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1ドル=152円目前で足踏み、中東情勢緊迫や為替介入警戒がドル上値抑制

トウシル / 2024年4月10日 16時0分

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1ドル=152円目前で足踏み、中東情勢緊迫や為替介入警戒がドル上値抑制

米FRB幹部の相次ぐタカ派発言で、利下げに向かえないとの観測広がる

 米労働省が先週5日に発表した3月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比30.3万人増と市場予想を超え、失業率も3.8%と前月から改善しました。非農業部門の予想以上の増加は移民の大量流入が要因との見方もありますが、米国における労働市場の強さを示す結果となりました。

 市場では、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が6月に利下げに転じるのではないかという期待がやや後退し、外国為替市場のドル相場は、1ドル=151円台前半から再び151円台後半に上昇し、152円ブレイクを試す展開となっています。

 FRBのパウエル議長は3月のFOMC(連邦公開市場委員会)後の会見で、強い雇用の伸びについて「インフレを懸念する材料にはならない」、「利下げを待つ理由にもならない」との見解を示していましたが、FOMC後、FRB幹部からは早期利下げを否定する発言が相次いでいます。ローガン・ダラス連邦準備銀行総裁は「利下げについて考えるのはあまりに早過ぎる」と述べ、ボウマン理事からは「利下げの時期にはまだ至っていない」と早期利下げ観測をけん制しています。

 こうした幹部の発言から、市場では「利下げに向かえないFRB」との見方が浮上し始めており、10日に発表される米3月CPI(消費者物価指数)で、物価の持続的な減速を確認できるかどうかに注目が集まっています。パウエル議長は1月、2月のCPIの上振れは季節的要因であり、インフレは目標の2%に向けて徐々に低下しているとして過度な警戒は不要との見方を示していました。

 ただ、6月11~12日のFOMCまでにCPIの発表が2回あります(4月CPI・5月15日、5月CPI・6月12日発表)。また、FRBが注目する物価指標PCEも2回発表があります(3月分・4月26日、4月分・5月31日発表)。

 従って市場は3月のCPIだけから6月のFOMCで利下げがないと予想することはないと思われます。その後の4回の物価指標を見た上で、6月利下げの有無を予想していくと思われます。

 パウエル議長は3月のFOMC後の29日に「利下げは急ぐ必要ない」と発言していますが、年内の利下げは否定していません。果たして、6月あるいは7月に利下げがあるのかどうか注目されます。

日銀は、物価動向次第で追加利上げの可能性も!

 日本に話題を移すと、4月5日付け朝日新聞のインタビュー記事で、日本銀行の植田和男総裁は「物価目標達成の確度高まれば追加利上げを検討する」との考えを示しました。植田氏は「為替の動向が賃金と物価の循環に、無視できない影響を与えそうなら金融政策として対応する理由になる」と語っています。

 この追加利上げ検討と為替も利上げ材料との内容によって、一時1ドル=151円台から150円台後半に円高が進みました。

 この相場の反応に見られたように、日銀の追加利上げを材料に円高に振れる地合いがくすぶっている点は留意する必要があります。また、為替動向が金融政策変更の理由になるとの発言はかなり踏み込んだ発言です。今後、この考え方には注意する必要があります。

 日銀の追加利上げ時期は、市場では6、7月の夏ごろか9、10月の秋ごろかで見方が分かれていますが、今後の物価反発の勢いが鈍れば、「利上げに向かえない日銀」になる可能性もあります。

 2月の日本のCPI(生鮮食品除く)は前年同月比2.8%の上昇となり、伸び幅が1月(2.0%)から拡大しました。これは政府の電気・ガス料金抑制策から1年がたち、物価の押し下げ効果が一巡したことが背景にあります。逆に生鮮食品とエネルギーを除いた2月のCPIは3.2%上昇となり、伸びは昨年8月(4.3%)から6カ月連続で鈍化しています。

 日銀が6月13~14日に開く金融政策決定会合までに、CPIが2回、発表されます(4月19日に3月CPI、5月24日に4月CPIが発表)。日銀の追加利上げを後押しするような物価上昇があるかどうか注目です。

 また、4月25~26日の日銀会合では展望リポート(経済・物価情勢の展望)が公表されます。前回1月の展望リポートでは、2024年度物価見通し(生鮮食品除く)を昨年10月予想(2.8%)から2.4%に下方修正しています。生鮮食品とエネルギーを除いた物価見通しは1.9%の横ばいでした。これらの見通しが、政策効果の剥落で上方修正されるのかどうか焦点となります。

 為替は1ドル=152円目前で足踏みしていますが、上述したような日米の金融姿勢の微妙な変化が背景の一つにあるかもしれません。

 前回お話したFRBの「ハト的タカ派」姿勢の「タカ派」な要素(早期利下げ否定、ドル高要因)が強まっていることがドル高を支えているのかもしれません。また、日銀の「タカ的ハト派」姿勢の「タカ的」な要素(利上げ検討、円高要因)の期待が少し強まっていることが円安にブレーキをかけているのかもしれません。

 日米とも「タカ派」要素が強まっていることになりますが、時間軸は、日銀のタカ派要素の方が遅れる可能性が高いため、現状ではドル高が勝り、1ドル=152円手前の円安水準に居座っているのかもしれません。

為替介入警戒感に加え、中東緊迫化がドル高抑制

 1ドル=152円手前で足踏みしている最も大きな要因は、日本の通貨当局に当たる財務省が口先介入のトーンを強めていることがあります。

 鈴木俊一財務相や神田真人財務官をはじめ、複数の元財務官も円買いの為替介入の可能性を述べています。このように介入警戒感から1ドル=152円目前でドルの上値は抑えられていますが、新たな円高材料として中東情勢が急浮上していることは警戒する必要があります。

 3日にシリアにあるイラン大使館が攻撃されたことを受けて「イランは48時間以内にイスラエルを攻撃する可能性」と報じられましたが、イランの報復行動はありませんでした。緊迫した中東リスクがいったん後退しました。

 ただ、米CNNは7日、米国はイランが今週中に中東でイスラエルか米国の権益を狙った「相当な規模」の攻撃を仕掛けると判断し、高度な警戒態勢に入り対応措置の準備を急いでいると報じています。中東の緊張した情勢は続くことが予想され、ドルの上値を抑えそうです。

 10日発表の米3月CPIが上振れて、1ドル=152円を瞬間的に超えたとしても、日米の金融政策や介入警戒感、中東情勢の要因が絡み合い、152円を挟んだ綱引き相場が続くこともシナリオの一つとして想定しておく必要がありそうです。

(ハッサク)

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