スーパーバブルの崩壊と円キャリートレード
トウシル / 2022年10月20日 16時32分
![写真](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_39360_0-small.jpg)
スーパーバブルの崩壊と円キャリートレード
ドル/円は147円63銭を上抜き150円レベルまで上昇!
ドル/円は149円94銭まで上昇してきた。1998年の147円63銭を明確にブレイクし、次の上値メドは1990年の159円91銭まで見当たらない状況となっている。
ドル/円(月足)
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出所:石原順
1ドル=150円に接近していることから、日本銀行の円買い・ドル売りの市場介入に対する警戒感が高まっているが、それでも「円買い介入の効果は限定的だろう」というのが金融政策の方向性からみた現状である。
ドル/円相場が円高になるには、米国が金利を下げるか、日本が金利を上げるか、米国株が暴落するかの、いずれかの要因が必要だろう。
この先、円売りを継続している投資家が気をつけないといけないことは、「円キャリートレードの巻き戻し」である。
円売りブームに乗った円売りトレードや円キャリートレードは、株式市場が暴落すれば(1998年のロシア危機・LTCMショックや2008年のリーマンショックで巻き戻されたように)最終的には涙をのむことになる。
ドル/円(日足)1998年のロシア危機とLTCMショックによる円キャリーの巻き戻し
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後にも先にもこんなすさまじい円高相場を筆者は体験したことがない…
出所:石原順
豪ドル/円(日足)2008年のリーマンショックで大暴落
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株の暴落に注意! 2008年の円キャリートレードの巻き戻しは壮絶だった…
出所:石原順
したがって、FX投資家(円売り投資家)が最も気をつけなければならないのは、株式市場のクラッシュである。ヌリエル・ルービニやピーター・シフは、「かつて経験したことのないスタグフレーションの危機が迫っている」と、強い警鐘を鳴らしている。
次の景気後退が深刻なスタグフレーション債務危機によって特徴付けられると信じる十分な理由がある。世界のGDP(国内総生産)に占める民間債務と公的債務の水準は、1999年の200%から今日の350%に上昇し、今日、過去よりもはるかに高くなっている。
こうしたもとで、金融政策の急速な正常化と金利上昇は、レバレッジの高い家計、企業、金融機関、政府を破産・債務不履行に追いやる。 スタグフレーション・ショックに直面した場合、中央銀行は、景気後退に向かう中でも、政策スタンスを引き締めなければならない。
さらに、今日のインフレ率の上昇は世界的な現象であるため、ほとんどの中央銀行は同時に引き締めを行っており、それによって世界的な景気後退が同時進行する可能性が高まっている。
バブルは、パブリックおよびプライベートエクイティ、不動産、住宅、ミーム株式、暗号、SPAC、債券、信用商品など、あらゆる場所で収縮している。実質資産と金融資産は低下しており、債務と債務返済比率は上昇している。
(ヌリエル・ルービニ)
米国の31兆ドルの負債の4%は1.25兆ドルだ。負債の平均満期は5年未満となっている。負債の3分の1は来年に満期を迎える。一方、借金は急増し続けている。米国の借金は、パンデミック支出プログラムが一段落しても、わずか8カ月で1兆ドルも増えた。
今から5年後、国の借金は40兆ドルを超え、それに対しておそらく5%以上の金利を支払わなければならなくなる。つまり、国債の金利に1兆ドルのツケが回ってくるのは、10年先の話ではないのだ。1年後、いや2年後かもしれない。それくらい、この危機は身近なものなのだ。
(ピーター・シフ)
米10年国債金利(日足)
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出所:石原順
GDP・連邦負債・連銀のバランスシート・FF金利
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出所:ゼロヘッジ
日本政府は外国為替市場でこっそり介入しているのか!?
日本の政策担当者の目の前にあるのは、イールドカーブ・コントロールの枠組みを緩和するか、円安を容認するかという厳しい選択である。イールドカーブ・コントロールの枠組みを緩和するまでは、さらなる介入は失敗に終わる。
だからこそ、鈴木俊一財務相は、「9月22日以降に政府が外国為替市場でこっそり介入したか?」という質問に対して、コメントしないと述べたのである。介入があったことは明らかだが、その効果は数分とは言わないまでも数時間で終わるからだ。
ドル/円(1時間足)
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(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター
過去の介入をみると、日銀の円買い介入は円の下落を止めることができなかっただけでなく、介入後はさらに大きな下落に見舞われている。日銀の単独介入の答えはもう出ているのである。
日銀の円買い介入とドル/円相場(1997~1999年)
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筆者のところには、「ドル/円はどこまで上がりますか?」という照会や問い合わせが相変わらず来ているが、「わかりません」と答えている。
相場で大損する最大の原因は、「必ず上がるとか下がる」といった思い込みと、損が出た後の対処のまずさである。筆者はトレンドフォローの売買シグナルに従って、相場についていくだけだ。
市場は激しいバブルと崩壊のサイクルを繰り返してきた。長期投資はかなりの乱高下に耐えなければならない。反対に、相場についていくというトレンドフォロー戦略はドローダウン(運用成績の落ち込み)がむしろ安定しているのである。
ドル/円(日足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター
ドル/円(週足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター
ユーロ/ドル(週足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター
ポンド/ドル(週足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター
豪ドル/ドル(週足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター
36年間、相場の世界に身を置いてきたが、不確かな世界でも最も理にかなう投資哲学はトレンドフォローだと思う。予測が当たることと、相場でもうけることは何の関係もない。
相場はぼんやりとした相場の方向を当てるゲームではなく、売買のタイミングを当てるゲームだからだ。したがって、ファンダメンタルズをいくら研究しても相場でもうけることは容易ではない。なぜなら、そこには「タイミングの測定」がないからである。
私たちは必ずしも特定の時期にうまく乗れるわけではない。だが注意深く検討すれば、不確かな世界で最も理にかなう投資哲学はトレンドフォローだ。トレンドフォローは高値で買ったり安値で空売りする。
19年間、私たちは一貫して高値で買い、安値で空売りした。もしトレンドが市場の根本的な性質でなければ、私たちのような取引手法ではたちまち廃業に追い込まれていただろう。しかし、トレンドはこの世の不可欠で根本的な現実だ。
(ジョン・W・ヘンリー)
10月19日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』
10月19日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』は、荒地潤さん(楽天証券FXアナリスト)をゲストにお招きして、「スーパーバブルの崩壊と円キャリートレード」・「暴落相場の回復期間」・「利下げは株の買い場ではない」・「相場の予想と実践の違い」・「相場で大損する最大の原因」・「今から5年後、米国は40兆ドルの借金に5%の金利?」・「ドル相場の黄昏が迫る」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/b/9/-/img_b9dd49b773f826be7b361d4b97577e34193084.png)
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ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
10月19日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/5/b/-/img_5b06d2ddd0545866df27421aad9a64a2130511.png)
(石原 順)
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