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ヒトの在庫減らしがこれから始まる!「働かない」から、「働けない」時代へ 8月米雇用統計 詳細レポート

トウシル / 2022年8月31日 13時39分

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ヒトの在庫減らしがこれから始まる!「働かない」から、「働けない」時代へ 8月米雇用統計 詳細レポート

過去3カ月の推移と今回の予想値

※矢印は、前月からの変化

8月雇用統計の予想

 BLS(米労働省労働統計局)が9月2日に発表する8月の雇用統計は、市場予想によると、NFP(非農業部門雇用者数)は29.0万人の増加となっています。

 雇用者増加数が30万人を下回るならば、昨年11月以来となります。

 失業率は前月比横ばいで3.5%の予想。平均労働賃金は、前月比+0.4%。前年比は+5.2%で、4月の5.6%をピークに横ばいながらも高止まり状態が続いています。

 アトランタ連邦準備銀行の賃金追跡調査によると、労働賃金の上昇率は前年比で6.7%と、BLS公表値よりもさらに大きな伸びを示しています。

 正社員の賃金上昇率は6.2%から6.8%に加速し、そのうちプライムエイジと呼ばれる25歳から54歳の賃金上昇率は6.8%から7.2%に大きく伸びています。

 業種別に見ると、特に上昇率が目立っているのが雇用を積極的に増やしているレジャー・サービス業で、5.8%から6.4%に増加。

 ジェローム・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が最も懸念していた「インフレの波及効果(2次効果)」が発生していることになります。

7月雇用統計のレビュー 

 BLSが8月5日に発表した7月の雇用統計のNFPは、事前予想の25.0万人増を倍以上も上回る52.7万人の増加となりました。

 非農業部門雇用者数は、2020年2月時点の新型コロナ感染大流行前の水準にようやく戻りました。失業率は3.5%に低下。コロナ流行後に14.7%まで悪化した失業率も2019年9月に記録した過去最低水準の3.5%まで回復しました。

 平均労働賃金は、前月より0.5%増え、1年前に比べると5.2%増えています。労働賃金の上昇圧力は一向に和らぐ様子はなく、労働コスト上昇が押し上げるインフレ率を制御するためには、FRBはさらに積極的に利上げを続ける必要があるということになります。

モノとヒトの在庫減らし始まる

 米⼩売⼤⼿の四半期決算が発表されましたが、その中で特に目についたのは、各社の在庫⽔準が急増していることでした。

 世界最大のスーパーマーケットのウォルマートは32%、アパレル⼤⼿のアバクロ(アバクロンビー&フィッチ)が45%など、異常に増えているのです。

 新型コロナの影響によるサプライチェーンの混乱で、大幅な在庫不⾜に悩まされた多くの小売会社が、経済再開後の需要拡大を見込んで「多めに発注していた」ことが、この在庫急増の原因でした。

 そのほかにも、行動制限解除後の消費者の行動パターンの変化の読み間違いなど、いろいろ事情はあるのですが、いずれにしても山積みとなった在庫は整理する必要があります。

 ウォルマートは、大割引セールを大々的に行うなどして、在庫処分を急いでいます。

 ただ、気になるのは、過剰在庫はモノ(商品)だけではない、ということです。

「従業員が多すぎる!」

 これは米自動車大手のフォードCEOの発言です。フォードは先週、北米を中心に従業員3,000人を削減すると発表しました。

 同社は最大8,000人の削減計画を準備していて、今後追加でリストラを実施する可能性があります。

 新型コロナの行動制限が解除された後、多くの企業は、消費需要拡大を期待して積極的に雇用を拡大してきましたが、ここに来てヒトの過剰在庫が目立ってきたのです。

 新規失業保険申請件数は、4月に16.5万人台まで下がったあとしばらく20万件で推移していましたが、現在は25万件前後まで増えています。

 失業保険申請件数の上昇は、レイオフや新規採用の凍結を行う企業が増えていることを示唆しています。

 フォードだけではなく、アップルも景気後退に備えて雇用のペースを落とすと発表しました。マイクロソフト、テスラ、メタなどは、すでに人員削減を開始しています。

 8月の米雇用統計の市場予想によると、NFPは29.0万人増。増加数が伸び悩んでいるのは、FIREや大量退職時代を迎えて働き手がいないせいだというのが定説です。

 しかし、企業が採用を絞り始めたことも理由なのかもしれません。あるいはその両方が同時発生している可能性が高く、今後見極めていく必要があるでしょう。

 米国の雇用市場は冷え込んでいるわけではなく、むしろ過熱状態ですが、果たしてこの状況がいつまで続くでしょうか。パウエルFRB議長は、ジャクソンホールの講演で、インフレ率引き下げ達成のために、景気減速を受け入れる覚悟があることを明言しました。

 しかし、緩やかな景気減速を守りながらインフレを急速に引き下げるという芸当は困難を極めます。

 一歩間違えると、景気後退とインフレが同時進行する「スタグフレーション」という、最悪の事態が発生するリスクも多分にあります。

 消費が冷えることで企業収益が悪化し、雇用が減り失業率が上昇するのか。

 それとも、実質所得の減少で仕事に就く人が増えることで、賃金が下がりインフレも収束するのか。

 将来のシナリオは一つではありません。後者のケースは緩やかな経済拡大が期待できますが、前者の場合は不況という結末が待っています。

(荒地 潤)

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