米国のテーパリングはパフォーマンス?FRBに出口のドアはない!
トウシル / 2021年8月5日 15時13分
米国のテーパリングはパフォーマンス?FRBに出口のドアはない!
テーパリングは正常な軌道に戻るふりをするためのパフォーマンス
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのグローバル債券戦略責任者であるBrian Rehlingは、米国でテーパリングが始まっても、資産購入が終了するまでには長い時間がかかるだろうと述べている。
「FRB(米連邦準備制度理事会)のテーパリングがささやかれ始めたかもしれないが、私たちはそれが長期にわたるものになると予想している。FRBがテーパリングのプロセスを開始すると、バランスシートの拡大を“止めるまでに約1年かかる”と予想している」
QE(量的緩和)とは言わなかったが、コロナウイルスが頭をもたげるずっと前の2019年にFRBはQEに軸足を戻していたのである。
その年の秋には、株式市場が大暴落した。過剰債務の経済は、金融政策の正常化に向けたささやかな動きにも対応できなかった。株式市場がテーパータントラムを起こすと、FRBは再び金融緩和政策にかじを切った。
過去13年間で負債額が爆発的に増加した。リーマンショック(世界金融危機)以前のような金利では金融システム全体が崩壊してしまう。金融当局はそれを知っているし、投資家も知っている。金融システム全体が、負債の拡大とそれを支える安価な資金を前提としている。
今はバブルが大きくなりすぎて、それを壊す選択肢がなくなった。現在の史上最大の資産バブルを破裂させれば、壊滅的なリセットになるからだ。それは景気後退とかいうレベルではなく、恐慌になるだろう。
FRBが仮にテーパリングに動いても、株が下がればすぐに緩和再開となるだろう。FRBは株だけを見て政策をやっているのだから。破綻するまで金融緩和を続けること、これが唯一の選択だ。
以下の記事は、ゼロヘッジの「FRBのバランスシートは過去最高、出口はどこか?」と「権力に酔う権威主義者たち:今こそ政府を再調整する時だ」からの抜粋である。今の相場の本質をついている。米国のテーパリング議論など、アリバイ作りの会議のようなものだ。
テーパリングは、正常な軌道に戻るふりをするためのパフォーマンスである。正常な状態への道はない。
2017年から2019年にかけてチャンスがあったのに、当時は全員がそれを利用できず、今、FRBは昨年からバランスシートを再び2倍にしている。彼らは市場を吹き飛ばさずに、4.5兆ドルのバランスシートから自分たちを引き出すことができなかった。8.2兆ドルから9兆ドルになろうとしているバランスシートからは確実に引き出せないだろう。ゲームオーバーだ。二度とやるな!
では、将来はどうなるのか。FRBは資産価格をファンダメンタルズからさらに乖離させ続けるだろう。貧富の格差はさらに悪化するだろう。FRBが毎月400億ドルのMBSを購入することで、住宅市場から人々が追い出され続けるだろう。
これがFRBの使命なのか?これは社会をさらに根底から破壊する以外の何かを達成するのだろうか?資産バブルをますます大きくすることが、金融の安定をどのように促進するのか?不可解だ。投資家は、利益が出続けている今はこれらの疑問を気にしないだろう。投資家がこれらの疑問を抱くのは、利益が出続けている今の時期ではなく、歪みの影響が明らかになった後である。その時にはもう手遅れかもしれない。
インフレを促進する緩い金融政策は衰えることなく続いている。金利はゼロに固定されたままである。FRBのバランスシートは毎週のように新しい記録を打ち立てている。出口はいったいどこにあるのだろうか。
出所:ゼロヘッジの「FRBのバランスシートは過去最高、出口はどこか?」
連銀のバランスシートの推移(2002~2021年)
FRBがこの異常な金融政策をどうやって解消することができると考えているのだろうか?2008年以降、それができなかった。2008年以降はできなかったのに、今はどうやってできるのだろうか?
歴史的に見ても、金融政策の正常化に本格的に舵を切るというのは幻想に過ぎない。
FRBは好きなだけ話をすることができる。しかし、ことわざにもあるように、「口は災いの元」だ。中央銀行には何ができるのか?
出所:ゼロヘッジ「権力に酔う権威主義者たち:今こそ政府を再調整する時だ」
「米国経済は政府支出(主に非生産的な無償の給付あるいは無益な戦争)とFRBの膨れ上がるバランスシートに完全に依存するようになるだろう」と著名投資家マーク・ファーバーが危惧するように、FRBに出口のドアはないのである。
だが、働かないでもらうお金によって経済を回していれば、いずれ、大きなインフレを発生させるだろう。金融システムが破綻するまで国家管理相場は続く。イージーマネーはイージーに失うことになっている。
とどめを刺すのはインフレと財政破綻である。そこからは監視と弾圧が始まる。エリートたちは市民の不満を、補助金や配給によってなだめなければならない。これが今のフェーズである。しかし、それらが尽きれば、もはや不満分子を監視し、人々を弾圧するしかなくなる。
8月は円高傾向の月だが今年はどうか?
8月は円高の月だと言われる。そして、オセアニア通貨(特に豪ドル)には8月安のアノマリーがある。過去20年間の円のシーズナリーチャートをみると確かに円高傾向が強い。
円のシーズナリーチャート(過去20年間の平均値)
ドル/円(日足)
豪ドルのシーズナリーチャート(過去20年間の平均値)
豪ドル/円(日足)
NZドルのシーズナリーチャート(過去20年間の平均値)
NZドル/円(日足)
相場に絶対はないが、米国株のシーズナリーチャートとNZドルのシーズナリーチャートから導かれるNZドル投資の確率的な答えは、9月と11月に逆張りのNZドル買いを狙うことだ。問題は8月安のパターンが出るかどうかである。このパターンが出現しないと、逆張り投資はやりにくい。
NZドル/円相場は中期的には9月のボトムが買い場だが、筆者は毎年11月の頭に裁量取引でNZドル/円と米国の株価インデックスを買っている。そして、このポジションは12月末に解消する。もちろん、ストップロス注文は必須である。
8月4日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』
8月4日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』は、武田則孝さん(楽天証券FXディーリング部)をゲストにお招きして、「8月は円高の月か?」、「自滅的なバカバカしいFRBの金融政策の先にあるものは!?」、「ゴールド相場の買い場は?」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
8月4日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
(石原 順)
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