【私立中学校に通う生徒】世帯年収のボリュームゾーンから見える現実とは
LIMO / 2022年7月27日 17時50分
【私立中学校に通う生徒】世帯年収のボリュームゾーンから見える現実とは
今年もあっという間に夏休みの季節がやってきました。受験生にとっては大切な時期であることはもちろんのこと、中学受験を考えている家庭では講習会に参加して「子どもに適した塾探し」をする絶好の機会でもあります。
円安や物価高など経済情勢が先行き不透明感のなかでも、大都市圏を中心に中学受験熱は冷めるところを知りません。コロナ禍での臨時休校を契機に、オンライン授業などの対応が早く手厚いサポートが期待できる私立中学の人気が高まっています。
しかし、私立中学に通うには高所得層ではないと厳しいという考えが一般的です。今回は、子供の教育の中でも気になる私立中学に通学している子の世帯年収別の割合をご紹介していきます。
魅力的な学校の教育方針に潜む教育費
魅力的な教育方針を掲げる私立中学。子どものいる家庭であれば「通わせてみたい」と考えるのは当然ですが、やはり大きな壁となるのが教育費です。
人気のある私立中学は志願者が殺到し、そこから合格を勝ち取るには学力が必要となります。
全員が希望する中学に合格するとは限らない中学受験ですが、「合格」を引き寄せるには塾通いが常識になっています。
文部科学省が発表した「平成30年度子供の学習費調査」の「世帯の年間収入段階別、項目別経費の構成比」によると、私立中学校に通う生徒の世帯年収の割合は以下の通りです。
400万円未満:3.9%
400万円~599万円:7.2%
600万円~799万円:16.8%
800万円~999万円:19.8%
1000万円~1199万円:16.8%
1200万円以上:35.5%
800万円以上が72.1%、さらに1000万円以上の世帯は52.3%と過半数を占めています。そして、私立中学に通う子のボリュームゾーンは世帯年収1200万円以上になっています。
中学受験に臨むための通塾代、そしていざ通い始めてみて必要となる入学金や授業料、通学での交通費や学校によっては施設費も発生します。
私立中学を目指すとなると経済力があった方が断然有利だということは、上記のデータからも明らかです。
奨学金や学費補助制度もあるが
私立中は公立中とは異なり、学校ごとに教育方針やカリキュラムを設定しそれに賛同する家庭の子ども達が受験をし、無事合格したら通うという流れがあります。
首都圏では有名私立大学の附属中や男女の御三家のような伝統校だけでなく、グローバル教育や他の学校にはないカリキュラムを前面に出した勢いのある私立中もあります。
「我が子により良い教育環境を」と願う教育熱の高い家庭を中心に中学受験は加熱しています。
一方、公立学校では文部科学省が決めた授業時間数を行い、自治体の教育委員会が定めた教科書が使われます。
私立中学は文部科学省の方針に大きく逸脱することはありませんが、先取り授業も珍しくありません。
子どもの良さを伸ばしたい、同じ目標を持った同級生たちと切磋琢磨させたいと思っても経済的な問題をクリアしないと通学は難しいものがあります。
しかし、文部科学省のデータからもわかるとおり、世帯年収が600万円未満の世帯も10%以上います。
特待生制度や奨学金や学費費助成制度を充実させている中学校も増え、こうした制度を活用すれば私立中学に通学することも夢ではありません。
しかし、学費無料といった資格を得るには学力が高いことが前提であることがほとんどです。熾烈な中学受験を勝ち抜いた中で成績上位となるには、ノー塾の場合は天才的な能力がないと条件をクリアすることは難しい面があります。
課金ゲームでも持ちこたえられる経済力
中学受験は課金ゲームと揶揄されることが多々あります。一口に塾といっても様々なタイプの塾がありますが、中学受験に強い塾で低価格路線の塾はほぼありません。
受験学年になると季節講習会も長時間に及び、志望校特訓も加わり受講費も高額になります。
通塾が常識と化し受験前に高額の教育費を捻出し、入学後も様々な学費がかかる。学校によっては海外研修もあります。公立学校では経験できない教育体験は魅力的ですが、やはりお金はかかります。
教育費を抑えて私立中学を目指すのであれば、通信教材を活用し定期的に模試で立ち位置を確認し、受験を突破したら特待生になれるよう努力を重ねる。子ども本人の意志の強さが求められます。
いざ通っても、通学に伴う交通費や自主的に入部を決める部活動に関わる費用までは補助されることはなく、いくら特待生であっても全くお金がかからないわけではありません。
やはり中学受験を経て私立中学に入学するには、教育費を支払えるだけの経済力がないと持ちこたえることは難しいです。
また、受験をして私立中学に入学する子の多くは大学進学を視野に入れています。小学生の頃から受験のために教育費を出せるのは、経済的な余裕がないとゴーサインは出せません。世帯年収1200万円以上がボリュームゾーンというのも頷けます。
ゴールを見定めるのも大切
周囲で中学受験をする子が多いと「うちの子も」と流れてしまうことがあります。しかし、中学受験でかかる教育費をしっかり把握し、家計的に大丈夫かどうかを検討したうえで挑戦することが大切です。
また、私立中ではなく公立中高一貫校や国立大学附属中を受験する子ども達も、完全ノー塾で挑戦する子はやはり少数派です。
背伸びをして中学受験して小学生の頃から教育費の工面に苦労するよりは、大学進学に備える方が現実的な選択といえるでしょう。
参考資料
文部科学省「子供の学習費調査 / 平成30年度 子供の学習費調査 5 世帯の年間収入段階別,項目別経費の構成比」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=dataset&toukei=00400201&tstat=000001012023&cycle=0&tclass1=000001135827&tclass2=000001135828&tclass3=000001135833&stat_infid=000031894274&tclass4val=0)
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