アジア経済の力強い成長は2018年も継続
LIMO / 2018年1月13日 21時20分
アジア経済の力強い成長は2018年も継続
中国、インド、アセアン5カ国の見通しは?
2017年、世界経済は米国やアジアでの成長がけん引役となり順調に成長したと言えます。そして、注目すべきは、世界の約75%の国々で経済成長が加速したことで、それだけ経済成長が広がりを見せたことです。ちなみに、この割合は2010年以降で最も高い数字です。
米国やアジアが成長したことは言うまでもありませんが、ユーロ圏では、失業率がしばらく高止まりしていた国々でも経済成長がプラスに転じ、雇用状況も改善しました。新興市場でもアルゼンチンやブラジル、ロシアといった経済規模の相対的に大きな国が不況を脱しました。
経済成長が続くアジア経済
アジア経済に関しては、2017年も力強い成長が続いたと言えるでしょう。アジアの2017年の成長率は5.6%程度に達した模様で、2018年には5.5%の成長が見込まれています。
2017年も継続して多額の資本がアジアに流入してきたことに加え、世界経済の拡大に伴って、経済成長率を上回る貿易量の増加が見られたことが、アジア各国には恩恵となりました。
また、商品価格の低位安定とアジア各国の通貨高により、インフレ率が過去に例を見ないほど安定的に推移したことも消費を拡大させ、経済成長の一要因となりました。
中国
国別には、ややばらつきはあります。アジア地域最大の経済国である中国は、2016年の不安定な状況から回復して、2017年に6.8%成長し、2018年も6.5%程度の成長率が期待できる状況です。主な要因は政策発動の効果もありますが、活発なインフラ投資と、潜在的な需要はまだまだ大きい不動産セクターの回復があります。
ただ、負債比率の高さの解消と投資への依存度を減らしてなお成長を実現できるか、すなわち内需主導型の経済への移行という長期的な課題には、まだまだ道のりは遠いと言えます。
インド
インドの成長率は、2016年11月に実施された高額通貨廃止政策による一時的な混乱と、先頃導入されたGST(物品サービス税)の影響によって2017年は鈍化しました。
以前のコラムでも触れましたが、インドでは、州ごとに適用税率や税手続きが異なっていたことから、国内であっても州をまたがった取引や納税の手続きは煩雑で、商取引や物流の阻害要因となっていました。そのため、この新税導入を契機にインド国内市場の一元化を進めることで、インドの生産性改善が進展すると期待されています。
足元では政策の浸透に時間がかかり、政策のマイナスの作用が出てしまっていますが、その効果は来年度以降にプラスに作用してくると予想されます。2017年の成長率は最近の減速を反映して下方修正されましたが、こうした一時的な要因が収束することで、中期的には成長が加速すると予想されます。
アセアン5カ国
インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、シンガポールのアセアン5カ国は、2017年と2018年はともに4.9%の成長が予想されます。主な要因は、地域内投資の増加が継続していることと、米国をはじめ中国や日本を含む主要貿易相手先の経済が良好であるため輸出の増加が期待できることで、これにけん引されて成長が継続する見込みです。
2018年のリスクと課題
アジア地域が全体として順調に経済成長を続ける中、上述の見通しに対するリスクとしては、中国での急速な債務残高の積み上がり、(現時点では顕在化はしませんでしたが)世界的な保護貿易主義の高まり、東アジアでの地政学的緊張が考えられます。
中国の債務残高の大きさは、かねて指摘されていることですが、2016年からの景気刺激的な政策により、この解消は課題としては認識されながらも進展はしませんでした。財政政策を含む景気刺激策は、持続可能な政策とは言えません。また、アジア経済はグローバル・バリューチェーンへ統合され、それが効果的に機能してこそ恩恵が大きいのです。
結局トランプ政権が誕生して保護貿易主義的な主張は注目されましたが、保護貿易主義に傾くことはなく、2017年は杞憂に終わったと言えます。しかし、世界的に内向きの政策へのシフトが起これば、アジアの輸出を抑制し、直接投資を減らすという影響を及ぼす可能性は残ります。
そして、日本はその渦中にあるとも言えますが、高まる東アジアの地政学リスクも地域の中期的成長見通しにマイナス影響を及ぼす可能性があります。 2018年は、こうした点に注意しておく必要はあるでしょう。
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