混乱のテレビ討論会!「バイデン大統領=株安」はない?為替は円高?米大統領選の注目点
トウシル / 2020年9月30日 13時21分
混乱のテレビ討論会!「バイデン大統領=株安」はない?為替は円高?米大統領選の注目点
米国大統領選挙までいよいよ1カ月余り
米国大統領選挙まで1カ月余りとなってきました。そして米国のみならず世界中が注目しているテレビ討論会がいよいよ始まります。
第1回討論会は9月29日ですが、9月末という月末、四半期末、半期末の季節要因が加わり、マーケットではこの討論会の前に株式や為替、資源などのポジション調整が見られたようです。
ドル/円でいえば、106円台から104円近辺まで売られた後、株や他の通貨の調整、資源価格の急落などの影響を受けて、105円台に戻すという自主性のない動きとなっています。当面は、105円を挟んだ動きが続きそうです。
さて、テレビ討論会は9月29日の第1回を皮切りに、10月7日(副大統領候補)、15日、22日と討論会が続きます。10月のマーケットは、これら討論会の結果を見ながら一喜一憂する動きとなりそうです。
米大統領選挙の日程
9月29日 | トランプ氏とバイデン氏の第1回討論会 |
---|---|
10月7日 | ペンス氏とハリス氏の討論会 |
15日 | トランプ氏とバイデン氏の第2回討論会 |
22日 | トランプ氏とバイデン氏の第3回討論会 |
11月3日 | 米国大統領選挙 |
12月14日 | 選挙人による投票。538人の過半数270人を得た候補が当選 |
2021年1月6日 | 連邦議会で開票。当選者が正式決定 |
1月20日 | 大統領就任式 |
第1回目討論会の9月29日(火)は、日本時間では30日の午前中に行われるため、このコラムがリリースされている頃には討論会の結果が出ているかもしれません。
しかし、1回目の討論会だけで決定的となるわけではなく、2回目、3回目と違うスタイルで討論会が行われるため、それぞれの回を注目する必要があります。討論会では各種テーマが討論されますが、討論内容だけでなく、見た目や表情、しぐさといった候補者の人柄などを手がかりとして大統領にふさわしいかどうかも、視聴者は注目しています。初のテレビ放映となった1960年のニクソンvsケネディ候補の討論会では、病みあがりで顔色が悪いニクソン候補に対し、若々しさを印象づけたケネディ候補が勝利しました。
今年は特に、バイデン氏の大統領候補としての適格性が注目されています。保守系メディアは高齢のバイデン氏の政権担当能力を執拗に疑問視しています。トランプ米大統領もバイデン氏を「寝ぼけたジョー」と呼び、思考回路や行動が遅いと主張してきました。
そして、バイデン氏はこの6カ月間、今回の討論会よりも長い時間、テレビで生出演したことがないそうです。原稿読みが多い中で果たしてバイデン氏は、討論慣れしたトランプ大統領の猛攻に対して、たじろぐことなく、冷静沈着、頭脳明晰な印象を視聴者に与えることができるのかどうかに注目です。
少しでもさえない姿を見せた場合、バイデン氏の当選確率は下がるでしょう。また、1回目を乗り切ったとしても、2回目も3回目もそのエネルギッシュさを維持する必要があります。全てを乗り切れば、納税問題が浮上しているトランプ大統領に対して、バイデン氏はかなり優位になりそうです。逆に、1回目、2回目を乗り切っても3回目で息切れとなれば、最後の印象が決定打となります。
選挙本番まで投資家が動きづらい10月
10月は、このような討論会が毎週行なわれるため、投資家としては動きづらいところです。3回の討論会を終えてトランプ氏が優位となれば、株の買い戻しに弾みがつき、円もクロス円を中心とした円安に動くかもしれませんが、選挙本番の結果を見るまでは一時的な動きかもしれません。
さらに投資家心理の重しになっているのが追加経済対策の遅れです。民主党は歩み寄りを見せていますが、両党の案はかけ離れており、両候補が激論している中では合意の可能性は低そうです。よっぽど不利な局面になり、その情勢をひっくり返すために歩み寄るというシナリオも考えられますが、支持者に対するリップサービスの域は出ないことが予想されます。
このような状況を受けて、ゴールドマン・サックスは年内の成立はないとみて、10-12月期のGDP(国内総生産)成長率の予想を6%から3%に引き下げました。
ただ、マーケットで急浮上しているシナリオがあります。民主党が上下院選でも過半数を占め、完勝するシナリオです。マーケットでは増税を公約している「バイデン大統領=株安」というのが大方の見方ですが、完勝すれば、増税をする一方で、「2兆ドルを超える追加経済対策に加え、バイデン氏が掲げる財政支出計画も上乗せされる」との見方から、全体では2021年後半から2022年にかけてGDPを押し上げるとのシナリオです。ゴールドマン・サックスも共和党の抵抗もあり、規模は縮小となるが、2022年のGDP押し上げ効果をみているようです。
この3回の討論会で、バイデン氏が健闘し、民主党完勝につながる勢いを得られるのかどうか注目です。
最近の支持率調査ではバイデン氏が優勢となっていますが、討論会で白黒がはっきりしない場合、米国大統領選は11月3日の翌日には決まらないことが予想されます。今回は郵便投票の割合も高く、開票が遅れるだろうと言われています。また、郵便投票でもめれば、法廷闘争の可能性が高まります。12月14日の選挙人投票の前までに決まればよいのですが、長引くかもしれません。そのことを見越して、トランプ大統領は早々と最高裁判事の後任を指名しました。最高裁の判事9人中、6人を保守が占めることになれば(リベラル派3人)、トランプ大統領にとって有利に働く可能性が高まります。
最高裁判事の後任人事であるバレット氏の指名は、10月12日から上院司法委員会で指名承認の審議が開始され、10月26日の週に本会議採決の予定ですが、このことも追加経済対策を遅らせる要因になりそうです。進展しないだけでなく、先行期待も高まらないことが予想され、米経済にとってはかなりのマイナス要因になりそうです。
討論会ではこのテーマについてもどのような討論がされるのか注目です。共和党議員の造反を引き起こすような議論がみられれば、後任指名は遅れ、法廷闘争になった場合にトランプ大統領に有利に働かない可能性が高まります。その場合、10月の討論会が終わっても、投資家が動きづらい状況が年内続くことも予想され、シナリオの一つとして留意しておいたほうがよいかもしれません。ドル/円は、その不透明感からじりじりと円高に動くかもしれません。
(ハッサク)
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