが「空飛ぶクルマの実現に向けた連携協定」を締結したという発表が2021年9月14日にありました。このように日本でも空飛ぶクルマのニュースが増え、実用に向かっていることを実感する機会が増えました。日常で空飛ぶクルマを利用できるようになるのはいつ頃でしょうか。そもそも空飛ぶクルマとは?どのように生活が変わるの?などの情報を織り交ぜて現状を紹介します。
物や人を運ぶ「ドローン」
大阪府・大阪市と連携協定を結んだSkyDriveという企業は、空飛ぶクルマを開発する2018年設立の日本の企業です。万博では空飛ぶクルマをタクシー代わりに利用することを目指しており、この構想が実現すると2025年に万博を訪れる方は空飛ぶクルマに乗って会場に移動するという体験ができるでしょう。
ところで、空飛ぶクルマとはどのようなものなのでしょうか。インターネットで検索した画像を見ると「クルマと違う」と感じるかもしれません。国土交通省が示した空飛ぶクルマをイメージするキーワードがあります。
国土交通省の空飛ぶクルマのイメージ
電動
自動操縦
垂直離着陸
「ヘリコプターのように垂直離着陸ができて、操縦士なしで飛行可能な電気で動く航空機」のようです。ドローンをご存じの方は「荷物や人を運べる大型のドローン」を、ご存じない方は「操縦席をなくして電気で動くようになったヘリコプター」を想像してください。「クルマ」と称しているのはクルマのように日常的に使えると理解してもらえるといいでしょう。
なお、このイメージの航空機をeVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)と呼ぶことがあります。eVTOLはイーブイトールと読まれることが多いようです。eVTOLの特徴として国土交通省では以下を挙げています。
eVTOLの特徴
電動のため騒音が小さい
電動化により部品数が少なく整備費用が安い
操縦士がいなくても飛行できるため運航費用を抑えられる
垂直離着陸できるため離着陸場所の自由度が高い
このようなeVTOLですが、海外では2010年前後から開発する企業が設立されており、トヨタ自動車も出資している米国のJoby Aviationなどは既に多額の出資を集めています。日本勢としては、上で紹介したSkyDriveの他にも、株式会社エアロネクスト、テトラ・アビエーション株式会社など複数のスタートアップが設立され開発に取り組んできていますし、最近では自動車メーカーである本田技研工業なども空飛ぶクルマを開発することを表明し、国内の開発も活況になりつつあります。
日常的になるまでのロードマップ
大阪・関西万博で空飛ぶクルマが活用されるのは分かりましたが、日常生活に浸透するのはいつ頃なのでしょうか。
経済産業省と国土交通省がとりまとめている「空の移動革命に向けた官民協議会」がロードマップを作っています。これによると、2023年には事業を開始し、その後2030年頃までに「物の移動」、「地方での人の移動」、「都市での人の移動」の順に事業領域を広げ、2030年以降は実用化の拡大フェーズに入るというのが目標になっています。年代ごとに詳しく見てみましょう。
飛行エリア
2023年:1~2か所(湾岸の限定エリア、離島など)
2025年頃:数か所(湾岸エリア、離島・過疎地、空港周辺など)
2020年代後半:10数か所(湾岸エリア、離島・過疎地、空港周辺など)
2030年代:全国各地(郊外から都市を含むエリア)
想定されるサービス
2023年:離島での荷物輸送、観光地遊覧飛行、エリアを限定した旅客輸送
2025年頃:山間部や都市での荷物輸送、空港から都市などへの旅客輸送、離島や過疎地での旅客輸送
2020年代後半:上記サービスの地域や距離拡大
2030年代:郊外と都市の間の人の輸送、救急搬送、寒冷地への輸送、自家用
対象地域の方は2030年頃までには、郊外から都市の交通拠点まで飛び、さらにそこから会社や商業施設まで飛んで移動できるようになりそうです。そして、どこに住んでいても利用できるようになるには2030年代となりそうです。
空飛ぶクルマへの期待と課題
空飛ぶクルマの普及により次のような生活の変化が生じるかもしれません。
空飛ぶクルマによる生活の変化
空港から都市への移動時間短縮
交通手段が増え都市部の電車などの混雑減少
人手不足の物流業界の負担軽減
山間部など不便な場所への物の運搬の負担軽減
離島や過疎地から病院へ救急搬送する時間の短縮
災害時の救援物資配布までの時間短縮
新しいレジャーの増加
また、国土交通省の「国土交通白書2020」によると、空飛ぶクルマの市場規模は2040年までに160兆円になるとされており、経済発展のために役立つことも期待できそうです。これまで航空機市場で日本は存在感を示すことができませんでしたが、空飛ぶクルマの開発では日本勢に頑張って欲しいですね。
更に、空飛ぶクルマを普及させる過程では、離着陸場所の整備、管制、サービス提供など、機体開発以外の新たな仕事も生まれるため、様々な業界で新たな雇用を生み出せる可能性もあります。
一方で課題も残っています。制度面では安全性の基準、離着陸場所や空域(どの高さを飛ぶか)の調整、技術面では人を乗せて長距離飛行するための電池の進化、自動操縦の高度化などが必要となります。また、制度や技術が充実しても、どのようにビジネスにするのかを解決しないと普及は難しいでしょう。
このように課題は残っていますが、利便性や経済の面で期待が持てる分野と考えられますので、肯定的に応援していきたいですね。
参考資料
経済産業省(空の移動革命に向けた官民協議会)(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/air_mobility/index.html)
経済産業省・国土交通省(2020年度実務者会合の検討状況について)(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/air_mobility/pdf/007_01_00.pdf)
国土交通省(空飛ぶクルマについて)(https://www.mlit.go.jp/common/001400794.pdf)
令和2年版 国土交通白書(https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r01/hakusho/r02/pdfindex.html)
大阪府(「空飛ぶクルマの実現に向けた実証実験」に対する補助金の交付を決定しました)(https://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42150)
大阪市(大阪府、大阪市と株式会社SkyDriveとの「空飛ぶクルマ」の実現に向けた連携協定を締結しました)(https://www.city.osaka.lg.jp/keizaisenryaku/page/0000544680.html)
株式会社SkyDrive(SkyDrive、大阪府・大阪市と「空飛ぶクルマ」実現に向けた連携協定を締結 ~次世代モビリティによる地域経済の活性化、防災機能の強化などを目指す~)(https://skydrive2020.com/archives/7012)
トヨタ(トヨタ自動車、空のモビリティの実現に向けて、Joby Aviationと電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発・生産で協業)(https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/31311579.html)
ホンダ(Hondaの新領域への取り組みについて)(https://www.honda.co.jp/news/2021/c210930b.html)
株式会社エアロネクスト(2017年4月設立)(https://aeronext.co.jp/)
テトラ・アビエーション株式会社(2018年1月設立)(https://www.tetra-aviation.com/)
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