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苦難が続く「就職氷河期世代」40代の賃金や貯蓄の現実と老後を考える

LIMO / 2022年1月31日 18時50分

苦難が続く「就職氷河期世代」40代の賃金や貯蓄の現実と老後を考える

苦難が続く「就職氷河期世代」40代の賃金や貯蓄の現実と老後を考える

バブル崩壊後の1990年代〜2000年代前半ごろに就職活動をした「就職氷河期世代」は、その後もさまざまな課題に直面していると言われます。

 2021年12月24日には人事院より「2021年度 国家公務員 中途採用者選考試験(就職氷河期世代)」の合格者が発表され、203人が合格しましたが、試験の申込者数は5302人で実質的な倍率は約26倍と各種メディアで報じられました。

今回は就職氷河期世代である40代にクローズアップして、現在の賃金や貯蓄・負債、また老後もあわせた現実を見ていきましょう。

大卒で「一時的な仕事に就いた者」の推移

就職氷河期世代は大学を卒業しても正社員になることができず、非正規雇用に就いた方も多くいました。

当時の状況の一つの参考として、文部科学省の「文部科学統計要覧(令和3年版)」より、大学卒業者のうち「一時的な仕事に就いた人」の推移を1990~2020年まで5年ごとに確認しましょう。

【大学】卒業者数/一時的な仕事に就いた者

1990(平成2)年:40万103人/3645人

1995(平成7)年:49万3277人/9280人

2000(平成12)年:53万8683人/2万2633人

2005(平成17)年:55万1016人/1万9507人

2010(平成22)年:54万1428人/1万9332人

2015(平成27)年:56万4035人/1万1730人

2020(令和2)年:57万3947人/8784人

就職氷河期世代の年齢の定義は多々ありますが、一般的には1993〜2005年頃と言われます。上記を見ると、2000(平成12)年には大学卒業者のうち、一時的な仕事に就いた者が2万人を超えています。

その後も2005年には2万人に近い水準です。2010年も2万人に近いですが、これはリーマンショックによる影響でしょう。

中には希望して一時的な仕事に就いた方もいると考えられますが、推移を見ると就職氷河期の影響が分かります。

就職氷河期が過ぎて雇用環境が好転しても、30代で一度も正社員になったことのない氷河期世代も珍しくありませんでした。転職で不利になり、非正規雇用のまま40代となった方もいるのです。

「40代の賃金」正規・非正規別にいくらか

それでは就職氷河期世代の方が多い40代に視点をあてて、厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」より現在の平均的な賃金※を見てみましょう。

※「賃金」とは6月分の所定内給与額のこと。「所定内給与額」とは労働契約等であらかじめ定められている支給条件、算定方法により6月分として支給された現金給与額(きまって支給する現金給与額)のうち、超過労働給与額(時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日出勤手当、宿日直手当、交替手当として支給される給与)を差し引いた額で、所得税等を控除する前の額のこと。

出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」

上記を見ると、40~44歳「正社員・正職員」の賃金は男性で36万7600円、女性で28万6500円。「正社員・正職員以外」では男性24万600円、女性19万6600円です。

45~49歳になると「正社員・正職員」の男性で39万6300円、女性で29万3900円。「正社員・正職員以外」では男性で24万5600円、女性で19万8500円です。

年齢階級別に見ると、「正社員・正職員」の男性は20代から賃金が上がり、55~59歳で43万5300円とピークを迎えます。一方で女性の場合もピークは55~59歳ですが、30万3600円と男性よりも約13万円少ない結果となりました。男女ともに正規雇用であれば、50代後半まで賃金が上がると思われます。

「正社員・正職員以外」でみると、男性のピークは60~64歳で26万6700円。その賃金は、25歳~70歳以上まで20万円台で推移しています。女性になるとピークは35~39歳で20万600円。それ以外はすべての年代で10万円台後半です。

非正規雇用の場合は年齢とともに賃金が上がるものの、ピークを正社員と比べると男性で約17万円、女性で約10万円低い結果となりました。賃金の上昇も緩やかで、特に女性は他に比べて低水準であることが分かります。

40代の貯蓄・負債残高はいくらか

一般的に40代といえばお子さんの教育費の負担が増え、住宅ローンを支払う方も多い世代です。2021年5月に総務省から開示された「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2020年(令和2年)平均結果-(二人以上の世帯)」より、現代の40代・二人以上世帯の貯蓄と負債をみていきましょう。

出典:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2020年(令和2年)平均結果―(二人以上の世帯)」「Ⅲ 世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況」

上記を確認すると40代の貯蓄現在高は1081万円、負債現在高は1231万円と負債のほうが大きい結果となりました。負債保有世帯の割合を年齢階級別にみると、最も高いのが40代で66.6%です。

40代は貯蓄よりも負債が多く、住宅ローンなどの返済に追われている方が多いと分かります。

老後資金も自助努力が必要か

就職氷河期世代の就職や賃金、家計状況を見てきましたが、正社員であれば今後も賃金の上昇は見込めるでしょう。

一方で非正規であれば、賃金は上がるものの正社員ほどの水準は望めない場合が多くなります。同時に、40代になれば今から考えたいのが老後資金です。

年金のみでは老後生活できないといわれる現代、それは就職氷河期世代も同じです。非正規雇用で厚生年金に加入できる場合もありますが、厚生年金は現役時代におさめた保険料で将来の受給額が決まります。

厚生年金への加入月数が少ない、また収入が少なくおさめた保険料が少なければ、老後の年金にも響きます。参考までに厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、国民年金と厚生年金の平均額を見てみましょう。

【国民年金】平均年金月額

全体:5万6252円

男性:5万9040円

女性:5万4112円

【厚生年金】平均年金月額

全体:14万4366円

男性:16万4742円

女性:10万3808円

※厚生年金保険(第1号)の平均年金月額には基礎年金月額が含まれます

国民年金の平均は男女ともに5万円台。厚生年金の平均は男性16万円台、女性10万円台ですが、分布を見て分かる通り男女差・個人差が大きく見られます。

男性のボリュームゾーンは15~20万円、女性のボリュームゾーンは5~10万円。しかし加入月数や収入が少なければ、これよりも年金額が少ないと想定されます。男性はもちろん、女性も収入や年金が少ないケースが多いため、年金以外での備えは必要でしょう。

2022年1月21日には厚生労働省が令和4年度の年金額を0.4%引き下げると公表しました。少子高齢化が進む今、将来年金の受給額が減ることも考えられます。

就職氷河期世代が老後を迎えるまであと約20年。今後政府がどのような政策をとるかわかりませんが、この期間をかけて、老後のために今から私的年金や貯蓄などで自助努力をする必要があるでしょう。

参考資料

人事院「2021年度 国家公務員 中途採用者選考試験(就職氷河期世代)」(https://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/senkou/hyougaki.html)

文部科学省「文部科学統計要覧(令和3年版)」(https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/002b/1417059_00006.htm)

厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html)

総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2020年(令和2年)平均結果―(二人以上の世帯)」(https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html)

厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(https://www.mhlw.go.jp/content/000872907.pdf)

厚生労働省「令和4年度の年金額改定についてお知らせします」(https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/000725140.pdf)

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