第七章いつ買って、いつ売る?
トウシル / 2015年1月28日 0時0分
第七章いつ買って、いつ売る?
順張り、逆張り
皆さんは「順張り」とか「逆張り」という言葉を聞いたことがありますか?
順張りとは、株価が上がっているときに、その流れに素直につくような投資法を指します。
逆張りとは、株価が下がっているときに、その流れに逆らうように買い向かう投資法を指します。
このどちらも確立されたアプローチであり、正しいです。
一見、真っ向から対立するこれらの手法が、両方とも正解なのは不思議ですね。
しかし順張りと逆張りでは、使う局面がぜんぜん違います。つまりそれぞれに正しい使い方をすれば、両方とも成果を挙げることができるけれど、間違った使い方をすると、どちらを使っても失敗するのです。
正しい順張りのしかた
順張りは主に短期トレーディングに使います。順張りを行うためには、まず上昇トレンドがきれいにチャートに表れている銘柄を探します。
順張りは短期トレーディングに使う。上昇トレンドがきれいに出ている銘柄を探すこと
上昇トレンドラインは、右肩上がりになっている株価の底値を結ぶことによって描けます。最低でも2回、株価がトレンドラインを試し、それを守った銘柄だけを選ぶクセを付けてください。
トレンドラインを試し、それを守った回数が多いほど、そのトレンドラインの信頼性は高いです。
トレンドラインを守った回数が多いほど、そのトレンドラインは信頼性が高い
さて、順張りの買いのタイミングですが、安くなっている時に買うのではなく、必ず前回の高値を超えた時点(図中A)で買いに入ることを心掛けてください。
順張りの買いタイミングは、必ず前回の高値を超えた瞬間を狙うこと
そうする理由は、過去の高値を超えるには、それなりの勢いが必要であり、高値を超えた瞬間には、余勢を買って株価が伸びるケースが多いので、それを利用しない手は無いからです。
逆に言えば順張りでは買った端からすぐに利が乗り始めるのが当たり前なのです。もし皆さんが順張りをしたつもりでも、買ってすぐに利が乗らないようなら、あなたがやっていることはどこか間違っていると考えて良いでしょう。
順張りで買ってすぐに利が乗らないようなら、やっていることが間違っている
自分のトレードの仕方が、上に述べたような基本から逸脱していないか冷静に振り返ってください。そして数日経っても利が乗らないなら、すぐに処分できるように心の準備に入ってください。
順張りの売りタイミングは、次の二つの局面です
- 株価が上昇トレンドラインを割り込んだとき
- 自分の買い値から8%以上、やられたとき
順張りは、株価の勢いに惚れ込み、その勢いを利用するトレードなわけですから、トレンドラインを割り込み、勢いを失ってしまった株などに、もう用は無いのです。
順張りの買い理由はきれいなトレンドラインなのだから、トレンドラインを割り込んだ銘柄にはもう用は無い
モメンタム系の投資ファンドは、皆、そういう考え方で乗っかっているので、トレンドラインを割ると怒涛の売りが出ます。だから順張りするときは、怠けずに毎日チャートを見て、自分の買い建てたポジションが安泰であることを確認する習慣をつけてください。
順張りは高値の株を「エイヤア!」と気合で買う手法なので、買った時点の株価がトレンドラインより大幅に上になっている場合もあります。すると下がっても、下がっても、未だトレンドラインまで届かないケースもあるのです。-8%で損切りするルールを課す意味は、そこにあります。これは自分の投資資金を次のチャンスのために温存する目的で決められたルールです。
つまり一回のトレードで8%程度のヤラレなら、次回以降、立ち直ることもそれほどムリではないのです。しかし損失が大きくなるのを放置しておくと、後で挽回することがとても難しくなります。
8%のヤラレで損切る理由は、投資資金の温存にある
なお、ここが強調したい点なのですが、順張りにとって「良い銘柄」とは、あくまでもチャート上でトレンドがきれいに出ているような銘柄を指し、その企業が何をやっている会社か? とか、投資テーマがエキサイティングか? とか、業績が良いか? とかは考慮点としては二の次だという事です。
最初からそのような切り口で投資していない以上、株価がズルズル下がり始めたら下支えになる材料に乏しいのが順張り投資の特徴です。だからこそ、手遅れにならないうちに早く逃げなければいけないのです。
正しい逆張りの仕方
逆張りは主に長期投資に使います。逆張りを行うためには先ずそれが長期保有に足るだけの、業績面でしっかりした銘柄であることを確認する必要があります。
逆張りで最も大事なことは業績面でしっかりした銘柄に投資することだ
言い直せば今後の業績の伸びが、株価下落という目先の悪材料を撥ね退けて余りあるくらい元気でなくてはいけないのです。
ここで苦言を呈すれば、経験の浅い投資家は、「そんなコト言われなくてもわかっている」と業績による銘柄の選定を軽く考える傾向があるということです。でも実際には、どんな嵐の中でも飛べる全天候型の戦闘機のような、鉄板の業績を誇る銘柄は、数千もあるアメリカ株の銘柄の中で、せいぜい両手で数えられるくらいしか存在しません。
逆張りする価値のある銘柄は、アメリカ株の中でも両手で数えられるほどしかない
逆張りは、落ちてくるナイフを素手で掴むような危ない行為です。台風で大シケになっている状態で航空母艦から発艦するような向こう見ずな試みなのです。そんな危ないことをやろうとしているのに、その会社の業績も確かめずに買うのは、賢い投資ではありません。
それではどんな企業が業績面でしっかりした銘柄に相当するのでしょうか?
