「良い夫やめました」は試行錯誤の過程、夫婦関係に完成はない
LIMO / 2018年10月27日 20時20分
「良い夫やめました」は試行錯誤の過程、夫婦関係に完成はない
死ぬまで変化し続ける「良い夫・妻」の定義
オリエンタルラジオ・中田敦彦さんの「良い夫やめました」宣言。賛否両論あると思いますが、一番大切なのは「これは結果ではなく、試行錯誤の過程である」ということではないでしょうか。
夫婦関係に「完成」はなく、ライフイベントによって死ぬまで変化し、実は死んだ後も変化し続けるものなのです。特に中田さんの「良い夫を頑張る→やっぱりやめた」という過程は、結婚10年未満の夫婦にありがちなことに思えます。
結婚10年以内の夫婦にありがちな張り切り
結婚してすぐの夫婦に多いのが、世間一般で言われる「良い夫・父親・婿」「良い妻・母親・嫁」になろうと張り切ること。特に女性の方が張り切り、急に家庭的になったり、お裁縫を始めたり、自然食品に目覚めるなんてことも。時が経つとまた元に戻っていくのですが、結婚当初が「張り切りモードの時期」ということはよくあるものです。
しかし結婚は日常で、生活の場です。「365日張り切った良い状態」でいようとすると、人間誰しも苦しくなってきますよね。いつしか「良い夫・妻であること」が義務的になり、家庭が窮屈で、安らぎの場ではなくなってしまうのです。
ここで逆に振れ、「今は男女関係ない時代だからもうやめた!」ということもあります。たとえば男性なら中田さんのように、女性なら家事は家電に頼ったり、お惣菜に頼り切ってみる。疲れたから色んなものを手放してみるんですね。
その状態にも小さな違和感を感じるようになり、「やっぱり料理は好きだし、気分転換にもなる。料理だけはやろうかな」「掃除はキレイ好きな夫担当で、料理は妻担当」「食器洗いと掃除と料理一品は家電担当」というように、段々と「その夫婦なりの良い夫・妻像」ができて落ち着いてくるものです。
世間一般の定義→真逆の定義→自分らしい道
このようにまずは世間一般の定義に従い、苦しくて嫌になったので真逆の定義を試してみて、最終的に自分らしい道を見つけるというやり方は、何も夫婦関係だけに起こることではありません。
勉強、スポーツ、音楽、仕事、育児といった他のことでも、同じような道筋を経ながら、「自分らしい道」を探していくものです。逆に言えば、「自分らしさ」を見つけるためには世論に従ったり、逆を試しみたりして、様々な試行錯誤をすることが必要なのでしょう。
今回の中田さんの件も、「良い夫をやめました」という結果的な発言でなく、「良い夫をやめてみた」と過程であることが強調されると良かったのでは?と思います。
婚姻届を提出しただけでは本物の夫婦になれない
さらにライフイベントごとに、夫婦関係は変化していきます。結婚当初・子どもが乳幼児~小学校低学年頃まで・小学校高学年以降・子どもが巣立った後・親の介護・定年後・孫育て・どちらかまたは両方の病気・死別、そして片方が死んだ後でさえも、夫婦の関係や捉え方は変化していくものです。それほどに夫婦関係というものは変化しやすく、揺らぎやすいものでもあるのです。
婚姻届を出せば本物の夫婦になれる、というわけではありません。結婚30年という夫婦でも変化の過程にありますし、熟年離婚なんてこともあるでしょう。夫婦というのは、様々な問題や変化に直面しながらも、2人なりに変化に対応していくものではないでしょうか。
記事には中田さんは帰る時間を連絡しないことにしたとありますが、連絡してもらった方が奥さんは助かるでしょう。そういった「2人の心地良さ」を模索していきながら、お互いのすり合わせができて、「ほんとうの家族になっていく」のでしょう。
私たちが覚えておきたいのは、これは「夫婦」だけではなく、「親子」でも、「兄弟姉妹」でも、「家族」でも同じということです。子どもが生まれたからといってすぐに母や父にはなれませんし、弟妹が生まれたからといってすぐに兄や姉にもなれないもの。家族になるのにも年単位での時間が必要です。
親に「お姉ちゃんなんだから」と言われ、「好きでお姉ちゃんに生まれたわけじゃない!」という親子げんかをした覚えのある筆者は、息子に「お兄ちゃんだから」とは言わないようにしています。
弟妹が生まれて3年半が過ぎ、最近になって長男が「お兄ちゃんになってきたな」と感じることが増えています。家族になるにも試行錯誤と時間が必要なことを頭に入れ、今日も試行錯誤をしていきたいと思います。
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