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景気と長期・短期金利の関係とは。長期金利が景気の自動安定化装置に

LIMO / 2022年2月10日 19時35分

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景気と長期・短期金利の関係とは。長期金利が景気の自動安定化装置に

景気が回復すると、長期金利が短期金利より先に上がり、景気の自動安定化装置の役割を果たすこともあります(経済評論家 塚崎公義)

日本では、長期金利が0.2%に上昇したなどと騒がれていますが、米国では長期金利が2%近辺まで上昇し、株式市場がこれを嫌って下落するなど、長期金利の話題を耳にするようになりました。そこで本稿でも、長期金利について考えてみることにしましょう。

短期金利を決めているのは中央銀行

金利は、一般の財と同様に、市場における需要と供給で決まります。借りたい銀行の借りたい金額と、貸したい銀行の貸したい金額が一致する所で金利が決まるわけです。

しかし、短期金利は、日銀などの中央銀行がコントロールしています。金利を上げたければ市場から金を借り、金利を下げたければ市場に金を貸すことで、需要と供給の一致する金利の水準をコントロールしているのです。

実際には貸し借りよりも国債の売買によって市場との間の資金のやり取りをしていますが、同じことです。

日銀は、景気が悪くなれば金利を引き下げ(金融を緩和し)、景気が回復すれば戻し(金融政策を中立に戻し)、景気が過熱してインフレが心配になれば引き上げる(金融を引き締める)、といった操作をするわけです。

景気が過熱しなくても、インフレ懸念が出れば金融を引き締めて景気を悪化させてインフレを抑える場合があります。

景気の予想で長期金利が変動

長期金利は、短期金利の予想で決まります。以下では期間10年の銀行間の貸し借りの金利について考えましょう。「10年間、AはBに金を貸す。金利は10年間の固定金利(金利が途中で変わらない)とする」という契約です。

人々が短期金利が上がっていくと思うときには、Bは長期金利で借金をしようと考えます。今後10年間短期金利での借入を繰り返すよりも長期金利で借りた方が得だからです。

しかし、Aは長期金利で金を貸すよりも短期金利の貸し出しを繰り返した方が得なので、長期金利での貸し出しを渋ります。そこでBは「多少高い金利を払っても良いから貸して欲しい」と申し入れるわけです。

両者が合意するのは、予想される今後10年間の短期金利の平均となるはずですね。もっとも実際には、銀行等の貸したい金額と借りたい金額の比率に影響されるので、若干の乖離は生じ得ます。

通常は長期金利の方が予想の平均より少し高い場合が多いようですが、現在のように超金融緩和の時期だと長期金利の方が低い場合が多いようです。日銀が大量の長期資金を貸し出している(実際には長期国債を大量に購入している)からですね。

長期金利が景気に影響・・・自動安定化装置

「今後、景気が過熱してインフレが来そうだ」と考えると、人々は中央銀行による金融の引き締め(=短期金利の上昇)を予想しますから、銀行間で貸し借りされる際の長期金利が上がります。

銀行は、銀行間金利にコストと利鞘を上乗せして貸し出しを行ないますから、長期金利での貸出金利も上がります。

企業が設備投資をする際には長期金利で借入をする場合が多いので、長期金利が上昇すると設備投資が減少し、景気が抑制されます。

景気が過熱しかかったり石油価格が高騰したりしてインフレが懸念されると、中央銀行が金融を引き締めるわけです。ただ実際には中央銀行が動く前に市場で長期金利が上昇して景気を抑制するので、長期金利が景気の自動安定化装置として機能しているわけですね。

もっとも、景気回復初期に中央銀行が金融緩和をやめて中立に戻ろうかと考えている時には、長期金利が先に上がって景気の回復を妨げてしまう可能性もありそうです。今の米国では、景気を抑えるというよりも株価を押し下げてしまっていますが。

実際の長期金利は美人投票的な側面も

先に銀行間の貸し借りと記しましたが、長期金利での貸し借りが実際に銀行間で行われる事は稀で、長期金利で貸したい銀行が長期国債を購入し、長期金利で借りたい銀行が長期国債を売却することによって、長期金利での貸し借りが行われたのと同じ結果となるわけです。

その時の国債の売買は、すでに発行されて今後の利払い額が決まっている国債を売買するわけですが、国債の値段が変化することで金利が変化するのです。

金利3%の国債を100円分持っていると、10年で30円の金利がもらえます。銀行間で金利が上昇し、4%になったとします。国債の金利は変わりませんが、値段が90円に下がるのです。

90円で国債を買った銀行は、10年間で30円の金利を受け取った上に、90円で買った国債が100円で償還されて10円儲かるので、40円の金利を受け取ったのと同じ事になるからです。実際の計算はもう少し複雑ですが。

つまり、国債自体の金利は決まっていて、長期金利が上がると市場で取引される国債の値段が下がり、長期金利が下がると国債の値段が上がるのです。

そうなると、10年間金を貸したい人だけが国債を買うのではなく、投機家も国債を売り買いするかも知れません。長期金利が下がると思えば、つまり国債の値段が上がると思えば、今日国債を買って、明日売れば良いわけですから。

そうなると、人々が長期金利を予想して活発に国債を売買するようになります。短期的に国債の売買で儲けようと思えば、今後10年間の短期金利を予想するよりも、「明日は人々は長期金利についてどう考えているだろう。国債の買い注文と売り注文のどちらが多いだろう」という事を考える方が儲かる、ということになります。ケインズが株式に関して美人投票だと言ったのが、長期金利にも当てはまり得るわけです。

なお、実際に10年間の貸し借りという長期の取引をするならば、実際の10年間の短期金利を予想する必要があるので、美人投票とは関係ありません。その点も、株の長期投資が美人投票と関係ない、というのと同じですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから>>(https://limo.media/list/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)

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