【改正雇用保険法】65歳以上で雇用保険に加入できる条件をチェック
LIMO / 2022年2月23日 17時50分
【改正雇用保険法】65歳以上で雇用保険に加入できる条件をチェック
2022年1月から改正雇用保険法が施行されました。
これまでの制度では、65歳以上で一事業者につき一週間に20時間以上・31日以上雇用される場合のみ雇用保険の加入条件を満たしていました。A社10時間・B社10時間といった働き方では雇用保険が適用されなかったのです。
では改正雇用保険法で変更された内容はどういったものでしょうか。今回の記事で詳しく解説します。
雇用保険とは
雇用保険は労働者の生活・雇用の安定・能力向上・就職促進などを目的として制定された強制保険制度です。
政府が管掌する強制保険制度なので、労働者を雇用する事業所は雇用保険に加入させる義務があります。労働者からすると「気づいたら加入していた」という感覚です。
雇用保険と聞くと失業手当を思い浮かべる方も多いと思いますが、実際にはさまざまな給付の種類があります。大きく4つに分けてご紹介します。
求職者給付
失業状態および雇用の継続が困難な場合に給付される。基本手当・技能習得手当・寄宿手当・傷病手当・高年齢求職者給付金・特例一時金・日雇労働求職者給付金が該当する。
就職促進給付
早期の再就職を促進することを目的とした手当。就業促進手当・再就職手当・移転費・求職活動支援費等が該当する。
教育訓練給付
働く方の主体的な能力開発や中長期的なキャリア形成を図り雇用の安定を促す手当。教育訓練に支払った費用の一部を「教育訓練支援給付金」として支給する。
雇用継続給付
雇用の継続を促進・援助する目的で支給される。高年齢雇用継続給付・介護休業給付等が該当する。
高齢者が雇用保険に加入する際、これまでは一事業所の労働時間が一週間で20時間を超える場合のみ適用されていましたが、制度改正により加入条件が緩和されました。
65歳以上で雇用保険に加入できる条件
改正雇用保険法では、以下の条件を満たす65歳以上の兼業・副業者が雇用保険に加入できるようになりました。
2つ以上の事業所で雇用されていること
それぞれの事業所で一週間に働く時間が20時間未満であること
複数の事業所で働いた時間(1事業所につき5時間)の合計が20時間以上であること
つまりA社で10時間・B社で10時間働く場合、どちらか一方もしくは両方の事業所で雇用保険に加入できるようになったのです。
このように条件を満たした高齢者が特例で雇用保険に加入できる制度を「雇用保険マルチジョブホルダー制度」といいます。
雇用保険に複数加入した状態で一方を失業した時は、該当する事業所の賃金に応じた金額が算出・給付されます。
なお同時に複数の事業所を辞める際、退職理由がそれぞれ異なる場合は、給付制限がかからない事業所から一本化して給付されます。
高齢者が加入するメリットとしては、やはり豊富な種類の給付を受けられる点でしょう。再就職支援だけでなく配偶者が介護状態になった時に介護給付も受けられるので、生活の助けになります。一方、教育訓練給付など年齢制限で支給されないものもあるので注意して下さい。
雇用保険法改正の背景
少子高齢化の影響で労働人口の減少が課題となる一方、65歳以上の労働者数は増加しています。公的年金の繰り下げによって、シニア層の働く時間が増加したことも一つの要因です。
こうした動向を踏まえ、高齢者の活躍を促進する目的で法改正が行われました。過去にも高年齢者雇用安定法が改正され、事業者側に70歳までの就業機会の確保を要請しています。
高齢者を取り巻く労働環境を整備する動きは年々高まっているのです。
自動的に雇用保険加入とならない点に注意
条件に該当する高齢者は、雇用保険加入の旨を直接事業所に申し出る必要があります。これまでのように労働者の意思に関係なく自動的に加入とならないので注意しましょう。
また事業主はこの件を申し出た労働者に対し、解雇や不利益な取り扱いをしてはならないとされています。
雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請方法
雇用保険マルチジョブホルダー制度の手続き方法は以下の手順で行います。
1.近くのハローワークまたは厚生労働省HPから「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」(マルチ雇入届)、個人番号登録・変更届、被保険者資格取得時アンケートの3点を入手。
2.加入を希望する事業所分のマルチ雇入届の、申出人記載事項に記入をする。
3.事業所ごとにマルチ雇入届の記入と確認資料の交付を依頼する。
4.事業主がマルチ雇入届を記載したら、申出人の住居所を管轄するハローワークに以下の書類を提出する(郵送可)
事業主から交付されたマルチ雇⼊届と確認資料(事業所数分)
個人番号登録・変更届
被保険者資格取得時アンケート
本人確認資料と個⼈番号の確認できる資料
一般的な雇用保険とは異なり、申請書類は自ら用意し事業主に必要事項を記入してもらう必要があります。
65歳以上が兼業・副業しやすい環境に
高齢者の労働環境が改善されることで、より柔軟な働き方が可能となります。まさに雇用保険ジョブホルダー制度は働きたい高齢者にとって心強い制度といえるでしょう。各種給付を受けられる環境は大きな安心感につながると思います。
もし条件に該当する方でまだ事業主に申し出ていない場合は、なるべく早めに加入の旨を伝えるとよいでしょう。
参考資料
厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)の概要」(https://www.mhlw.go.jp/content/000641087.pdf)
厚生労働省「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案概要(高年齢被保険者の特例)」(https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000794806.pdf)
厚生労働省「求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000172770.pdf)
厚生労働省「【重要】雇用保険マルチジョブホルダー制度について ~ 令和4年1月1日から65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します~」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000136389_00001.html)
厚生労働省「雇⽤保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838543.pdf)
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