社会に出てから困る読み書き能力の低さ。でも若者は意外と読書をしている!?
LIMO / 2021年11月12日 18時45分
社会に出てから困る読み書き能力の低さ。でも若者は意外と読書をしている!?
2020年度から小学校で、中学校は2021年度から新学習指導要領がスタート。来年度からは高校でも新しい学習指導要領が始まります。この新指導要綱に反映されている文部科学省の方針の一つが、思考力や表現力を伸ばすことです。
今は学校の授業で自分の考えや調べたことを発表する機会が増えており、小学校高学年では質疑応答もあるなどプレゼンテーションに似た内容になります。文章力や語彙(ごい)力、自分の考えをしっかりと伝えられることは社会に出てからも必要かつ重要なスキルですが、こうした能力を伸ばすのに役立つのが読書です。
読書は語彙を増やし、さまざまな表現を学べ、作者の意図を読み取る力なども向上させます。いつの時代も子どもや若者の活字離れが危惧されるものですが、高校生などを対象とした調査によると、現実はそこまで悲観的なものではないようです。ただし、詳しく見ていくと課題も見えてきます。
読書好きは意外と多い? ただし二極化も
日本財団が2020年に実施した、18歳意識調査「第30回–読む・書く–」では、意外にも「読書が好き」な割合は6割近いことが示されています。
調査対象は全国の17歳~19歳の男女1000人で、媒体は紙だけでなく電子書籍も含まれるなど時代を反映。ジャンルは雑誌を除く小説やノンフィクション、政治経済やテクノロジー、エッセイ、ライトノベルから漫画と多岐にわたっています。
この条件で「読書は好きか」という質問に対し、59.7%が「好き」と答えました。
通常の書籍だけだと約6割も「好き」とは答えなかったかもしれませんが、日本の漫画は単なる娯楽の範疇(はんちゅう)を超えて、学習要素の強い作品もあります。そのため、日本財団が漫画も対象に入れたことは妥当と言えるのではないでしょうか。
一方、読書が「嫌い」と答えた割合は12.8%と1割程度。巷で考えられているほど活字離れは進んでいないようですが、この結果を手放しで喜ぶことはできません。
というのは、月3冊以上の本を読んでいるグループでは「読書が好き」の割合は94.7%と極めて高い一方で、全く読まないグループで「好き」と答えているのは14.7%と日頃の読書量の違いによる差が鮮明になっているからです。
一概に活字離れと言っても、常日頃から読むグループとほとんど読まないグループがあるわけで、短絡的な言い方かもしれませんが、読書に関する態度が二極化していることがうかがえます。
新聞離れが進むが、読書好きは新聞も読んでいる!?
インターネットの発達で瞬時に情報が得られる時代となり、長年にわたり事件や社会問題、政治経済の動きなどを広く伝える役割を担ってきた紙の新聞を購読しない世帯が増えています。
筆者宅は新聞を取っていますが、近隣で新聞を購読しているのは一定の年代以上の世帯のみ。子どものいる世帯では新聞を取っている方が珍しいくらいです。特に、ここ数年は身近な保護者世代の新聞離れを感じていますが、18歳意識調査からもその傾向は顕著となっています。
2018年に行われた、18歳の意識調査「第2回 ー新聞ー」では、新聞を「読んでいる」が47.5%、「読んでいない」が52.5%。その2年後、2020年の「第30回–読む・書く–」の調査でも同様の設問がありましたが、「読んでいる」は32.7%、「読んでいない」が67.3%という結果になっています。
スマホで手軽にニュースを入手できるのは便利ですが、自分の好きなジャンルの情報に偏ってしまうというデメリットもあります。一方、紙の新聞では国内外や住んでいる地域の話題まで網羅的に情報を得られます。
そこから知識を増やすこともできるわけですが、新聞離れによってそうした機会が減りつつあるのかもしれません。
また、上記のように2020年の調査で新聞を読んでいるのは全体の3割強ですが、読書が「好き」「どちらでもない」「嫌い」のグループ別で見ると興味深い結果になっています。
以下は各グループごとの新聞を読んでいる割合です。このように、読書に対する意識によって明確な違いが見られます。
「好き」と回答したグループ:36.9%
「どちらでもない」と回答したグループ:30.2%
「嫌い」と回答したグループ:18.8%
また、「文章を書くことが好きかどうか」という質問でも同様の傾向が出ており、新聞を読む読まないだけではなく、文章を書くことに関しても読書習慣が大きな影響を与えているようです。
読み書きの力を底上げするのに読書は大切
学生時代だけでなく、社会に出てからも重要なスキルとなる読む力、書く力。本を読めさえすれば鍛えられるという単純なものではありませんが、やはり読書習慣がないと基礎を固めることも底上げすることも難しくなります。
しかも、短期間で結果が出るものではないというのも曲者です。社会人になってから取り組もうとしても、仕事で忙しいために後回しになりがちでしょう。
学習指導要領が新しくなり、学校教育でも読むことや書くことをより重視しています。もし「読むことも書くことも嫌い」と子どもが自覚しているのなら、本を読み、文章を書く機会を意図的に増やすなど、家庭でも地道な努力をすることが大切ではないでしょうか。
参考資料
18歳意識調査「第30回 –読む・書く–」詳細版(https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2020/10/wha_pro_eig_152.pdf)(日本財団)
18歳意識調査「第2回 ー新聞ー」詳細版(https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/01/new_pr_20181013_03.pdf)(日本財団)
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