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徐々に、そして突然に、ペーパーマネーの終わりがやってくる!?

トウシル / 2023年6月8日 17時0分

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徐々に、そして突然に、ペーパーマネーの終わりがやってくる!?

PBR1倍割れは「上場失格」「社長失格」!?

 日経平均株価が急騰している。マーケットエッセンシャル主筆の前田昌孝は、【株高の理由がいろいろ語られているが、経営者がダメだったり、高給だが働きの悪い中高年社員を多く抱えたりしている企業を外資に買収してもらうという官僚主導の政策が背景にありそうだ。

 経産省も外資が動きやすいようにいろいろお膳立てをしている感じだ。東証の措置を受けてPBR1倍割れは「上場失格」「社長失格」と広く報道されるようになり、レッテル貼りに使われそうな勢いです】とツイートしたが、要は官僚のPBR(株価純資産倍率)1倍割れ撲滅という規制強化による官製相場である。

 ブルームバーグがエコノミスト47人を対象に1日から6日まで実施した調査によると、「YCCの起点となっているマイナス0.1%の短期金利について、年内の引き上げを見込むエコノミストは2人にとどまり、最多は2025年以降の20人で、24年第4四半期の5人がこれに続いた」という。

 日本銀行が金融政策を引き締め方向に修正するとの観測は、緩和継続の必要性を繰り返し表明している植田和男総裁のハト派的姿勢などを受けて一段と後ずれしているらしい。

 資産インフレのリスクを無視して金融緩和を続ける植田日銀の奇異な金融政策は、市場の「差異」を狙う投機筋にとっては絶好の投機の機会を提供している。世界中の中央銀行がインフレファイトしている中で、日銀だけが金融緩和をいつまでも続けているのだ。

 ブローカーの話では、植田日銀による政策変更を予測していた投機筋も、短期的に日本株のバブルに便乗する作戦に切り替えたという。

 世界で唯一マイナス金利を続けている日銀は「7月に小手先の変更をする」という見方があるものの、「年内は何もしない」という観測も多く、PBR1倍割れの規制強化という官僚の株高誘導と相まって、1980年代後半のような日本株のバブル環境が整っているのである。

日経平均CFD(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 日銀の植田総裁は何もする気がないので、日米の10年国債金利の乖離(かいり)は「ワニの口」のように広がっている。日本のインフレ率は3.5%だが政策金利はマイナス0.1%なので、円安が進むのも当然といえば当然である。金利を上げない最大の理由は、岸田政権の解散・総選挙があるまでは動けないということらしい。選挙の後に利上げと増税が待っているのであろうか?

米国10年国債金利と日本10年国債金利の推移(週足)

出所:トレーディングビュー

ドル/円(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ドル/円(週足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

米国の利上げサイクルはまだ終わっていない!?

 昨日の市場を驚かせたのは、カナダ中銀が予想外の利上げに動いたことである。カナダ中銀はG7の中銀の中で最初に、そして唯一、利上げサイクルを一時停止した銀行である。しかし、インフレを抑制するために借入コストの引き上げが必要であることを認めた。

 2日前にはオーストラリア中銀も金利を11年ぶりの高水準となる4.1%まで引き上げ、さらなる引き上げを警告し、市場に衝撃を与えた。

カナダ中銀のオーバーナイト金利

BOCはオーバーナイト金利を4.75%に引き上げ、2001年以来最も高い金利となった
出所:ゼロヘッジ

 こうした動きは、米国債への売り(金利上昇)を加速させることとなった。テーラー・ルールでみると、コア・インフレ率が依然として高いことから、米国経済の制限金利は「5%から6.55%の間」となり、FRB(米連邦準備制度理事会)の中間金利である5.125%は物価上昇圧力を抑制する上でまだ仕事を終えていないことを意味するという。

 米国のインフレはFOMC(米連邦公開市場委員会)の目標を大きく上回っている。「利上げ停止であれ、一回休みであれ、今後はもう利上げがないという約束ができあがったわけではない」との声が多く、あと50ベーシスの利上げが年内にありそうだ。

米10年国債金利(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

フェデラル・ファンド金利の現在の市場の予測

出所:クリエーティブプランニング

ユーロ/ドル(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ユーロ/ドル(週足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

金融資本主義、そして、紙(ペーパー・マネー)の時代は終わった…

 米国株も堅調だが、こちらは米銀破綻を受けた流動性の供給によるものである。1月4日以降、米国では4,800億ドルの流動性が追加されたことになる。それ以来、ハイテクは流動性とともに上昇の一途をたどっている。だが、AI以外では、株価は景気後退のフラグが立ち始めている。

ナスダック100CFD(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

エヌビディア(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 このバブル相場の賞味期限は、何度も申しているように、米国の「利下げ」までであろう。

利下げまでの米国株の上昇は「死の舞踏」か!?

出所:石原順

 ドラッケンミラーは、「インフレが猛威を振るい、中央銀行が利上げ、脱グローバリゼーションが定着し、ウクライナでの戦争が長引く中、世界的な景気後退の可能性は過去数十年で最も高いと考えている」という。1982年に始まった金融資産の強気相場を振り返ってみると、そのブームを生み出した〈全ての要因〉は止まっただけでなく、逆転したのである。

 米国主導の世界的な金融制裁戦争の結果はどうなったのだろうか? 完全な失敗である。ロシアは、ウクライナの地上での運動論的戦争に明らかに勝利しており、金融戦争にも勝利している。今年、多くのアナリストが米国経済は深刻な不況に陥ると予想している時期に、ロシアはIMF(国際通貨基金)によって0.7%成長すると予測されている。

 バイデンは、ロシアがクリミアを含むウクライナから完全に撤退するまで、制裁は終わらないと主張している。ロシアは撤退しないだけでなく、軍事的・領土的に大きな利益を上げ続けている。ウクライナの攻勢は、よほどのことがない限り、この現実を根本的に変えることはない。つまり、戦争もインフレも簡単には終わらないのである。

 歴史的大局観から言えば、金融資本主義、そして、紙(ペーパー・マネー)の時代は終わった。私たちの生活を支えるには、金融よりも、モノの方がはるかに重要であることがわかったからである。今後、世界の国々で「金融」への関心が薄れ、「モノ」への関心が高まっていくことが予想される。

 2000年、2008年、2023年、それはいつも同じだ。人々は愚かなリスクを冒し、失敗する。その後、お金が印刷(QE5)される。

FRBのバランスシートの推移

出所:Otavio (Tavi) Costa

6月7日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 6月7日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、武田則孝さん(楽天証券FXディーリング部)をゲストにお招きして、「私たちは必ずしも特定の時期にうまく乗れるわけではない。だが注意深く検討すれば、不確かな世界でも最も理にかなう投資哲学はトレンドフォローだ」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。

出所:YouTube
出所:YouTube
出所:YouTube
出所:YouTube

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

6月7日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所:YouTube

セミナーのお知らせ:『相場の大転換点がやってくる!?』

2023年6月14日(水)20:00〜21:30

 米国経済の減速が予想される中、FRBがいつどのような状況で利下げや量的緩和に転じるか?

 今後の海外および日本の金融・経済情勢の先行きは?

 石原順が『相場の大転換点がやってくる!?』と題して講演いたします。

 どなたでも無料でご視聴いただくことができます。

 開催時刻になりましたら、視聴ボタンまたはこちらよりご覧ください。

 ぜひ、ご参加ください。

(石原 順)

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