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資金繰りが劇的に変わる!? 中小企業の新しい資金調達法とは

LIMO / 2018年6月8日 10時20分

資金繰りが劇的に変わる!? 中小企業の新しい資金調達法とは

資金繰りが劇的に変わる!? 中小企業の新しい資金調達法とは

最新フィンテックを駆使した資金調達〜金融の未来と働き方(9)

フィンテックという金融業界の大きな潮流が、さまざまな変化を引き起こしています。今回は、スモールビジネス(中小企業)の社長や経理部長にとって、未来の資金調達がどうなっていくかを考えてみたいと思います。

「石の上にも3年」という昔ながらの銀行実務

長年、金融コンサルティングの仕事に携わってきた経験上、一般に銀行業界では「石の上にも3年」という不文律があると感じています。

会社設立後、しばらくして銀行で借入れを相談しますと、必ず銀行員に「まず3年はビジネスを頑張って…」などと言われます。この「3年」というのが実に不思議なもので、途上国でも先進国でも等しく「3年」なのです。

結果、スモールビジネスは、会社設立後3年間は自己資金やインフォーマルな金融(親族・友人からの借入など)に頼るほかありませんでした。

フィンテックを駆使した貸出事業者の出現

最近、世界では銀行ローン以外の選択肢としてフィンテックを駆使したオンライン上の金融サービスが台頭しています。

たとえば、オンライン貸出業者(含むP2Pレンダー)、インボイスファイナンス業者(売掛金担保融資)、バランスシート貸出業者です。また、融資の形態以外では寄付・購入・出資を募るクラウドファンディング事業者も増えています。

オンライン貸出業者の代表例は米国のLendingClub(https://www.lendingclub.com)です。

ビジネスローンは、融資額5,000ドルから30万ドル、固定金利、期間1年〜5年。融資額10万ドルまで無担保ですが、10万ドル超は有担保(ビジネス資産に対する根抵当)。融資手続き所要日数は通常7営業日、金利(年)は9.77%〜35.71%です(出所:LendingClubウェブサイト)。

銀行ではまだ借入れが難しく、親族・友人などにも頼れないスモールビジネスにとってはありがたい存在です。

一方、オンライン上のインボイスファイナンスの事例としては米国のkickpay(https://kickpay.com)があります。同社はオンライン上で売掛金を担保とする融資を行っています。

その他、まだ主流ではありませんが、米国PayPal Working Capitalなどに代表されるバランスシート貸出業者という業態も出現しています。

今後、これらのオンライン上の業者からの資金調達は、スモールビジネスにとって代替的な選択肢となり得るでしょう。

ただし、まだ根本的な課題が残っています。つまり、与信審査ではクレジットスコアリング以外に、ビッグデータ分析を活用した返済行動の将来予測も試みられていますが、まだ審査アルゴリズムの検証が不十分な状態です。

実際、ある有名なオンライン貸出業者では、融資申込件数の約9割が審査で却下されているようです。

資金繰りという古典的な経営課題に対処するクラウド型ソリューション

では、スモールビジネス、特に会社設立後3年以内の企業で、資金調達面を根本的に改善するにはどうしたらよいでしょうか。

一般に設立3年以内の企業の倒産率は高いと言われますが、その直接的な原因はすべて「資金ショート」ですので、まず、それを避けられるような仕組みが必要です。

一方、銀行や新興オンライン貸出業者は、スモールビジネス内部のキャッシュの動きをタイムリーかつ正確に掴めれば、融資しやすくなるのではないでしょうか。

そこで、一つのヒントを与えてくれるのが、たとえば、Xero(https://www.xero.com/my/)というクラウド型会計サービスや、CaFE(https://www.cashflowcafe.co.uk/)というスモールビジネス向けクラウド型資金管理業務分析支援サービス、さらに資金管理・与信管理情報をベースに融資仲介サービスをクラウド環境で提供する金融プラットフォームFundlinQ(https://fibc.info/2016-fundlinq/)などです。

今後は、このようなクラウド型の会計+金融プラットフォームの活用が、スモールビジネスの資金調達の鍵となる可能性が高いと感じています。

そもそもキャッシュは企業の生命線なのですが、スモールビジネスの現実では資金繰り情報が不正確で十分な資金管理ができていなケースが多いようです。

私の経験上、意外にも、その傾向は途上国でも先進国でも大差ありません。スモールビジネスの社長は本業(製造や営業)に集中しなければ生きていけませんので致し方ありませんが。

具体的には、たとえ経理部長がいても、取引先ごとの決済条件(おおよその入出金タイミング)の反映や、月中での売買実績に基づく資金繰り予定情報のアップデートができていないという問題があります。

また、購買実績や販売実績に先行する受発注情報が資金繰りに活用されない場合があります。さらに、本来、長期計画である予算管理と短期計画である資金繰りはPDCAサイクル上で情報更新・精度向上を行う関係でなければなりませんが、予算管理と切り離されて資金繰りが行われているケースもあります。

上記のような資金管理業務分析支援・融資仲介プラットフォームを活用できれば、資金繰りや資金調達にかかる業務をある程度自動化でき、本業に集中しなければいけない社長の大きな助けとなります。

他方、3年業歴がないと融資できなかった銀行や、審査判定メカニズムが手探り状態の新興オンライン貸出業者の貸出業務はかなり改善するでしょう。

過去を振り返れば、かつての金融イノベーションの世界では金融機関内の業務効率化やリスク管理の高度化は劇的に進みましたが、顧客であるスモールビジネスは置き去りだったような気がします。

今も「フィンテック」と聞くだけで最先端というイメージがありますが、今一度、資金繰りというスモールビジネスの古典的な経営課題に立ち戻り、そこで、いかにフィンテックを効率的に活用できるかを冷静に考えることが必要なのかもしれません。

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