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日銀、マイナス金利解除に着々と地ならし、米利下げ後ろ倒しの見方強まればドル高も

トウシル / 2024年3月6日 15時53分

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日銀、マイナス金利解除に着々と地ならし、米利下げ後ろ倒しの見方強まればドル高も

日銀、ハト派・タカ派発言しながらマイナス金利解除に地ならし

 先週の外国為替相場のドル相場は、日本銀行の高田審議委員が29日に滋賀県金融経済懇談会で「2%物価目標の実現、ようやく見通せる状況になってきた」と述べたことから、1ドル=149円台後半に下落しました。

 その後の海外市場では、米新規失業保険申請件数と失業保険継続受給者数が市場予想より悪化したため、149円20銭台までドル安円高に行きました。しかし、米中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が重視する物価指数PCEコアデフレーターの前月比上昇率が1月より加速(0.2→0.4%)したことが意識されたのか、じりじりとドルは買い戻されました。

 また、日銀の植田和男総裁が29日(日本時間1日)に、ブラジルで開かれたG20(20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、「2%の物価目標の持続的・安定的実現について、現時点で達成が見通せる状況ではない」との発言が伝わると、再び円売りが強まり1ドル=150円台のドル高円安となりました。

 しかし、その後は日経平均株価(225種)が4万円を超えても、ドルの上値が重たい状況が続いています。日銀首脳らの一連の発言をみると、先月の内田真一副総裁の発言(マイナス金利解除後も金融緩和継続)以来、タカ派、ハト派的な発言を繰り返し、市場が一方向に傾かないように地ならしをしているように感じます。

 市場では、日銀が3月13日の春闘の集中回答日を待って、18、19日の金融政策決定会合でマイナス金利解除をするとの見方が強まってきていることから、円安の動きが抑制的になっているのかもしれません。

 今年は、米国の金融緩和、日本の金融引き締めの時期がいつなのか模索する状況が続けば、ドルの上値は重たいままかもしれません。

FRB議長議会証言や雇用統計公表控え、米利下げ時期探る一週間

 一方で、米国が景気後退しないで軟着陸し、物価上昇の鈍化も一服感が強まれば、米国の緩和開始時期は後ろ倒しになって、ドル高が強まるかもしれません。FRBが3月19~20日に開くFOMC(米連邦公開市場委員会)では1月時点よりも緩和時期の後ろ倒しを示唆するかどうかが焦点になります。今週は、その兆しが察知できるかもしれないイベントが待ち構えています。

 FRBのパウエル議長が6、7日に半期に一度の議会証言を行います。6日は下院金融サービス委員会で、7日には上院銀行委員会です。パウエル氏は1月には、3月の早期利下げを否定した一方、「政策金利は金融引き締めサイクルのピークに達している。経済が想定どおりに進展すれば、年内に利下げに転じるのが適切だろう」と述べました。2月に発表された経済指標を受けて、1月時点より利下げ時期について慎重姿勢を取るかどうか注目です。

 ただ、3月19、20日のFOMCまでには8日発表の米2月雇用統計、12日の米2月CPI(消費者物価指数)があります。それらのデータ次第で証言の内容と変わる可能性には留意する必要があります。

 そして、今週8日公表の米2月雇用統計にも着目したいです。非農業部門雇用者数(NFP)は過去2カ月、市場予想を上回っています。米雇用統計の結果が弱くなければ、19、20日のFOMCで示される今年の金利見通しで利下げがこれまでの見方の3回よりも少なくなるのではないかとの観測が浮上してきます。今年の利下げ回数が2回や1回へと少なくなり、利下げ開始時期も後ろ倒しになるのではないかとの見方です。

 FRBが昨年12月に示した今年2024年の金利見通しでは利下げが3回あるとの内容でした。現在の市場の見方も同じとなっています(市場の見方は当初年6回の利下げとなっていましたが、現在はFRBの見通しに寄り添った形になっています)。ゼロ回になるとの観測(今年利下げなし)も一部ではありますが、まだこの観測は時期尚早と思われます。今年の利下げ回数が減れば、ドル高に反応することが予想されます。

 NFPは2カ月連続で市場予想を上回っていますが、先週1日発表の2月ISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況指数が予想を下回り(47.8)、その構成要素である雇用指数が前月(47.1)より低下し、45.9と昨年7月以来の低水準となったことは気になるところです。

 5日に発表された2月ISM非製造業景況指数も予想を下回り(52.6)、その雇用指数も低下しました(前月50.5→48.0)。これらの指標からNFPが予想を下回ることも想定しておいた方がよいかもしれません。NFPが予想を下回り、予想を大幅に上回った1月分(35.3万人)が下方修正され、平均時給(前月比+0.6%、前年比+4.5%)も伸びが続かない場合は、先月の反動の動きからドルが大きく売られることも予想されます。

 8日の米雇用統計公表前の6日には2月ADP雇用統計、1月米雇用動態調査も発表されます。

ECB理事会後に6月の利下げ見方強まるか焦点

 また、今週は7日のECB(欧州中央銀行)理事会も重要です。ECBの利下げ開始時期も関心を集めていますが、6月利下げを後押しする見解が出るのかどうか注目したいと思います。

 物価上昇は鈍化が続いていますが、サービス価格が高止まりをしているため、早期利下げに慎重姿勢を示す可能性もあり、注意する必要があります。利下げに慎重ならば、為替相場は対ユーロで円安に動き、対ドルでの円高を抑制する可能性があります。

(ハッサク)

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