全天候型の銘柄の第一番目の条件は、好況時でも不況期でもちゃんと利益を出せる、利幅の大きい企業です。もっと踏み込んで言えば、営業キャッシュフロー・マージンが最低でも15%から理想的には35%に近いビジネスということです。
営業キャッシュフロー・マージンが15%から35%ある銘柄を選べ
ジョンソン&ジョンソン(ティッカーシンボル:JNJ)は、そんな条件に適った銘柄です。
【略号の読み方】
- DPS一株当り配当
- EPS一株当り利益
- CFPS一株当りキャッシュフロー
- SPS一株当り売上高
いま2014年のCFPSをSPSで割ると:
6.05÷24.79=0.244
になります。つまりジョンソン&ジョンソンの営業キャッシュフロー・マージンは24.4%あるのです。これだけ儲かるビジネスなら、不況でも赤字に転落する心配はありません。
次に長期保有に足る銘柄の条件は、収益の安定性が高いことです。ビザ(V)、アムジェン(AMGN)、グーグル(GOOGL)、バイオジェン・アイデック(BIIB)、ノボ・ノルディスク(NVO)、ギリアド・サイエンシズ(GILD)、アップル(AAPL)、ユニオン・パシフィック(UNP)、ノバルティス(NVS)、セントジュード・メディカル(STJ)、AT&T(T)、コカコーラ(KO)、バクスター・インターナショナル(BAX)、サーモフィッシャー(TMO)、ベクトン・ディッキンソン(BDX)、ストライカー(SYK)、ウォルト・ディズニー(DIS)、アイデックス・ラボラトリーズ(IDXX)、ウエイスト・マネージメント(WM)などの銘柄は収益が安定しているだけでなく株価の動き方もマイルドです。
ウォーレン・バフェットの有名な言葉に「引き潮になったら、誰が裸で泳いでいるかバレる」というのがあります。引き潮とは、つまり相場環境が悪く、マーケットが急落しているような状況を指します。裸というのは、ちゃんと銘柄のファンダメンタルズをチェックせず、単にチャートを見ただけとか下落幅の大きい銘柄を安易な値ごろ感から買うような無防備な態度を指すのです。
さて、逆張りの売りタイミングは、いつでしょうか?
逆張りは主に長期保有に使うので、滅多な事では利食い売りしません。上に列挙したような銘柄を、ずうっと抱き続けて下さい。イメージとしては5年くらい保有し続ける感じです。逆に言えば、これらの銘柄は値動きがマイルドなので、短期ではそんなに儲からないのです。また順張りのところで説明したような、買った先からすぐに利が乗り始めるような嬉しいシナリオも忘れてもらって結構です。
最も悪い投資
最後に最も悪い投資手法を紹介しておきます。それはポンコツ銘柄でこっぴどく売り叩かれているような株を、リバウンド狙いで買いに行くやり方です。そういう手法が好きなセミプロ級の投資家というのは、確かに存在します。
でもこのやり方はわざわざ業績の悪い会社を買うわけですから常に悪決算や倒産などの恐ろしいニュースと背中合わせです。
ボロ株のリバウンド狙いは、常に悪決算や倒産などの恐ろしいニュースと背中合わせだ
このような株には大量の空売り筋が乗っている場合が多いです。その空売り筋が見込み違いで買戻しすることを期待してリバウンド狙いするというわけです。
こういうトレードをする投資家は、相場のジャンキー(中毒患者)のように、24時間、相場を張っていないと気が済まないような人たちです。その中には海千山千の老獪(ろうかい)なトレーダーも居ます。
私は、そういう人たちと正面切って勝負しても勝てないことがわかっているので、そのような勝負は挑みません。
(広瀬 隆雄)
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