原油、パラジウム、ビットコインが上昇、株価指数も回復傾向【ジャンル横断・騰落率ランキング】
トウシル / 2020年2月17日 13時15分
原油、パラジウム、ビットコインが上昇、株価指数も回復傾向【ジャンル横断・騰落率ランキング】
原油、パラジウム、ビットコインが上昇率上位
先週は、原油[商品]、パラジウム[商品]、そしてビットコイン[暗号資産]の上昇が目立ちました。この3銘柄の上昇率はいずれも、新型肺炎の懸念が一時的に和らいだことにより上昇した主要株式指数の上昇率を上回りました。
原油[商品]は、新型肺炎の懸念が世界規模に拡大した1月半ば以降、下落が目立っていましたが、先週は、主要株価指数が反発したことに加え、OPECプラス(石油輸出国機構=OPECと、非加盟国で構成される組織)が減産を強化する観測が強まったことなどにより、反発色を強めました。
また、今回から本コンテンツに採用したパラジウム[商品]も、比較的大きな上昇となりました。以前の筆者のレポート「プラチナ安値圏、パラジウム史上最高値。長期的に貴金属に投資するなら?」で書いた通り、ここ数年間、世界全体のパラジウムの供給は限定的であり、消費が著しく減少しない限り、需給バランスが引き締まった状態が続くとみられていることから、価格が上昇しています。先週は、主要株価指数の反発を受け、騰勢を強めました。
ビットコイン[暗号資産]は昨年12月半ばに80万円近辺まで下落した後、反発傾向が鮮明になりました。今年1月、2月と、上昇傾向にあり、この間、90万円、100万円、110万円の節目を順調に超えながら推移してきました。目先は、次の節目である120万円をうかがう展開になっています。
全体的には、23銘柄中、73.9%にあたる17銘柄が上昇、一方、下落した銘柄は26.1%にあたる6銘柄でした。新型肺炎の懸念が一時的に和らいだことが、上昇した銘柄が比較的多くなった要因とみられます。
2月10日(月)~ 2月14日(金)までの週のジャンル別騰落率
今週の見通し
実は、多くの銘柄で上昇がみられたのは、先週だけではありませんでした。前回の「ビットコイン上昇、株価指数は下落。新型肺炎の影響続く」で書いた通り、先々週も全体的に上昇した銘柄が多い週でした。
中国の武漢市で、新型肺炎の影響で初めて死者が出たと報じられてからおよそ1カ月が経ち、いまだになお、感染者数、死亡者数が増え、感染地域が拡大しているのにも関わらず、2週連続で上昇した銘柄が比較的多かったのは、なぜなのでしょうか?
今回の新型肺炎が、大きな懸念ではあるものの、過去にWHO(世界保健機関)が非常事態宣言を出したいくつかの感染症に比べて、致死率が低い(2~3%程度との試算あり)ことや、ワクチンの開発が急ピッチで進んでいることなどが、その一因に挙げられます。
また、足元、世界全体を見渡せば、米中貿易戦争における第一弾合意が履行されることとなったこと、今月から本格的に11月の大統領選挙におけるトランプ米大統領の対抗馬となる民主党の候補者選びが始まったこと、先月末でEU(欧州連合)を離脱した英国およびEUを取り巻く環境の変化に大きな関心が集まっていること、イランにおいて民衆の反米環境が急速に高まっていることなど、複数の大きな材料が同時に発生しています。
このため、新型肺炎由来で懸念があったとしても、別の材料で期待が高まれば、その期待が新型肺炎の懸念を相殺し、その結果、特に、景気が良くなることを織り込む傾向が強い主要な株価指数が上昇したわけです。新型肺炎の懸念はあっても、市場が楽観的になれるのはこのためです。
このため、“注目すべき材料は新型肺炎だけではない”、ということに留意する必要があります。その意味で、今週公表される複数の経済指標にも注目すべきです。
今週は、2月18日(火)に、ユーロ圏のZEW景況感調査、米国ではニューヨーク連銀製造業景気指数(2月)が公表されます。そして、翌19日(水)、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録、20日(木)に英国の小売売上高(1月)、21日(金)に米国の製造業・非製造業の購買担当者景気指数(PMI)が公表されます。
米中貿易戦争の渦中にある米国や、EU離脱後の英国およびEUにおける足元の景況感を示す重要なデータが公表されるため、注目です。また、新型肺炎に関わる各種データが、良化するか、悪化するかにも注目が必要です。
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(吉田 哲)
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