合格後に待っている家計の負担〜国立大学の授業料も安くない!?
LIMO / 2018年1月23日 20時20分
合格後に待っている家計の負担〜国立大学の授業料も安くない!?
私立は国立の授業料値上げを待ち望んでいる?
いよいよ大学受験は最後のヤマ場へ
先日の大学入試センター試験も無事に終了し、大学受験はこれから最後のヤマ場を迎えます。まずは、1月下旬から私立大学の入試が本格化し、その後の国公立大学の入試本格化へと続きます。
受験生の皆さん、最後の力を振り絞って頑張ってください。サクラ咲く春はもうすぐです。
さて、現実問題として、おめでたい合格後に待ち受けるのが授業料などの経済的負担です。特に初年度は入学金や施設設備費などの費用に加え、私立大学では寄付金の納付もあります。
では、昨今における大学の授業料はどうなっているのでしょうか。
私立大学の平均授業料は過去最高を更新
文科省が昨年末に発表した調査によれば、2015年度入学の私立大学の平均授業料は87万7,735円(対前年比+1.1%)となり、5年連続の増加で過去最高を更新しました。
また、入学金25万3,461円や施設設備費18万5,620円、その他諸費用を合わせた初年度納付総額は平均144万3,967円でした。これに、一応は“任意”という表向きがある寄付金を加えると、さらに数十万円は増えると考えられます。
受験勉強に打ち込んできた新入生が支払える金額でないことは明らかであり、親(家計)の経済負担が相当に大きくなることは避けられません。
上昇基調が続く私立大学と国立大学の授業料の推移
ここで、初年度特有の費用がなくなった後の年間授業料(平均額)だけを見てみましょう。私立大学は前掲したように87万7千円ですが、国立大学は前年と変わらずの53万5千円でした。
ちなみに、授業料の推移を見てみると以下のようになります。それぞれ年度の後の左側が私立大学、右側が国立大学です(参考:国公私立大学の授業料等の推移(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/__icsFiles/afieldfile/2015/12/25/1365662_03.pdf#search='%E5%A4%A7%E5%AD%A6+%E6%8E%88%E6%A5%AD%E6%96%99+%E9%81%8E%E5%8E%BB%E6%9C%80%E9%AB%98'))。
1975年度:18万2千円、 3万6千円
1980年度:35万5千円、18万0千円
1985年度:47万5千円、25万2千円
1990年度:61万5千円、33万9千円
1995年度:72万8千円、44万7千円
2000年度:78万9千円、47万8千円
2005年度:83万0千円、53万5千円
2010年度:85万8千円、53万5千円
2015年度:87万7千円、53万5千円
物価変動率などを考慮する必要があるので、40年前や30年前と単純比較するのは適切ではありませんが、授業料が総じて上昇基調にあることは確かでしょう。
かつてのような“格安感”が消失した国立大学の授業料
まず注目したいのが国立大学の授業料です。さすがに私立大学より安いものの、一昔前のような“格安感”はなくなりました。これは、国の財政難を受けて財務省(以前は大蔵省)が値上げに踏み切ったと言われていますが、単純な上昇率だけを見れば、私立大学を上回っています。
国立大学に入れば経済的負担が小さいというのは、現在では私立大学との比較相対的な話のようです。
国立大学の授業料は2005年度から11年間据え置き
国立大学でもう一つ注目したいのが、近年の授業料が据え置きになっていることです。
2005年度から国立大学法人化制度が始まり、各国立大学が、国の定める標準額を基準にして自由に決定することができるようになりました。したがって、現在の53万5千円は国が定めた標準額なのですが、実際にはほとんどの国立大学がこの標準額を授業料にしているようです。
私立大学は国立大学の授業料値上げを待ち望む?
また、国立大学の授業料据え置きは、私立大学にも少なからず影響を与えていると見られます。
2005年度に始まった国立大学法人化まで、国立大学の授業料値上げは“国私間の格差縮小”となって、私立大学側に追い風だったと考えられます。
しかし、その2005年度以降は、私立大学の値上げペースもかなり緩やかになりました。少子化等で厳しい経営環境が続く中(参考:『深刻さ増す私立大経営〜4年制の約4割、短大の約6割が“営業赤字”(http://www.toushin-1.jp/articles/-/4953)』)、“本当はもっと値上げしたいけど、あまり値上げできない”という苦悩を見て取ることができます。
国立大学の授業料据え置きが私立大学の経営を圧迫している一因となっており、私立大学は国立大学の授業料値上げを待ち望んでいると見るのは、うがった見方でしょうか?
授業料を値上げしても解消されない経営難
実際、国立大学の授業料がこのまま据え置きになる確証はありません。財務省と文科省の判断一つで再び値上げになる可能性は十分あるでしょう。
しかし、その時は、私立大学の授業料値上げとなって、最終的には家計への負担増に結びつくのではないでしょうか。その場合、少子化の影響に加えて、大学進学者の減少が加速する可能性もあります。授業料を上げるのも地獄、下げる(上げられない)も地獄なのかもしれません。
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